原油相場急落でも、トランプ大統領が産油国の減産議論をけん制する理由

トランプ米大統領は11月12日、自身のツイッター上で「サウジアラビアや石油輸出国機構(OPEC)が減産しないことを望む。供給に基づけば、石油価格はもっと下落するはずだ!」と投稿した。国際原油相場の急落が続く中、一部産油国の間で減産対応を巡る議論が活発化していることをけん制する動きである。




11日には減産監視閣僚委員会(JMMC)で供給過剰化するリスクについて協議が行われ、サウジは日量100万バレルの追加減産を提案したことを明らかにしている。ロシアが反発しているために(参考:供給過剰を警戒するサウジ、供給不足を警戒するロシア)、12月6日のOPEC総会までに追加減産で合意できるのかは不透明感が残されているが、サウジは単独でも12月に日量50万バレル規模の供給削減を行う方針を示していた。こうした中、トランプ大統領が改めて原油価格の引き下げに向けてプレッシャーを強めた格好になっている。

NYMEX原油先物相場は、10月3日の1バレル=76.90ドルをピークに、足元では60ドル台を割り込み、2月14日以来となる約9カ月ぶりの安値を更新している。この状況に産油国は危機感を強め始めているが、トランプ大統領はまだ原油価格は高過ぎると認識していることが露呈し、減産議論に水が差されるリスクが原油相場を更に押し下げている。

トランプ大統領は今年に入ってからガソリン高(=原油高)を強く批判しており、これは11月6日の米中間選挙を意識した動きとみられていた。しかし、中間選挙を終えても原油高批判は止まることはなく、産油国に対して更なる原油安の受け入れを要求したと言える。

米政府は11月5日にイラン産原油に対する制裁を開始したが、それと同時に中国やインド、韓国、日本などに最大180日間の猶予措置を導入し、原油価格に過度の影響を及ぼさないための配慮を見せていた。その流れからは、産油国に対して減産対応を行わないように要請するのは論理的に間違ったことではないが、「供給に基づけば、石油価格はもっと下落するはずだ!」との発言は、60ドルという価格水準にさえ、トランプ大統領が不満を有していることが示唆されている。

従来と比較すると、今回のツイッターの投稿内容は、厳しいトーンとは言えない。例えば、9月20日(原油価格は70.32ドル)には「独占OPECは今すぐ(原油)価格を下げろ!」と脅しとも言えるような強い批判を行っていた。今回の「望む」との投稿は、かなり柔らかいトーンとなっている。

ただ、中間選挙を終えてトランプ大統領の関心が2年後の大統領再選に移行する中、景気制約要因になり得る原油高に対しては、今後も厳しい対応を行う可能性が高いと言えそうだ。トランプ大統領は米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ政策にも不満を示しているが、大統領選を安定した経済環境で迎えるために、「金利上昇」と同様に「原油高」も実現を阻止すべき政策テーマになっている可能性が高い。

現実問題として、産油国もトランプ大統領の意向に完全に従う必要はないものの、容易に減産対応を行うことが難しくなったのは間違いないだろう。特に、サウジは反政府ジャーナリストの殺害問題で米国との関係悪化リスクを抱える中、「国際原油市場が過剰供給化するリスク」と「トランプ大統領の減産中止圧力」との間で、難しい判断を迫られることになる。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)原油相場急落でも、トランプ大統領が産油国の減産議論をけん制する理由(Yahoo!ニュース)

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