TOCOMにTSRが上場する
国内ゴム需給の実勢に合わせる

東京商品取引所(TOCOM)は10月9日、ゴム先物市場にTSR(技術的格付けゴム)を追加上場する。TOCOMでは既にRSS(視覚的格付けゴム)が上場されているが、今後はRSSとTSRの二本立てで国内に流通する天然ゴムのほぼ全量を先物市場がカバーする態勢を整えることになる。

RSSとTSRは品質面で特別に大きな差異を有している訳ではなく、実際に両者をあまり厳格に区別していないユーザーもある。ただ、格付けと生産工程に違いがあり、両者は別の品目として独自の価格形成を行っている。TOCOMのRSS市場は既に国際指標としてグローバルに注目されているが、そこにTSRも追加上場することで、新たな指標価格の提示、ヘッジ・投機の場を提供することになる。
日本では、伝統的にタイ産の天然ゴムが好まれており、このためにゴム輸入もその大半がRSSになっていた。タイでは小規模農家がゴムを生産しているため、大規模な製造工場が必要なTSRよりも、小規模な家族経営でも生産が容易なRSSが志向されているためだ。自動車タイヤには、RSSの方が品質的に好ましいといったユーザー側の評価も影響していた模様だ。

しかし、近年は大規模プランテーションで生産され、価格や安定供給で優位性があるインドネシア産の輸入量が急増しており、昨年の場合だと日本の天然ゴム輸入の67%がインドネシア産、30%がタイ産になっている。そしてこのインドネシアではRSSは殆ど生産されずにTSR生産が大部分を占めているため、必然的に日本に輸入される天然ゴムは、RSSからTSRへと比重がシフトしていた。2000年時点だとRSSが53%、TSRが31%だったのに対して、昨年はRSSが19%、TSRが79%となっており、もはやRSSの市場規模は2割を切った状態にある。こうした中、TOCOMに上場されているゴム先物がRSSだけとなっていることは、国内需給との乖離を生じており、TSRも追加上場されることになっている。

近年、TOCOMでは流動性の欠如が一部商品で深刻化しており、それは天然ゴム市場も例外ではない。このため、ゴム市場をRSSとTSRの二本立てにすることは、流動性の分散によってゴム市場の衰退を招くリスクを抱えている。一方、世界的にみてもRSSよりTSRは取引量が多く、TSRを追加上場して指標価格として育てていくことができれば、国内外の生産者、需要家、投資家などの参入、取引量の拡大を促すことで、ゴム市場全体の活性化を促すことも可能になる。一般的に、新規商品の上場が成功するか否かは、上場直後に一定野取引量を確保できるか否かのスタートダッシュの成否によって決まることが多い。TOCOMは様々な市場振興策を導入して商品先物取引業者にも活発な取引を呼び掛けているが、10月のTSR市場の成否に注目したい。
(2018/10/03執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年10月8日「私の相場観」

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