急騰後に急反落した金相場
安全資産への投資ニーズ維持

NY金先物相場は、年初の1オンス=1285.00ドルに対して2月20日には1349.80ドルまで上昇し、昨年4月19日以来となる10カ月ぶりの安値を更新した。しかし、2月下旬以降には突然の急落地合に転じ、足元では1280ドル台までの値下り対応を迫られている。

景気の先行き不透明感が、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ政策に修正を迫っていることには変化がみられない。FRBは更に資産売却による流動性吸収も年内に終了する方針を示しており、2013年以降の金相場を苦しめてきた金融政策正常化プレッシャーは少なくとも一時休止局面を迎えている。景気の過熱化が警戒されていたが、足元ではインフレ指標が抑制されていることもあり、利上げ対応を急ぐ必要はないとのムードが形成されている。これは、ドルに対する信頼性を回復する局面が一服したことを意味し、安全通貨・代替通貨としての金に対する逆風は最悪期を脱したとの評価が優勢になっていた。

しかし、ここにきて米中貿易戦争に終止符が打たれる可能性が浮上する中、マーケットは動揺を見せている。通商環境の不安定化は、世界経済減速の主要な要因とみられており、仮に米中貿易戦争が終結方向に向かうのであれば、世界経済は改めて成長ペースを加速させ、利上げサイクルが再開される可能性もあるためだ。仮に利上げ再開となれば、昨年10月以降の金相場の堅調地合は「ダウントレンドにおける一時的な修正高」との評価に留まり、改めて金相場は急落するリスクを抱えている。
 しかし、現在の金市場で発生しているのは短期投機筋のポジション調整であり、先安観から改めて金相場を売り込むような動きは見られない。昨秋以降の不安定な投資環境の中で金の投機買いは著しく膨張していたが、それが米中貿易戦争終結の可能性をきっかけに、損益確定の手仕舞い売りを迫られているに過ぎない。

たしかに米中貿易戦争は世界経済の見通しを考える上での重要な論点だが、世界経済減速のメインテーマではない。また、今後は米国が日欧と自動車関税交渉を本格化するのは必至であり、米国内に限定してもロシア・ゲート問題の深刻化、債務上限問題の先行き不透明感など、政治方面のリスクは数多い。米金融政策に関しても、目先数カ月といったタイムスパンで早期利上げ論が再浮上する余地は殆ど存在せず、改めて米金利上昇・ドル高圧力が金相場を本格的に下押しするリスクは限定される。

2月下旬以降の金相場の急落は、あくまでも過度の景気減速リスク、過度の政治リスクが後退していることに伴う持高調整であり、買いポジションの規模が適正化すれば、再び底固い展開になる可能性が高い。経済・政治環境ともに19年は年間を通じて不確実性を抱えることになり、安全資産に対するヘッジニーズは高止まりしよう。
(2019/03/06執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年3月11日「私の相場観」

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