金価格の上昇は短命か
米金融引き締めは続く

10月の株価急落は、安全資産である金価格を押し上げた。NY金先物相場は1オンス=1200ドル水準でのボックス相場が続いていたが、一時は1246.00まで値上りし、7月13日以来の高値を更新している。直接的なきっかけは1)米長期金利の急伸だったが、それ以外にも2)米中貿易戦争の深刻化、3)サウジアラビアの反政府記者殺害事件、4)米企業業績のピークアウト懸念、5)11月6日の米中間選挙のイベントリスクなどが、過去最高値を更新していた米株式市場から投機資金の流入を促し、金相場がその受け皿の一つになった格好だ。

ボラティリティ指数は10ポイント台前半で低位安定していたが、株価急落後は20ポイント台までコアレンジを切り上げている。こうした中、資金の一部を米国債や円などと同様に金市場にシフトさせる動きが観測されている。シンボリックなのが、金上場投資信託(ETF)の投資残高が増加に転じていることだ。これまでは金価格動向と関係なく一貫して売り越し状態にあったが、明らかに株式市場からの資金シフトが確認できる。
一方で、定期市場では新規で買い進むような動きは鈍く、相場押し上げの原動力は専らショートカバー(買い戻し)になっている。不安定な投資環境で弱気筋が当面の損益確定を急いでいることが金相場を押し上げているが、先高感から積極的に買い進むような動きまでは確認できていない。

背景にあるのが、ドルの堅調地合である。世界的な株安傾向が米国株から始まったことを考慮すれば、本来であればドルは売られ然るべき状況と言える。しかし実際には、ドルインデックスは年初来高値を更新しており、株式市場が米経済の先行き不透明感を警戒するのと対照的に、為替市場では米経済の力強さが高く評価されている。米長期金利は一時期よりも低下しているとは言え、依然として3%を超える高水準にある。また、米金融当局者からは、今回の株価急落はファンダメンタルズとは関係のない動きとして、米金融政策の引き締め傾向に変化は生じないとの発言が相次いでいる。

今年2回目の株価急落とあって、株式市場の鎮静化まではある程度の時間は要求される。ただ、米実体経済や企業業績に何か問題が生じて株価が急落した訳ではない以上、今後は徐々に鎮静化に向かう可能性が高い。株式市場のボラティリティが低下した際には、当然に米金利上昇・ドル高圧力が強まることが予想され、そうした局面で金相場が現行価格水準を維持し続けるのは困難だろう。改めて1200ドル割れを打診する方向性になる。

あくまでも株価動向次第の不安定な地合が続くが、良好な実体経済環境を背景に金融政策の引き締めが続く限り、金市場に対して本格的に投機資金が流入するのは難しい。12月の追加利上げ、更には2019年も3回前後の利上げが見込まれる中、ドルから金に対する資金シフトを促す条件は整っていない。
(2018/10/31執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年11月5日「私の相場観」

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com