原油60ドル台は時期尚早
まだ危うい需給正常化

サウジアラビアのファリハ・エネルギー相は、2019年以降も主要産油国の間で政策協調を行うことで合意していると発言した。現在の協調減産は18年末までが期限とされており、協調減産の「出口」を巡る議論も活発化しているが、その「出口」に長めの期間を設定することで、協調減産体制からの離脱をスムーズに行うことを意図したものである。今回の協調減産体制によって、国際原油需給・価格環境の安定化を目指す方針を強く示した格好になる。

一方で、サウジアラビアがこのような踏み込んだ発言を行っているのは、それだけ需給見通しの先行きがぜい弱であることの裏返しとも言える。17年は強力な需要拡大圧力と協調減産によって、世界の石油在庫に対しては強力な減少圧力が発生した。特に4~6月期以降は3四半期連続で在庫が減少しており、在庫余剰感は解消方向に向かっている。まだ目標とする在庫の5年平均回帰までは道半ばの状況だが、少なくとも協調減産体制は一定の成果を上げ、国際原油相場は14年12月以来の高値圏まで上昇している。WTI原油は65ドル水準、ブレント原油は70ドル水準まで値上がりしているのは、投機筋が原油需給環境の改善傾向を高く評価していることを明確に物語っている。

ただ、国際エネルギー機関(IEA)の推計では、18年は上期が若干の供給過剰、下期が若干の供給不足であり、年間を通じた需給バランスはほぼ均衡状態との見通しに留まっている。すなわち、現時点では昨年のような大規模な在庫取り崩しが想定されている訳ではない。もちろん、経済破綻状態に陥ったベネズエラ、武装勢力の動きが活発化しているリビア、対米関係が悪化しているイランなどの生産動向によっては、想定外の需給ひっ迫状態が発生する可能性も残されている。その際は、WTI原油ベースで70ドルや80ドルといった価格水準を正当化する余地もある。

ただ、そうした特殊な供給トラブルが発生しないのであれば、堅調な需要環境を考慮に入れても18年中に更に在庫の削減を進めることができるか否かは、ぎりぎりの判断を求められる状況にある。特に、シェールオイル、オイルサンド、深海油田などは原油価格動向に敏感であり、シェールオイルの場合だと数カ月といったタイムスパンで価格変動の影響が生産動向に反映されることになる。

そして、足元ではシェールオイルの生産高見通しを引き上げる動きが相次いでおり、このまま現行価格水準を維持してシェールオイル産業に刺激を与え続けると、18年通期の供給超過といったシナリオも浮上する余地がある。足元では寒波の影響もあって需要が強めに推移しているが、今後は需要の端境期に向かうことになり、そのタイミングでシェールオイル増産が加速するような事態になると、一気に短期需給は緩むことになる。WTI原油の60ドル台定着を進めるのは時期尚早とみている。(2018/01/24執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年1月29日「私の相場観」