イラン経済制裁がスタート
原油価格は再び高騰する

NY原油相場は7月3日に一時75.27ドルまで上昇するも、7月下旬以降は60ドル台中盤から後半をコアとしたボックス相場に留まっている。依然として高値圏での取引ではあるが、急伸地合は一服しており、概ね6月下旬の価格水準に回帰している。

背景にあるのは、1)リビアなど短期供給トラブルの解消、2)石油輸出国機構(OPEC)やロシアの増産対応、3)通商リスクと新興国リスクに伴う需要減退懸念などを受けて、国際原油需給のひっ迫化に対する警戒感が後退していることである。これまで積極的に買い進んできた投機筋が利益確定に動いており急騰相場に対する反動圧力が強くなっている。
 マーケットの関心は、これで原油相場がピークアウトしたか否かであるが、まだ上昇リスクを残した相場とみるべきだろう。象徴的だったのが、国際エネルギー機関(IEA)が公表した8月月報であり、そこでは今後の国際原油需給について現在よりも安定性を大きく損なった状態になるとの警戒感が示されている。すなわち、現状は一時的な需給バランスの鎮静化状態に過ぎず、今後は改めてタイトな需給環境に回帰するとの見方になる。

マーケットで最も注目されているのが、イラン情勢である。8月7日に米政府によるイラン経済制裁の一部が再開され、11月5日には原油・石油製品の生産・輸送・決済などの幅広い分野にも経済制裁が行われることが予定されている。イラン産原油供給がどの程度まで落ち込むのかは議論が割れているが、マーケットでは日量100万バレル規模の供給減少リスクまで想定されている。一方で、OPECやロシアなどの増産余力は限られており、現行価格水準ではシェールオイルの増産ペースが加速することもない。これから需給バランスの帳尻をどのように合わせるのか、ぎりぎりの調整が行われる状況が続く中、原油相場は大きな上振れリスクを抱えている。

仮に米国の経済制裁が想定以上の効果を発揮し、イラン経済が崩壊状態に近づくと、イランはホルムズ海峡封鎖といった強硬姿勢に打って出る可能性がある。ホルムズ海峡は日量1900万バレルの原油・石油製品が通過するいわゆる「チョーク・ポイント」であり、ホルムズ海峡封鎖を現時点で前提にする必要はないものの、必ずしも無視できないリスクとしては認識しておく必要がある。

単純に米原油在庫とNY原油相場との相関から考えても、4億バレルの大台割れ目前に迫った現在の在庫水準からは、70~75ドル水準の原油価格は十分に正当化できる。60ドル台後半の値位置は束の間の休息状態で実現した割安な価格水準であり、改めて需給タイト化圧力を背景に70ドル台確立に向かう方向性でみておきたい。一気に80ドル台にトライする環境にもないが、冬の需要期まで60ドル台後半で低迷状態が続く可能性は低いとみている。現行価格水準での物色妙味は大きい。
(2018/08/15執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年8月20日「私の相場観」

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