米金利上昇が抑える金相場
市場は金利上昇に耐えている

米国債利回りが急伸している。10年債利回りは8月下旬の2.8%水準に対して、10月入りしてからは3.2%台まで水準を切り上げている。これは2011年5月以来の高金利環境が実現していることを意味する。背景としては、良好な米実体経済環境がインフレリスクを高めているとの理解が基本になるが、その一方で米国と対立する中国やロシアが米国債売りを仕掛けている可能性も指摘されており、マーケットも何が起きているのか明確なコンセンサスを形成できていない。

ただ確かなことは、インフレ見通しの上昇を上回るペースで名目金利が上昇していることであり、実質金利は1%の節目を突破した状態が確立している。すなわちマーケットにおける金利の存在感が一気に高まっている。これは無金利資産である金価格に対しては強力な逆風になるものであり、金利環境からはドル買い・金売り対応が基本になる。

9月25~26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、2020年にも利上げサイクルが終了する見通しが示された。一方で、その後の米金融当局者の発言は極めてタカ派色が強いものになっている。例えば、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)は当面の経済成長に極めて強い自信を示し、景気に対して緩和的でも引き締め的でもない中立金利ゾーン、更にはそれを上回る水準までの利上げサイクル継続が続く可能性を強く示唆している。同議長は、失業率低下が進む中でインフレ圧力が抑制されている現状について「異例」との認識を示し、インフレ防衛的に段階的に利上げサイクルを進める必要性を強く訴えている。

現状では、中立金利を上回る水準までの利上げが米金融当局者のコンセンサスとまでは言えない。しかし、複数の当局者から当面の強力な利上げサイクルを支持する発言が相次いでおり、マーケットはFRBの利上げに対する本気度を織り込む必要性を迫られている。

もちろん金価格は金利環境だけで決まるものではない。しかし、実質金利と金価格との間には歴史的に見ても強い逆相関関係が確認でき、金利上昇圧力の強さは金価格の下振れリスクを高めることになる。

 一方で、金利上昇圧力は金市場以外のマーケットにも大きな影響を及ぼすことになる。例えば、株式市場において金利上昇圧力は資金調達コストの上昇圧力に直結し、企業業績の下振れリスクを高めることになる。特に原油高で原材料価格に上昇圧力が強まる中、金利上昇は無視することができない。また、米国の金利上昇圧力は新興国や資源国といったいわゆるハイリスク通貨からの資金引き揚げを促すことで、新興国市場に不測のトラブルを引き起こす可能性もある。安全資産に対する投資ニーズが高まれば、金利環境に変わらず金が買われる可能性はある。その意味では、金価格の安値低迷が続く限りは、マーケットは米金利上昇圧力を許容していると言えよう。
(2018/10/10執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年10月15日「私の相場観」

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