ホルムズ海峡(The Strait of Hormuz)がふたたびきな臭くなってきました。イラン革命防衛隊幹部は7月5日、「イランの原油輸出が阻害されるのであれば、ホルムズ海峡を石油が通過することを認めない」として、事実上の封鎖リスクを指摘しています。


米政府は11月までに各国に対してイラン産原油の取引停止を求めていますが、イラン産原油の国際市場へのアクセスが阻害されるのであれば、ホルムズ海峡を封鎖してペルシア湾岸諸国からの原油輸出全体にブレーキを掛けるとの警告です。

トランプ米大統領が原油高に神経を尖らせる中(参考:今すぐ価格を下げろ!、トランプ大統領の警告が無意味な理由)、原油価格を刺激するような動きが有効な対米政策になると受け止めていることが確認できます。

このホルムズ海峡は北側がイラン、南側がオマーンに挟まれた海峡であり、最も狭い部分で33kmしかありません。一方で、日量1,850万バレル(2016年)の石油タンカーがこの海峡を通過しているため、世界の20%の原油供給はこのホルムズ海峡を通過して世界に出荷されています。マラッカ海峡を上回る、世界最大の原油輸送の要所になっています。

【世界の海上原油輸送量】
figure1











(出所)EIA

【ホルムズ海峡の位置】
hormuz_map














(出所)EIA

このため、イランにとっては世界の石油供給の人質を取った格好になり、実際に湾岸戦争時には機雷を敷設して海峡を封鎖した経験もあります。イラン核開発問題で米欧とイランとが激しく対立した際にもこのホルムズ海峡封鎖の可能性が浮上しましたが、結果的には封鎖は行われませんでした。

さすがにホルムズ海峡封鎖は世界を敵に回しかねず、安易に切ることができるカードではありません。その意味で、実際にホルムズ海峡封鎖を現実の脅威と捉える必要性はありませんが、この「ホルムズ海峡封鎖」のワードが出てくると、マーケットはどうしても無視できない程度のインパクトは有しています。「オオカミ少年」になるような頻繁な警告を行っているとマーケットも本気にはしませんが、米国=イランの緊張が高まった局面で突然に「ホルムズ海峡封鎖」に言及があると緊張感が高まります。

なお、米海軍はイランがホルムズ海峡を封鎖した際には、「米海軍は国際法の下で航海の自由と通商の自由な流れの確保を確実にするために用意を整えている」として、南シナ海などで展開されている航行の自由作戦をホルムズ海峡でも行う方針を示しています。

Reuters=米海軍、イランがホルムズ海峡封鎖なら航海の自由確保の用意=報道官

こうしたホルムズ海峡封鎖リスクに備えるため、サウジアラビアやUEAなどはホルムズ海峡を迂回するパイプライン敷設を行っていますが、2016年のデータでは送油能力が日量660万バレル、実際の送油量は270万バレルとなっています。現状では、封鎖リスクを緩和する程度の規模に留まっています。

【ホルムズ海峡迂回用のパイプライン】
無題







(出所)EIA

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 https://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com