◎〔アナリストの目〕円高ショックが大きい天然ゴム=小菅努氏 

TOCOM商品市場では、円高の脅威が増している。国際商品市況は原油を筆頭に堅調に推移しており、CRB商品指数の年初からの上昇率は3.0%に達している。一方、同じ期間にドル円相場は3.7%の円高・ドル安となっており、円建て商品相場は上昇しづらい環境になっている。TOCOMゴム相場は最大で4.8%の下落率を記録しているが、単純計算で下落幅の77%が円高要因で説明が付き、残りの23%が上海ゴム相場の上値の重さや国内在庫の急増圧力によるものと分析できる。

1月23日の日本銀行金融政策決定会合では、大規模な金融緩和策の維持を決定し、黒田日銀総裁は緩和政策の出口を検討すべき局面ではないと明言している。しかし、マーケットは日銀の政策変更の可能性に敏感になっており、今後も円高に振れるケースが増えやすい状況になっている。ドルの利上げ着手局面を振り返ってみれば、実際の利上げに先行する1年半前からドル高圧力が発生していた。円相場もそれと同じパターンをたどるのであれば、今年の円建てゴム相場はマイルドな下押し圧力にさらされる場面が増える可能性を想定しておく必要がある。

一方、ゴムの需給要因は必ずしも重要視されていない。タイ、インドネシア、マレーシアの3カ国は3月末までに35万トンの輸出削減を行うことで合意している。合意の履行状況を不安視する向きもあったが、各国の報告内容を見る限りは、現時点ではかなり高い合意順守状況にあるもようだ。ゴム生産国の価格低迷に対する危機感は強く、4〜5月前後がピークになる減産シーズンに向けて供給制約は強化される方向に展開している。しかし、産地相場も含めて国際ゴム相場の反応は鈍く、需給動向そのものに対する関心の低さが再確認されるだけにとどまっている。逆に、国内在庫が昨年10月以降に倍増しているといったネガティブな動きも材料視されておらず、昨年と同様に上海ゴム市場における投機マネーの動向が最重要視されることになる。

その中国市場では年初から株価が急騰しており、コモディティー市場における投機マネーの流動性拡大も期待できる環境になっている。しかし実際には、むしろ「コモディティー→株式」への資金フローの方が優勢である。鉄鉱石や石炭相場などもパフォーマンスの低さが目立ち、上海ゴム相場のみが独歩高となるような環境にはない。本来は、国際通貨基金(IMF)が米税制改革の効果で主要国の成長見通しを軒並み引き上げている恩恵を受けやすい状況だが、突然に急伸した後に急落する場面も目立ち、今後も上海ゴム相場は1トン=1万4000元水準で方向性を打ち出しづらい状況にある。中国の各種政策引き締めがピークを脱したことで下値不安は後退するが、同国の17年新車販売台数は前年比3%増にとどまっており、生産地でよほどの大規模な供給障害が発生しない限りは、ボックス気味の展開が続く可能性が高そうだ。

昨年の東京ゴム相場の出来高は13年ぶりの低水準になったが、ゴム需要家にとっては好ましい安定した価格環境ながらも、投資家にとっては仕掛けづらい相場環境が続く可能性が高い。

※小菅 努(こすげ・つとむ)氏 マーケットエッジ代表 


(2018/01/29執筆)
(出所)時事通信社「アナリストの目」2018/01/30