株高でも崩れない金相場
安全資産が必要な時代続く

11月の米国株は過去最高値を更新する展開になっている。足元の実体経済や企業業績環境は、良好な状態にあるとは言い難い。しかし、米中通商合意に対する期待感が強くなっていること、世界的な低金利環境などが投資家のリスク選好性を高めており、世界的に株高圧力が強くなっている。一般的にリスクオンの投資環境は、安全資産の代表である金価格に対して値下がり要因になる。実際にNY金先物相場は10月の1オンス=1500ドル台前半に対して、11月入りしてからは一時1450ドル水準まで下落した。しかし、その後は株価が更に高騰する中にあっても金相場の値崩れは回避され、逆に安値修正の動きが優勢になりつつある。すなわち、株高環境にあって金相場は底固さを見せ始めているのだ。

背景にあるのは、米金利低下圧力の強さである。一般的に、株高局面では金利上昇圧力が発生し、それが金利を生まない資産である金価格を押し下げることになる。しかし、足元では株高環境ながらも金利低下圧力が発生していることが、逆に金相場を押し上げている。債券市場では、米中通商協議の先行きに対して慎重な見方が根強いこと、世界的な低金利環境が維持されていること、米連邦準備制度理事会(FRB)が10月から短期金融市場安定化を目的に資産購入(=流動性供給)に踏み切っている影響などが考えられる。株高を受けての金売り圧力を、金利低下を受けての金買い圧力が相殺している。
 また、株価の過熱感に対する警戒感も、金相場を支援している。米国株は過去最高値を更新しているが、企業業績からみて過度に株価が上昇しているのではないかとの警戒感は強い。ボラティティ指数も抑制されており、投資家は過度なリスクオン状態に傾いている可能性が指摘されている。ボラティリティ先物の売り越し枚数は、昨年2月のVIXショック発生時を上回っており、何らかのきっかけで株式市場に調整が入ると、大きな混乱状態に陥る可能性がある。

 また、米議会でトランプ米大統領の弾劾手続きが続いていること、香港情勢の緊迫化なども、引き続き金相場をサポートしている。特に香港情勢に関しては「天安門事件」の再来になるのではないかとの警戒感もあり、安全資産に対する投資ニーズを高めている。

 しばらくは米中通商協議関連の当局者発言、メディア報道などに一喜一憂する展開が続くことになる。金上場投資信託(ETF)市場からの資金流出傾向が続いていることにも注意が必要である。しかし、米中通商合意を前提にしても、世界経済の減速や低金利環境、米政治環境の不安定化や地政学リスク、通商リスクといった、金価格を押し上げてきた基本構図に大きな変化は生じない見通し。当面はFRBの追加利下げ対応が想定できない状況になる中、一気に年初来高値を更新する状況にはないが、徐々に値固めを進めて安値修正局面に移行しよう。
(2019/11/21執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年11月25日「私の相場観」

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