サウジ原油供給が一時中断
原油供給環境は脆弱だった

9月14日、サウジアラビア東部アブカイクとクライスの石油関連施設が攻撃を受けた。アブドルアジズ・エネルギー相は日量570万バレルの原油供給が中断したと発表し、原油市場のみならず金融市場全体が大きな動揺を見せた。これは世界全体の原油供給量の約5%に相当する規模であり、仮に供給中断が長期化した場合には、世界経済に対しても無視できない影響が生じる可能性があるためだ。

イエメンのフーシ派が犯行声明を出しており、ドローンで攻撃を行ったとしている。また、フーシ派を支援していると言われているイランの関与も強く疑われており、マーケットは今後の展開によっては米国やサウジアラビアなどとイランが軍事衝突するのではないかとの警戒感も強めた。ここ最近は、米国とイランとの間で直接対話を模索する動きが強くなっており、その象徴と言えるのが対イラン強硬派のボルトン米大統領補佐官の更迭だったが、中東情勢を巡る緊張感が一気に高まった格好になる。

当初は、サウジアラビアのエネルギー省筋から完全復旧までには数週間が必要、数カ月が必要といった発言が聞かれるなど、情報が錯綜した。ただ、17日にはアブドルアジズ・エネルギー相が9月末までには攻撃を受けた施設の復旧が可能との見通しを示し、更に当面は備蓄在庫の放出で出荷量には影響が生じないように対応する方針も示している。

一時期は、石油輸出国機構(OPEC)臨時総会開催での緊急増産対応、国際エネルギー機関(IEA)主導の備蓄在庫の共同放出といった有事対応も検討されていたが、現状ではそうした特別な対応策は必要なさそうな状況になっている。

一方で、フーシ派は今後もサウジアラビアの石油施設を攻撃の標的にすると宣言している。ドローンはミサイルと比較して極めて安価であり、しかも戦闘員の危険がないことで、従来よりも安易に攻撃が行われる傾向が強くなっている。また、仮に今回のサウジアラビアに対する攻撃にイランが関与していることが明らかになった場合には、何らかの報復攻撃が行われる可能性もあり、先行き不透明感は維持されることになる。

日本は原油のほぼ全量を海外からの輸入に頼っているが、サウジアラビア産はその38.2%を占めている。サウジアラビアは安定供給国として高い評価を得ているが、1カ国で世界の総供給量の13.0%をカバーしているだけに、大規模な生産障害が発生すると消費国に大きなリスクがもたらされることになる。日本も消費日数ベースで230日相当の備蓄在庫を確保するなど有事への対応を進めており、仮に数カ月といった時間軸でサウジアラビアの原油供給が大きく落ち込んだとしても対応は可能な状態にある。
しかし、国際原油市場は米国、サウジアラビア、ロシアの3カ国で4割以上の生産シェアを有する寡占市場にある。世界経済の減速で需給の緩みが警戒されているが、極めて脆弱な供給体制に依存していることが、今回のサウジアラビアの対する攻撃で露呈した。

(2019/09/18執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年9月23日「私の相場観」

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