年初の原油価格が高騰
上昇余地は限定的か

2018年の原油相場は、年初の取引開始と同時に急伸地合を形成した。NY原油先物相場は、昨年末の1バレル=60.42ドルに対して、1月第二週には早くも63ドル台まで値位置を切り上げている。これ14年12月以来となる約3年ぶりの高値を更新したことを意味し、昨年6月の42.05ドルをボトムとした原油高のトレンドが維持されていることが確認できる。

年末・年始の原油相場で材料視されたのは、イラン情勢の緊迫化だった。イラン国内では、高インフレや失業率上昇などに不満を強めた市民が大規模な反政府デモを展開し、同国からの原油供給に不確実性が高まったことが、原油価格に対してリスクプレミアムの加算を促した。イランは石油輸出国機構(OPEC)内で第三位の産油国であり、反政府デモが原油供給に影響を及ぼすと、不測の需給ひっ迫状態が実現する可能性もあるためだ。

しかし、その後は反政府デモが収束に向かったにもかかわらず、原油相場は更に上値を切り上げる展開になっている。今回の反政府デモでは原油一滴も供給障害は発生しない見通しだが、原油相場は積み上がったリスクプレミアムの剥落を進めることなく、逆に上昇ペースを加速させている。

極めて投機色の強い値動きと評価しているが、今回のデモをきっかけに米国=イラン関係が一段と悪化していることもあり、イラン核合意の見直し議論の活発化などが本格化すると、イラン産原油が長期にわたって落ち込むリスクも浮上することになる。現実問題として、イラン核合意は米国単独で破棄が可能なものではなく、直ちにイラン産原油を取り巻く環境が大きく変わる可能性は低い。ただ、昨年に協調減産の需要拡大の効果で在庫環境の正常化が進んでいることもあり、マーケットはこの種の供給不安に敏感に反応する「通常の相場環境」に回帰しつつある。

もっとも供給「障害」ではなく供給「不安」に留まる限りは、原油高には限界がある。原油相場の高騰は需給ひっ迫リスクのシグナルとなり、本来であれば必要ではない需要抑制や増産圧力が、必要以上の需給緩和状態をもたらすリスクを高めるためだ。特に、シェールオイル産業は既に昨年後半の油価上昇に反応し始めているだけに、近く増産ペースが加速する可能性は国際エネルギー機関(IEA)などからも指摘されている。

18年の世界石油需要は前年比で日量130万バレルの伸びが想定されているが、米産油量は既に97万バレルの増産が予想されている。しかも、米エネルギー情報局(EIA)は過去5か月連続で米産油量見通しを引き上げており、このまま原油高を放置しておくと、需要拡大幅をシェールオイル増産幅が上回り、在庫調整の動きが巻き戻される可能性も浮上する。実際にイラン産原油に供給障害が発生すれば60ドル台定着も可能になるが、現状では投機色の強い高値水準であり、持続可能性は乏しいと評価している。
(2018/01/10執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年1月15日「私の相場観」