急浮上した早期利上げ終了論
金価格の底入れ前倒しは?


米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げサイクルに不確実性が広がり始めている。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では当局者の経済予想として、2020年にかけて段階的な利上げサイクルが続く見通しが示されていた。米実体経済が良好で過熱感さえ強まる中、金融政策が景気を刺激も抑制もしない中立金利を上回るゾーンまで利上げが進められる見通しになっていた。現時点で想定されている中立金利は3.0%だが、20~21年にかけては3.4%まで利上げを進めることが可能であり、そうすべきというのが当局者のコンセンサスになっていた。想定されていた金利軌道は18年の2.4%を19年には3.1%まで引き上げ、20~21年にかけて3.4%で利上げサイクルの終了、更には利下げへの転換を模索する展開になっていた。しかし、米中貿易戦争が深刻化する中、世界経済の見通しに不確実性が強くなっており、足元では米経済も自らが引き起こした貿易戦争のダメージを受けるのではないかとの懸念が浮上し始めている。

マーケットを驚かせたのが、11月16日にクラリダFRB副議長が中立金利ゾーンで利上げを中止すべきと発言したことだった。中立金利は2.5~3.5%のレンジが想定されているのに対して、現在の金利水準は2.00~2.25%である。これは、仮に12月に予定通りに今年4回目の利上げに踏み切った際には、19年に更に1、2回の利上げを行うと中立金利ゾーンに到達し始め、利上げ休止も正当化されることを意味する。

現時点でクラリダ副議長の意見が、FOMC全体の意見を代表しているとは言えない。パウエルFRB議長は段階的な利上げサイクル継続の必要性を訴え続けている。また、シカゴ連銀エバンス総裁は短期的には中立金利を上回る水準まで利上げを継続する必要性を訴えている。ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁も、金利水準はまだ非常に低い水準にあるとの警戒感を示している。現状ではなお、9月FOMCでも示されたように中立金利を上回り、引き締め政策を展開する方向性でみておくべきだろう。


ただ、FRB副議長レベルから利上げサイクルの短縮化を訴える声が挙がっているのも事実であり、米経済は本当に中立金利を更に上回るような金利環境を要求しているのか、従来以上に慎重な判断が求められることになる。

仮に利上げサイクルの終了時期が20~21年から19年に前倒しされれば、それは金価格に対する逆風がピークを迎える時期も前倒しされることを意味する。原油相場急落で期待インフレ率が大きく低下する中、実質金利に対しては強力な上昇圧力が発生している。これが株価急落でも金価格の上昇余地を限定しているが、仮に予想よりも早い時期に利上げサイクルが終了するのであれば、それは13~14年前後から本格化したドル買い・金売りのメガトレンドが終了することを意味する。クラリダ副議長の意見がFRBのコンセンサスなのか否か、12月FOMCにおける議論の重要性が増している。

(2018/11/21執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年11月26日「私の相場観」

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