金相場は長期底打ちの可能性
安全資産への資金シフトの時

昨年10月の株価急落以降、金相場を取り巻く環境が徐々に強気ムードに変わり始めている。グローバル経済の減速懸念が強まる中、金融市場に強いストレスが見受けられ、ボラティリティの高まりが安全資産に対する投資ニーズを高めているためだ。もともと、米国株の過熱感を指摘する声は強く、昨年も2月と10月に大規模な調整局面を経験している。利益や売上高に対して株価水準が割高な状態にあることを示す指標は多い。それでも実体経済や企業業績の上振れ傾向が続く中、投機マネーの株式市場に対する流入傾向は維持されていた。しかし、ここにきてグローバル経済が想定よりも強い下振れ圧力に晒されるとの警戒感が強まる中、株価が「調整」ではなく「ピークアウト」局面を迎えているのではないかとの懸念が浮上している。

米経済はトランプ政権の打ち出した減税政策の影響もあり、2018年には過熱感さえある急成長を見せた。しかし、こうした政策効果が19年後半には薄れる一方、米中貿易戦争や欧州政治環境の不安定化などが経済を必要以上に下押しするリスクが警戒される中、資産防衛やリスクヘッジの観点から、金市場に対する資金流入が加速し始めている。

象徴的なのが金上場投資信託(ETF)市場であり、昨年10月以降はほぼ一貫して投資残高を積み増している。昨年も欧州勢は政治環境の不安定化を背景に年初から金ETFを買い進んでいたが、米系投資家は安全資産に対する投資ニーズを見出すことができず、逆に金ETFを売却し、金利上昇で保有メリットが高まるドルや、実体経済の底固さを背景に強含む株式市場に資金をシフトさせていた。しかし、10月の株価急落後は米系投資家も金ETFの買い手に転換し、リスク投資に対する緊張感が著しく高まっていることが示唆されている。

そこに浮上してきたのが、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ停止議論である。これまでFRBは、経済環境は利上げを必要としているとの判断から、断続的な利上げ対応が好ましいとの判断を下してきた。それは12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも変化はなく、19年中は2回の利上げを当局者が想定していることが示されていた。しかし、年末・年始を挟んで金融市場のボラティリティが一段と高まる中、利上げサイクルを終了すべきか否かは別としても、いったんは利上げを停止して様子をみるべきとの意見が勢いを増している。マーケットでは、このまま利上げサイクルが終了するのではないかとの見方も強く、米金利低下・ドル安圧力も金相場を支援し始めている。

2009年から続く株高トレンド、そして15年から続くFRBの利上げサイクルが同時に終了時期を迎える可能性が高まる中、金相場の長期ダウントレンドに終止符が打たれるか否かの分岐点に差し掛かっている。金相場の「売り材料」が「買い材料」への転換を完全に実現すれば、金相場は一時的な反発ではなく長期上昇トレンド形成に向かおう。
(2019/01/16執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年1月21日「私の相場観」

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