◎〔アナリストの目〕天然ゴム、安値低迷か=年後半にかけ供給過剰圧力

東京天然ゴム先物相場は、米中貿易戦争に対する警戒感から2016年10月以来の安値圏となる1キロ=173円30銭まで値下がりしたが、その後は180〜190円水準まで自律反発的な動きを消化する局面を迎えている。相場テーマを絞り切れずに短いタイムサイクルでポジション調整を繰り返すだけの投機色が強いマーケット環境が続いている。出来高、取組高も減少傾向にあり、高いレベルの先行き不透明感に包まれた状態にあることがうかがえる。

米中貿易戦争のリスク浮上という特殊要因が、マインド面から天然ゴム相場の上値を圧迫していることは間違いない。米財務省の為替報告書では、対米貿易不均衡是正に向けた中国の取り組みに進展が見られないことに強い懸念を表明しており、米中両国が経済制裁を科す事態になれば、中国のゴム需要環境は大きなダメージを受ける可能性がある。米通商代表部(USTR)の制裁リストには、空気タイヤの他にベルトコンベヤーなど複数の中国製ゴム製品が掲載されている。秋の米中間選挙に向けてトランプ米大統領は「Twitter外交」とロシアにやゆされる予測困難な対外政策を繰り返しているが、米中通商関係が不安定化し、不測の需要減退圧力が発生するシナリオに対しては、今後も高いレベルの警戒感が求められよう。

こうした中、米国の対露経済制裁を受けて、ロシア産への供給依存度が高い非鉄金属相場が急騰したことは、数少ないポジティブ材料と言えた。天然ゴムと非鉄金属相場との間には一定の連動性があり、ロンドン非鉄金属相場の急伸に中国素材市況もつれ高し、それが天然ゴム相場も押し上げるシナリオは想定しておく必要があった。しかし、その非鉄金属相場も、金属市場の混乱を受けて米財務省が制裁先送りを決定したことで、既に沈静化が進んでおり、ゴム相場は上昇ストーリーの一つを早くも失った格好になっている。

需給面では、欧州、北米、中国などのタイヤ需要が新車用のみならず買い替え用も伸び悩む一方、供給環境はインドネシアやマレーシアなどを中心に良好であり、マクロ需給環境が本格的なリバウンドを拒否した状況に変化は見られない。天然ゴム生産国連合(ANRPC)によると、1〜3月期は総需要が前年同期比7.6%増の336.1万トンに対して総供給は同3.3%増の315.2万トンであり、この期間には20万トン規模の供給不足が発生している。ただ、年後半にかけては増産期入りで逆に供給過剰圧力が発生するのは必至であり、改めて強力な政策介入が実施されるか、突発的な天候障害などが発生しない限りは、ゴム相場の上昇余地は限定されることになる。

国内外の生ゴム在庫は潤沢であり、定期相場の順ざや傾向もゴム市場に対する投機マネーの流入を限定しよう。産地との価格バランスを考慮すれば、200円台回復は特に無理のある展開ではないが、そこからさらに大きく上昇するのであれば、上海ゴム市場の「投機」という不確実性の高い相場テーマに依存せざるを得ない。

もっとも、生産コストの視点が産地相場を下支えする構図にも変化は生じず、逆にここからコアレンジをさらに大きく切り下げる必要性も乏しい。実際に、消費地相場が米中貿易戦争をめぐる議論などで揺れ動く中でも、産地相場は一貫して底堅く推移している。安値限界ラインが近い価格水準であることは確認されている。需給緩和が上値を圧迫し、コスト論の視点が下値を支え、安値ボックス気味の展開が続きやすい。上昇テーマも下落テーマも欠いた状態に陥っている。

※小菅 努(こすげ・つとむ) マーケットエッジ代表 

(2018/04/23執筆)
(出所)時事通信社「アナリストの目」2018/04/25