トランプ大統領の原油高批判
増産は簡単だができない理由

6月22日の石油輸出国機構(OPEC)総会をきっかけに、原油高が再開されている。OPECや過剰減産解消の形で事実上の増産対応に踏み切ったが、年後半の需給タイト化圧力を阻止するには不十分との見方が広がっているためだ。加えて、米政府が各国にイラン産原油取引の停止を要請する一方、カナダでは停電によるオイルサンドの生産停滞、リビアでは港湾における武装勢力の活動、ノルウェーでは労使トラブルなどで、短期供給障害の発生が状況を深刻化させている。特にカナダのアルバータ州で生産されるオイルサンドは、パイプラインを通じて米国向けに輸出されており、WTI原油先物の受け渡し場所であるオクラホマ州の在庫減少圧力に直結すると、必要以上の値上がりを促しかねない。

実際にWTI原油先物は期先物に対して期近物が急伸する急激な逆サヤを形成しており、短期需給ひっ迫懸念が原油価格を押し上げていることが明確に確認できる。カナダの生産障害は7月いっぱい続く見通しが示されており、ドライブシーズン中の供給不足は短期スパンで異常な高値形成を促す可能性がある。過熱感は間違いなく強いが、80ドル水準にトライする可能性も想定しておく必要があろう。

一方、こうした原油高に対してトランプ米大統領の動きが活発化している。自らの対イラン、ベネズエラ政策が原油価格の高騰を招いているとの批判が強まる中、OPECに対して増産要請を強めている。トランプ大統領としては、米国が中東産油国をイランの脅威から守る中、OPECは増産で協力して原油高を阻止すべきとの認識がある模様だ。7月4日には今年に入ってからツイッターで4度目となる原油(ガソリン)高批判を行い、「今すぐ引き下げろ!」と従来にない強いトーンで増産対応を迫っている。

トランプ大統領は日量200万バレルといった具体的な数値もあげて増産要請を行っている。しかし、OPECサイドとしてはこうした要請に安易に応えることはできない。確かに、サウジアラビアは200万バレル規模の生産余力を有しており、大規模増産を行うことは不可能ではない。実際に6月にはOPEC総会で減産遵守率引き下げを合意したことを受けて、70万バレル規模の増産に踏み切った可能性が指摘されている。

しかし、200万バレルの増産はサウジアラビアの生産余力がなくなることを意味し、原油市場は逆に不安定化しかねない。今後はイランやベネズエラ産原油の供給が一段と落ち込む可能性が高い一方、リビアやナイジェリアなどでも突発的な供給障害が発生し易く、将来の供給障害への対応力をゼロにすることに対しては強い警戒感がある。マーケットでも、ここでサウジアラビアが大規模増産に踏み切れば、逆に原油価格は高騰するとの見方も強い。トランプ大統領の原油高批判は激しさを増しているが、必要なことは無理な増産ではなく、生産能力を拡充して供給不安に備えることである。しかし、過去数年の原油相場低迷は投資不足を深刻化させており、今はその代償を支払っている時間帯となる。(2018/07/11執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年7月16日「私の相場観」

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