原油価格の高止まりが続く
イラン産の供給減が加速

NY原油先物相場は1バレル=70ドル台確立を打診する局面になっている。イラン産原油の供給減少圧力が本格化する中、需給ひっ迫リスクが価格に反映され始めている。米政府は11月4日までにイラン産原油・石油製品に対する制裁猶予期間を終了させる。イランにおける原油生産のみならず、タンカーによる輸送、保険契約、取引の銀行決済など、あらゆる関連分野が制裁対象になる。

前回の経済制裁時には、必ずしもイラン産原油の完全な取引停止は求められなかった。取引量を縮小する方向性を示すことができれば、米政府がイラン産原油の取引国に対して経済制裁を乱発するような事態は回避されていた。しかし今回は、トランプ米大統領があくまでもイラン産原油取引をゼロにすることを強く求めており、マーケットの想定よりも早いペースでイラン産原油の取引規模は縮小している。まだ詳細な数値は明らかになっていないが、5~8月にかけてイランの産油量統計は明確に下振れしており、米系メディアでは9月中にイラン産原油の取引はその三分の一が停止するといった報道が行われている。韓国は8月中にイラン産原油の取引をほぼ停止し、日本も10月にはイラン産原油取引を終える見通しになっている。中国やインドなどはイラン産原油の取引継続方針を示しているが、イラン産原油取引にかかわると当該企業も米国の制裁対象になるため、少なくとも従来のような取引量を確保し続けることは難しい。早ければ9月中にも日量100万バレル規模のイラン産原油が市場から排除されることになる。

マーケットでは、石油輸出国機構(OPEC)の他加盟国や米国のシェールオイルが増産されることで、大きな問題は生じないといった楽観的な見方も存在している。しかし、OPECは既に増産能力の殆どを使い果たしており、大規模な増産を実施するのは難しい状況にある。ここで無理に増産を行うと、増産余力がゼロに近づくことが逆に原油価格の急騰を招きかねない。一方、米国のシェールオイルは増産傾向が一服している。米産油量は日量1100万バレル前後での横這い状態が3カ月以上にわたって続いており、石油リグ稼働数の増加も止まっている。主要生産地であるパーミアン地区などの生産効率が低下する中、シェールオイル企業が現行価格での増産加速に慎重姿勢を強めている。

既にイラン産原油の供給が落ち込むことは規定路線化する一方、その供給減をカバーする代替供給先が見つからない状況に陥りつつある。もちろん、原油価格が上昇すれば現時点では想定されていない追加供給が行われる可能性はある。マーケットでもカナダやブラジル、中国などのタイトオイル生産が鍵を握るとの見方が強い。特にブラジルなどの深海油田はここにきて開発計画が増えており、注目度が高まっている。しかし、イラン産原油が日量100万バレル規模で喪失され、しかもベネズエラやリビアなどでも供給不安を抱える中、年末に向けて需給不安定化がエスカレートするリスクは着実に高まっている。
(2018/09/12執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年9月17日「私の相場観」

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