低迷するプラチナ相場
コスト割れで減産進むも

プラチナ相場の低迷が続いている。NYプラチナ先物相場は、今年1月の1オンス=1033.30ドルをピークに、8月には一時755.70ドルまで急落する展開になっている。米中貿易戦争、トルコリラ急落に象徴される新興国リスクが、工業用金属相場全体を下押ししていることが嫌気されている。更には、急激なドル高はドル建て金相場の急落を促がしており、プラチナ相場は銅や金相場と歩調を合わせる形で断続的に値位置を切り下げている。

800ドル前後の価格水準に対しては、さすがにオーバーシュート状態との批判の声も強い。貴金属調査会社GFMSによると、昨年の世界プラチナ生産コストは925ドル、南アフリカに至っては979ドルであり、完全なコスト割れの状態にあるためだ。

実際に、8月2日にはこれまで大規模なリストラ策に慎重姿勢を示していたインパラ・プラチナ(インプラッツ)が、2021年度までに採算性の低いシャフト閉鎖、1万3000人の従業員削減を発表するなど、大規模な経営再建策を発表している。もはや現在のプラチナ相場環境では経営を維持できないとして、年間生産ガイダンスを75万オンスから52万オンスに引き下げ、十分な採算が見込める鉱区に集中投資する方針になる。

既にアングロ・アメリカン・プラチナ(アムプラッツ)などは14年の段階で同様の決断を下していたが、これまで顧客への供給責任があるとしてリストラに慎重だったインプラッツでさえも生産規模縮小に踏み切ったことは、プラチナ相場が鉱山業界の限界ラインを大幅に下回っていることを再確認させるイベントになる。

しかし、マーケットはインプラッツのリストラ策発表に殆ど反応を示すことはなかった。その後は、労働組合が人員削減策に反発してストライキ決行の構えを見せているが、労使リスクの高まりも殆ど材料視されることはなかった。マーケットが、まだ価格低下による減産圧力がプラチナ相場安の反転を促すには不十分と評価していることが窺えよう。
2014年以降、プラチナ相場ではコスト割れの議論が何度も繰り返されているが、相場は一貫して下落し続けている。膨大な地上在庫が需給のバッファ(緩衝材)として機能する中、コスト割れで減産圧力が発生し、仮に需給バランスが供給不足方向に傾いても、需給タイト感が高まることは阻止され続けているためだ。

この問題は、14年に南アフリカで過去最大規模のストライキが発生し、鉱山供給がストップした際に、話題になった。マーケットでは15年には地上在庫の還流がピークを確認して、再びプラチナ相場は上昇に転じるとの見方が支配的だった。しかし現実には、未だにコスト割れに伴う減産、供給不足などが発生しても、プラチナ相場の底入れは先送りされ続けている。プラチナ相場反発のためには、断続的に供給不足を発生させ、地上在庫の還流システムの限界を確認することが求められている。
(2018/08/22執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年8月27日「私の相場観」

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