レアル安で加速するコーヒー安
12年ぶりの安値を更新

焙煎用コーヒーなどに使用されるアラビカコーヒー相場が急落している。ICEコーヒー先物相場は、年初から5月にかけては1ポンド=120セント水準での取引が続いていたが、6月以降に下落ペースが加速し、8月にはついに100セントの節目も割り込む場面が観測されている。これは、実に2006年8月以来の安値更新であり、12年前の価格水準に回帰した格好になっている。

こうしたコーヒー相場急落の最大の要因は、ブラジル通貨レアル相場の急落である。米国の利上げサイクルが進む中、特に今年に入ってからは新興国通貨全体の下落傾向が目立つ状況になっているが、ここにきてレアルの下げ幅が際立って大きくなっているのだ。対ドルレートでみると、8月は29日時点で7月末から10.1%の急落相場になっている。

一般的に農産物の生産国通貨が下落すると、ドル建て換算した際の採算性が向上するため、供給量の増加圧力に直結することになる。アラビカコーヒーに関しては、世界全体の生産高の43.8%がブラジル一カ国で生産されている関係で、特にレアル相場の動向はコーヒー相場の動向に対して極めて大きな影響力を有している。そのレアル相場が対ドルで10%を超える急落となっていることは、ブラジルの農家にとっては売却収入が10%増加することを意味し、必然的に在庫売却圧力は強化されることになる。

特に足元ではブラジル産コーヒーが収穫期を迎えているため、世界各地に収穫済みの荷が出荷されるタイミングを迎えている。こうした中、レアル安はブラジルからの荷動きを必要以上に活発化させる可能性が高く、足元では余りに大量の荷が港湾に集まる中、出荷の遅れさえ報告される状況になっている。

すなわち、豊作環境でもともと需給緩和がイメージされ易かった相場が、レアル安の影響で下落ペースを加速させているのが現状である。では、なぜレアル相場は急落しているのか。一つがトルコリラ急落に象徴される新興国通貨の不安定化だが、ブラジル固有の材料として10月7日のブラジル大統領選に対する警戒感が指摘されている。汚職などで収監中のルラ元大統領が出馬に意欲を示しているが、世論調査では元大統領が高い支持率を得ている。実際にルラ元大統領の出馬が可能なのかは疑問もあるが、マーケットではブラジル世論が痛みを伴う改革ではなく、ポピュリズム性向の強い安易な財政拡張作にあることが強く警戒されている。

仮にこのままのペースでレアル安が続くと、コーヒー需給とは関係なく通貨要因のみで更に大きな値崩れを起こす可能性もある。9月には米国の追加利上げがほぼ確実視される中、レアル相場の下げ止まりが可能か否かが、コーヒー相場の行方を決定づけることになる。そして、これと同様の現象は砂糖相場でも観測されている。一部の国に生産が集中する農産物は、通貨環境によって急騰と急落双方のリスクを抱えることになる。
(2018/08/29執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年9月3日「私の相場観」

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