株価対策がFRBの新たな責務になった?

世界の中央銀行は「通貨の番人」として、物価安定(=通貨価値の安定)に責任を負っています。米国の中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)の場合だと、「インフレの安定」と「雇用の最大化」が二大責務として法律に明記されています。中央銀行はあくまでもこうした政策目標の達成を目指す存在のため、少なくとも公式には株価や為替レートの動向をみて、もしくはこれらに影響を及ぼすために、政策調整を行うことはありません。トルコのように、大統領自らが景気刺激のための利下げを求めるようなことは、新興国や途上国に限定された「例外」と言えます。

一方、アメリカのトランプ大統領は2020年の大統領再選を目指す立場から、中央銀行の政策に対して頻繁に口先介入を行っています。この影響からか、ここ最近のFRBには政治からの独立性に疑問が投げ掛けられるような動きが見受けられます。それが、株価動向に対する異常とも言える配慮です。

現在、FRBは景気動向を見極めるために利上げサイクルを一時停止した状態にあり、更に過去の量的緩和政策で購入した資産を売却する流動性吸収策に関しては、年内終了の方向性で見直しを行っています。これらの政策調整が、実は株価対策を目標としているのではないかとの疑惑が、市場関係者の間で浮上しているのです。

例えば、1月29~30日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨をみてみると、自動的かつ期間が見えない資産売却が、株価急落の一因になったとの市場関係者の声が報告されています。また、2月26日にパウエルFRB議長が行った議会証言では、金融市場の成長寄与度が年初よりも薄れていることに懸念が表明されています。

通常、FRBはこうした株価を巡る議論に深入りすることはありませんが、株式市場に量的政策による流動性吸収に懸念の声があり、その声を紹介するタイミングで流動性吸収策の年内終了方針を打ち出しつつあることは、FRBが「株価保護」という新たしい責務を自らの使命に追加した可能性が高いことを示唆しています。

これまでは、「金融政策→経済→金融市場」の流れにありましたが、現在は「金融政策→金融市場→経済」の流れに転換している可能性があるのです。これは、金融政策が過度にハト派に傾斜するリスクを高めることになりますが、株式市場の目線でみると、素直に歓迎すべき動きになります。利上げと資産売却による流動性吸収の流れにブレーキを掛けて欲しいとの要望が受け止められたことを、喜んでいる市場関係者は多いでしょう。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)「大起ニュース」2019年3月4日

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