〔アナリストの目〕天然ゴム、市況対策見送りで安値低迷続く=小菅努氏 

東京ゴムは1キロ=170円水準で、ボックス気味の展開となっている。産地相場の値下がり傾向が続く中、当ぎりは明確なダウントレンドを形成しており、約2年3カ月ぶりに150円の節目を割り込んでいる。しかし、期先は上海ゴム相場の下げ渋りで値崩れに抵抗を示し、上値が重いものの明確なトレンドを形成するには至っていない。当先スプレッドは20円近くに拡大しており、限月間のバランスが大きくゆがんでいる。

産地相場は明確なダウントレンドを形成している。増産期の季節要因から需給緩和圧力が強まり、それが相場を下押しする教科書的な値動きとなっている。タイ中央ゴム市場の未薫製シート(USS)現物相場は、生産コスト割れが警戒される30バーツ台突入さえ警戒される状況にある。しかし、生産国政府の市況対策が望めない状況になっていることが、産地相場の下げをエスカレートさせている。

40バーツ割れ目前の現状は、過去を振り返ってみても、本来であれば価格防衛の議論が活発化してしかるべき状況と言える。ただ、トルコリラを起点とした新興国通貨安が東南アジア通貨にも本格波及する中、東南アジア諸国の政策優先度は「ゴム農家を支援するためのゴム市況対策」よりも「通貨防衛のための財政健全化」になっており、巨額の予算計上が要求される直接的な市場介入は見送られ続けている。

既に、タイ政府は市場介入見送りの方針を公式に確認しており、少なくとも国際協調の枠組みを使った大規模な市況は見送られ続ける可能性が高い。

また、ゴム生産国の現地通貨安は、他国通貨建てゴムの割安感を強めることで、ゴム相場の値下がり要因にもなる。ブラジル通貨レアル安を受けての砂糖やコーヒー相場の急落がシンボリックだが、東南アジアでも例えばマレーシアリンギット建てのパーム油相場が年初来安値を更新する動きをみせている。

ゴム相場は例年10〜12月期に下げ渋る傾向があり、特に12月と翌年1月は上昇リスクが高まる月になる。このため、現行価格水準から一気に値崩れを起こす必要性は乏しい。しかし、季節要因に基づく需給緩和圧力が続き、それを是正する政策調整が見込めない中、下値は150円水準まで見ておく必要があり、リバウンドしても180円水準が上値めどだろう。下振れリスクを残した安値ボックス気味の展開が基本になる。

◇10月9日にTSR追加上場

なお、東京商品取引所(TOCOM)は10月9日にTSRを追加上場し、今後のゴム市場はRSSとTSRの二本立てになる。日本のゴム輸入は伝統的にタイ産RSSに強く依存していたが、インドネシア産TSRへのシフトが進んでいることに対応するものである(ただし、RSS同様にTSRも標準品はタイ産)。

昨年の通関実績によると、日本の生ゴム輸入の78.7%がTSRになっており、RSSは18.9%にとどまっている。TSRはシンガポール市場などにも上場しているが、新たな指標価格とヘッジ、投機の場をTOCOMでも提供できるかが問われることになる。

流動性の分散化に終わってゴム市場全体が縮小するのか、それとも流動性向上に加えて新たな投資対象、裁定機会の提供が可能になるのか、今回のTSR上場は投資家目線でも重要なイベントになる。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(2018/09/25執筆)
(出所)時事通信社「アナリストの目」2018/09/26

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