天然ゴムが今年最安値に
農家の安値限界を打診

自動車タイヤなどに使用される天然ゴム価格が急落している。東京商品取引所(TOCOM)では、5月22日の1kg=202.10円をピークに、6月下旬には今年最安値となる170円水準まで値下りしている。2016年10月以来の安値が更新されている。

最も底流部分にあるのは、東南アジアが減産期から生産期への移行が進んでいる季節要因である。天然ゴムの生産サイクルには明確な季節性が存在しており、一般的に乾季によってゴム樹液の出が悪くなる4~5月が減産期のピークになる。実際にこの時期は産地相場が底固く推移しており、それが東京や上海といった消費地市場におけるゴム価格も下支えしていた。しかし、6月に入ると降水量が回復し始め、それと連動する形で集荷量が増加していることがが、産地主導でゴム相場を押し下げる流れに転換している。

タイ中央ゴム市場の場合だと、5月時点ではRSSの集荷量が日量50トンに届かない営業日も目立ったが、6月入りしてからは100トン台確立を打診する動きをみせている。これに伴い現物相場も値下がりしており、5月中旬には1kg=50バーツ台前半を推移していたのが、6月下旬には40バーツ台中盤まで値下りしている。

しかもタイミングが悪いことに、6月15日にはトランプ米大統領が中国の知的財産権侵害などを巡って500億ドル相当の中国製品に対して制裁課税を行う方針を発表し、それに対して中国側は同程度の強度での報復措置を講じる方針を発表している。世界1位と2位の経済規模を有する米中の間で貿易戦争が発生する可能性が浮上していることが、ゴム相場の下げをエスカレートさせている。

投資家のリスク選好性の後退に加えて、米中経済の下振れ懸念も手伝い、非鉄金属を筆頭に原油などに対しても押し下げ圧力が発生している。この流れの中でゴム相場も下振れしており、米中双方が更に緊張を高めるような動きを見せると、値崩れ状態が加速する可能性も抱えている。

一方で、現在の価格水準はコストの視点では下げ過ぎ感が強くなっている。タイの農家は従来から60バーツ水準がゴム農園の経営を維持する上での最低価格として、できれば80バーツが必要と主張している。こうした中、40バーツ台中盤の値位置は、過去に農家の売り渋り、安値への抗議デモといった価格防衛の動きを促してきたレベルであり、産地主導で安値是正が促されるリスクに注意が求められる。

特に、過去に生産国政府が市況対策に動き出すきっかけとしては、農家の抗議デモが大きな役割を果たしており、ゴム相場の値崩れに対して産地が抵抗を示すと、マクロ需給要因に基づく値下り圧力が、コストの視点から下げ止まる可能性が浮上することになる。過去に何度も繰り返されている相場パターンだが、今年も生産国政府に対して市況対策を求める催促相場の様相を呈し始めている。
(2018/06/20執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年6月25日「私の相場観」

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