トランプ大統領の褒め殺し戦略に悩む産油国

2019年の過剰供給懸念で原油価格が急落する中、マーケットの目線は12月6日の石油輸出国機構(OPEC)総会で、主要産油国が減産対応に踏み切るか否かとなっている。OPEC内からは日量100万バレル、140万バレルといった具体的な数値も浮上しており、加盟国間では概ね減産対応の合意が形成されているとの報告もある。

市場シェアを落とす減産対応は産油国にとって全面的に歓迎されるものではないが、2014年に過剰供給が原油価格の急落を招いた記憶も鮮明に残される中、このまま現状を放置してはいけないとの危機感がある。11月22日には、サウジアラビアのファリハ・エネルギー相が「供給過剰は誰の利益にもならない」として、「適切な対応を講じる」考えを示している。

現在の原油価格水準に対して必ずしも不満を抱いていないロシアが減産対応に慎重姿勢を崩していないが、そのロシアもOPECとのパートナーシップ協定締結には意欲を示しており、OPEC総会での同協定署名が予定されている。OPECの減産提案をそのまま受け入れるかは別として、シェールオイルや深海油田などのタイトオイルの産油量が増える中、産油国間の協力関係の必要性については認識されている。

ここで問題になるのが、トランプ米大統領の動きである。大統領は、原油価格は低いほどに良いとの経済認識を有している模様であり、11月20日には「大規模減税のようだ」と原油安を歓迎している。今夏に原油価格が急伸した局面では、OPECに対して強い口調で増産対応を促していた。実際に、こうした要求にOPECやロシアが応えて過剰供給を行った結果が足元の原油価格急落の一因だが、原油相場が急落した現状でも、減産対応を講じることには強く反発している。

11月12日に「OPECは減産すべきではない」と発言したのに続き、21日には原油価格の値下がりについて「ありがとうサウジアラビア。ただ、もっと下げよう」と褒め殺しのようなことを行っている。22日にも、「サウジアラビアは本当にうまくやってくれた」と、サウジアラビアの増産対応を高く評価する発言を行っている。明らかに、サウジアラビアに減産を行わないように圧力を掛けたものである。

特にトランプ大統領が、サウジアラビアの反政府記者殺害をムハンマド皇太子が指示したとの疑惑を不問に処す対応を見せる中、サウジアラビアは単純に経済の論理のみで減産対応を講じることができない難しい状況に追い込まれている。

11月30日~12月1日の20カ国・地域(G20)首脳会合では、ムハンマド皇太子、ロシアのプーチン大統領の会合が設定された。ここでの議題の一つに、産油政策での協力があるのは確実である。マーケットの過剰供給に対する懸念を払しょくしつつ、トランプ大統領の反発を招かない最適解をどのように見つけ出すのか、石油市場においてもトランプ大統領の存在が大きな不確実性をもたらしている。

マーケットがみているのが、実際に産油量が需要レベルまで引き下げられるか否かであり、実質ベースでの議論が中心になる。トランプ大統領の視線を気にすれば、「減産」の言葉を使わずに、減産順守率の数値調整などで実質的な産油量を削減するのが現実的だが、「減産を要求するマーケット」と「減産を嫌うトランプ大統領」の二つの圧力の狭間で、産油国はどのようなカードを切るのか決断の時期が迫っている。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)トランプ大統領の褒め殺し戦略に悩む産油国(Yahoo!ニュース)

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