金利上昇で不安定化する市場環境
金価格の上昇・下落パターンは?

10月の米株式相場は、2月に続いて今年2回目となる急落を経験した。ともに米長期金利の急伸が一つの要因になっており、良好な実体経済環境を背景に米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げサイクルが着実に進展する中、金融市場に対するストレスが強まり始めていることが確認出来る。ただ、金利上昇圧力が市場から流動性を吸収する役割を有している以上、これまで緩和マネーの恩恵を受けてきた各種資産価格に影響が生じるのは当然であり、今後も利上げサイクルの終了時期に向けて金融市場が徐々に不安定化するリスクは想定しておく必要がある。

一方で、金利上昇はそれだけ実体経済環境が引き締まっていることの裏側展開であり、通常は金利上昇局面において株式市場が大きく値崩れを起こすことはない。寧ろ警戒されるのは、利上げサイクルを打ち止めにしなければならない程に実体経済環境が悪化する展開になる。現状では、米連邦公開市場委員会(FOMC)は2020年にかけて利上げサイクルを継続し、21年に利上げサイクルの終了、更には利下げへの転換を見据えた状態にある。景気に対して抑制も刺激もしない中立金利は3.0%とされているが、20年にはそれを上回る3.4%までの利上げが現時点で米金融当局者が描いている金利軌道である。この通りの展開が実現するのであれば、過熱した経済を寧ろ引き締め政策が抑制する方向性が想定されており、金市場にとっては今後2年近くにわたって強力な逆風が吹き続けることになる。

しかし、マーケットでは実際に20年まで利上げを継続できるのかは懐疑的な見方も強く、仮に19年に利上げサイクルの終了時期が前倒しされるような経済環境・見通しに移行しているのであれば、株価のピークアウト、金相場の底入れ時期が19年の中盤から後半に前倒しされることになる。最近の米指標や当局者発言などを見る限りは、ドル買い・金売りの大きな枠組みが修正を迫られる必要性は乏しい。

こうした中、金相場の急伸シナリオとして警戒されているのが、米政治環境である。11月6日の米中間選挙まで残り1か月を切っているが、仮に米世論がトランプ政権に「ノー」の判断を下して議会で民主党の勢力が大きく拡大すれば、トランプ米大統領の政策遂行は難しくなり、「決められない政治」の時代に逆戻りする可能性が高まる。米政治が各種課題に対応することができず、特に債務問題や予算を巡って身動きが取れない状態に陥ると、米金融政策環境と関係なく安全資産としての金に対する資金流入が促される可能性がある。また、トランプ政権は日欧中などの為替政策に批判の声を強めており、強引にこれらの国に通貨価値上昇を促すことがアメリカの国益と判断されると、トランプ政権の意向に沿ったドル安圧力が改めて金市場に対する資金流入を促す可能性はある。金融政策要因でこのまま金相場は下落するのか、政治要因で上昇に転じるのかが、今後の焦点になる。
(2018/10/17執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年10月22日「私の相場観」

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