低迷が続く天然ゴム相場
対策に動き出した生産国


東京ゴム先物相場は、5月22日の1kg=202円10銭をピークに、7月は170円水準まで値位置を切り下げる展開になっている。減産期入りに伴う需給タイト化圧力がピークを脱する中、季節トレンドに沿う形で値下り圧力が発生している。米中貿易戦争化で資源価格全体に下押し圧力が発生していることもネガティブ材料視されている。上海ゴム相場についても、5月の1トン=1万2000元台に対して、足元では辛うじて1万円の節目水準でサポートされる値動きに留まっている。

天然ゴム生産国連合会(ANRPC)によると、1~5月期の国際需給は57万トンの供給不足であり、季節トレンドを素直に反映した需給タイト化圧力が確認されている。しかし、5月下旬以降の集荷量は明確な増加トレンドにある。6月末から7月初めにかけては、タイ南部のヤラー県でイスラム過激派がゴム農園を狙った爆破テロを仕掛けたが、供給環境に大きな混乱が生じることはなかった。タイ中央ゴム市場のRSSの集荷量をみても、足元では概ね減産期入り前の水準を回復しており、これに伴い5月22日には1kg=52.99バーツを記録した現物相場も、40バーツ台中盤まで軟化している。
この時期はサイクロンなどの異常気象による供給障害に注意が求められるが、このまま安定した集荷量が維持できれば、産地主導の下押し圧力が強まることになる。マクロ需給環境からはゴム相場が本格的なリバウンドを試す必要性は乏しい。

一方で、40バーツ台はコスト割れが警戒される値位置であり、ここ数カ月は沈黙を保っていた生産国政府が漸く動きを見せ始めていることには注意が求められる。7月16日にはタイで副首相と農業協同組合省幹部が協議を行い、補助金交付によるゴム農園の面積削減を検討していることが明らかにされた。1800万~2000万ライ(1ライ=1600平方メートル)のゴム作付面積に対して、年間20万ライのペースで今後5年にわたって面積削減を進めることが検討されている。

過去を振り返ってみると、この種の強制力を伴わない市況対策について、十分な効果は認められない。従来だとパーム油への作替えの動きが目立ったが、足元ではそのパーム油の供給過剰問題が深刻化しており、ゴム生産を容易に中止することはできない。このため、直ちにゴム相場が底入れする必要性は乏しく、なお下値不安が残されよう。

ただ、生産国が市況対策の必要性を認識し始めていることは間違いなく、今後はより強力な施策が打ち出されれば、ゴム相場の値下り傾向にブレーキが掛かる可能性はある。例えば、輸出総量規制などは少なくとも数カ月スパンでゴム相場を押し上げることが多い。これまでの「需給緩和→ゴム相場下落」の流れに対して、「ゴム相場下落→市況対策」の流れが発生し始めている。徐々にダウントレンドから安値保ち合い相場への移行が打診されよう。
(2018/07/18執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年7月23日「私の相場観」

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