安全資産の金価格が急伸
高まる投資リスクの受け皿

金価格の上昇が続いている。NY金先物相場は、昨年9月時点では1オンス=1200ドル水準で取引されていたのが、今年1月下旬には1300ドル台に乗せる展開になっている。これは、昨年5月中旬以来の高値であり、安全資産に対する投資ニーズが急激に高まっていることが確認できる値動きになっている。

背景にあるのは、投資環境が大きな不確実性を抱えていることだ。国際通貨基金(IMF)は、「成長の減速は想定よりも急速に進んでいる」として、昨年10月に続いて今年1月も世界経済の成長見通しを引き下げた。特に米中貿易戦争の影響から「より大幅な下方修正のリスクが高まっている」ことを指摘しており、マーケットでは「景気減速」に留まらず「リセッション(景気後退)」に陥るのではないかとの警戒感が広がっている。

昨年10月以降、世界の株式相場は不安定化しており、それとほぼ同時期に原油相場が急落するなど、経済環境悪化のシグナルは徐々に強くなっている。足元の米経済指標は必ずしも大幅に悪化している訳ではないが、今後は財政刺激策の終了に伴い減速傾向が強まることはほぼ確実視されている。中国に関しても2018年の国内総生産(GDP)は天安門事件発生の翌年となる1990年以来の低成長率であり、19年はさらに成長が鈍化するリスクが警戒されている。

これはリスク投資環境の不安定化が一段と進む可能性が高いことを意味し、ヘッジ目的の金買いが膨らんでいる。特に象徴的なのが金上場投資信託(ETF)の投資残高が急増していることだ。株価反発局面でも金ETF買いの動きは維持されており、「株を売って金を買う」といった短期の資金シフトに留まらず、より長期的な視点から金市場に対する資金配分を増やす必要があるとの評価が広がりを見せていることが窺える。これは、金相場が1300ドル台に乗せた後にも変化がなく、このまま経済環境の悪化傾向が続くと、金相場のコアレンジは更に切り上がることになる。

そして、もう一つの重要な動きが、米金融政策見通しの変化である。従来だと、米金融当局者は実体経済環境が良好なことを理由に、段階的に利上げを継続していくことを強く主張していた。現在でも米経済環境は必ずしも大きく下振れしている訳ではない。しかし、先行き不透明感の強さから金融政策が行き過ぎた引き締め局面に突入するリスクが警戒される中、暫くは利上げや資産売却といった政策正常化プロセスを停止すべきとの意見が勢いを増している。これは、2013年から本格化した米金融政策の正常化圧力を背景とした金相場に対する下押し圧力が、少なくとも一服することを意味する。ドル安、米金利低下圧力が発生すれば、ドルに対する安全性の再評価も金相場を押し上げることになろう。

短期的な過熱感から表層雪崩的な調整安には注意が必要だが、安値修正から自立的な上昇トレンドへの転換が進む見通し。1300ドルの次は1350ドルが目標価格になる。
(2019/01/30執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年2月4日「私の相場観」

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com