新型肝炎でゴム相場も急落
産地では乾燥懸念が強まる

天然ゴム相場が値下がりしている。東京商品取引所(TOCOM)のRSS先物相場は、1月17日の1kg=208.70円をピークに、27日には一時170.00円まで値下りしている。昨年10月以降は米中通商交渉が「第一段階の合意」に到達したこともあり、株価や他資源価格と同様にゴム相場も急伸地合を形成していた。しかし、中国の武漢で発生した新型コロナウイルスが中国経済の先行き不透明感を高める中、10月30日以来の安値を更新する展開になっている。

新型コロナウイルスは、原油や銅相場なども大きく下押ししており、コモディティ市場に大きな混乱をもたらしている。死者・感染者が急増していることは間違いないが、感染被害の収束までにどの程度の時間が必要なのか予想がつかないだけに、中国実体経済への影響が読み切れないためだ。マーケットが過大なリスクを織り込んでいるとの見方がある一方、昨年に29年ぶりの低成長となった中国経済を更に圧迫する深刻な事態との見方もある。結果的に、最悪のシナリオを想定せざるを得ない状態にあり、ゴム相場も上値を強力に圧迫されている。

一方で、天然ゴムの生産地である東南アジアでは、土壌水分不足が深刻化している。今年はエルニーニョ現象やラニーニャ現象などの異常気象が発生している訳ではないが、降水量が不足がちになっており、天然ゴム生産に対する影響が懸念されている。実際に、天然ゴムと生産地が重複するパーム油、サトウキビなども生産環境の悪化が報告されており、パーム油は約3年ぶり、砂糖は2年ぶりの高値を更新している。

主産地タイでは既にウインタリング(落葉期)に突入し始めており、今後は乾季への移行とともに減産圧力が強まる季節トレンド上にある。このため、減産圧力の発生そのものは季節サイクルに沿った動きであり、何らサプライズ感はない。ただ、このまま十分な土壌水分を得られないままに減産期に移行すると、減産期間の長期化、深刻化が警戒されることになる。昨年もこの時期は土壌水分不足を背景に、産地主導でゴム相場は急騰した経験があるだけに、供給リスクは高めの状態になっている。

目先は、新型コロナウイルスのリスク評価に一喜一憂する不安定な展開が基本になる。実体経済に影響が生じるのかの見極めには数週間単位の時間が要求される可能性もあり、不安定な値動きが繰り返されることになろう。

ただ、これによって中国経済が急激な減速を迫られ、タイヤ市場が崩壊するような事態にならないのであれば、一時的な調整圧力との評価が基本になる。パニック状態で投資家はリスク資産を全面的に売却しているが、投資環境が落ちつきを取り戻すことが可能であれば、急落前の200円台回復から更に上値切り上げを打診することも可能だろう。どの価格水準が底値になるのか予想は難しいが、下げ過ぎ感が強い価格水準になっている。
(2020/01/30執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年02月03日「私の相場観」

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