グローバルな熱波で小麦高
地球温暖化の影響だと深刻

長引く熱波が北半球の大部分を覆う中、世界各地で山火事や干ばつ、豪雨などの天候被害が広がりを見せている。世界気象機関(WMO)は、今夏に記録的な高温や熱波が観測されているが、今後も暫くは同じ傾向が続くとの見通しを示している。

なぜ今夏が記録的な高温・熱波に晒されているのかは気象専門家でさえも把握しきれておらず、「地球温暖化が影響しているらしい」という漠然とした評価に留まっている。ただ、高温・熱波の影響は当然に農産物生産にも大きな被害をもたらすことになり、シカゴ穀物市場では特に小麦相場の上昇が目立つ状況になっている。CBOT小麦先物相場は、6月下旬から7月初めにかけて1Bu=470~510セント水準で揉み合う展開になっていたが、7月末から8月初めにかけては550セントの節目も突破している。欧州から旧ソ連諸国にかけて記録的な熱波が観測される中、同地区の生産量が下振れすることで、米国産小麦に代替需要が発生するとの思惑が広がっている。

米農務省(USDA)は7月需給報告の段階で、既にロシアやウクライナ、欧州連合(EU)などの小麦生産高見通しを大きく引き下げていた。世界の小麦生産高見通しは6月報告の7億4469万トンに対して7億3626万トンと僅か1カ月で1.1%下方修正され、前年度の7億5792万トンからは2.9%の減産が見込まれている。ただ、その後も欧州や旧ソ連諸国では殆ど降雨が観測されない状況が続いており、8月10日に報告されると次回需給報告では、生産高見通しをもう一段階引き下げるのは必至とみられている。

米国産小麦の期末在庫は、2013/14年度の5.90億Buをボトムに、16/17年度には11.81億Buまで急増していた。しかし、17/18年度は11.00億Bu、18/19年度は9.85億Buまでの減少が見込まれているが、このまま欧州から米国産への需要シフトが進めば、在庫にタイト感が浮上する可能性さえ浮上することになる。

 ここ数年、世界の小麦需給は潤沢な供給量を背景に緩和傾向を強めていた。多少の天候不順があっても高イールド環境に変化はなく、寧ろ生産トラブルによって多少の減産圧力が発生した方が、小麦需給の正常化には好ましいとみられていた。しかし、未曾有の熱波がグローバルな規模で発生する中、「世界で同時に発生する不作」というこれまでに経験したことのない事態に直面している。

 これが今年に限定された動きであれば、それほど深刻な問題にはならない。世界各地で頻発する天候不順が、たまたま一つの年に集中しただけとの評価に留まるためだ。しかし、仮に地球温暖化による気象環境の不安定化という大きな相場テーマが存在している場合には、小麦相場の性質がこれまでとは大きく異なるものになる可能性がある。なぜグローバルな熱波が発生しているのか分からい不気味さが、穀物相場を不安定化させている。
(2018/08/01執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年8月6日「私の相場観」

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