小菅努の商品アナリスト日記

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2020/10

【ゴールドマン・サックスの強気予想を検証】インフレのテールリスクを読む

「ひろこのウィークリーゴールド」に出演しました。
【ゴールドマン・サックスの強気予想を検証】インフレのテールリスクを読む


膠着状態が続く原油相場

膠着状態が続く原油相場
バイデン勝利だと原油高

NY原油先物相場は1バレル=40ドルの節目を挟んで明確な方向性を打ち出せない展開が続いている。新型コロナウイルスの感染被害を受けての需要ショックはピークを脱する一方、石油輸出国機構(OPEC)プラスの協調減産が高い合意順守率を維持する中、過剰在庫圧縮の動きは続いている。8月にOPECプラスは減産規模を縮小したが、需給バランスに大きな歪みが発生することは回避されており、改めて急落対応を迫られる必要性は薄れている。一方で、新型コロナイルスの感染被害は冬に向けて拡大し始めており、今後も安定的に需給リバランスを進めていくことが可能なのかはマーケットの見方も割れている。この結果、下値は固いが上値も重い、リスクバランスが中立に近い相場環境が続いている。

国際エネルギー機関(IEA)は冬の需要期に当たる10~12月期に大規模な在庫取り崩しが可能と強気の見通しを示している。ただ、コロナ禍の影響で「ゴールポストが動き続けている」として大きな不確実性を指摘している。一方、OPECは7~9月期が在庫減少圧力のピークであり、10~12月期、更に2021年は緩やかなペースでしか在庫減少は進まないとの慎重な見方を示している。

10月19日にはOPECプラスの合同閣僚監視委員会(JMMC)が開催されたが、そこでは最悪の場合には21年は日量20万バレルの供給過剰になるとの見通しが示されていたことが明らかになっている。9月段階ではあらゆる想定の下で供給過剰は想定されていないとの見通しが示されていたが、その後の1か月で欧州、南北米、アジアを中心に新型コロナウイルスの感染被害が急速な広がりを見せる中、今後も過剰在庫の圧縮を進めることができるのか、不透明感が強くなっている。

ただ、OPECプラスは追加の政策調整の可能性も示唆し、原油需給・価格管理に自信を示している。サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は、原油の空売り筋は「地獄のような苦しみを味わうだろう」として、OPECプラスの需給管理に疑問を投げ掛けることを強く牽制している。11月30日にOPEC総会、12月1日にOPECプラス会合が控えており、OPECプラスとしては来年1月に予定されている協調減産規模の縮小(=増産)を見送る可能性も示唆している。

一方、11月3日には米大統領選を控えているが、世論調査で優勢が伝えられているバイデン元副大統領は、クリーンエネルギーへの転換を主張しており、シェールオイル開発に関しては制限を強化する方針を打ち出している。オフショアの国有地における新規開発、シェールオイル開発におけるフラッキング規制などが選挙公約として掲げられている。短期的には大規模な財政出動で石油需要が増える一方、シェールオイル生産にブレーキが掛かると、政策要因で原油相場に上向きのエネルギーが発生する可能性も想定したい。

(2020/10/21執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年10月26日「私の相場観」

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トルコ中銀は予想外の利上げ見送り 金融政策の不透明感強まり、リラは過去最安値を更新

トルコ中央銀行は10月22日に開催した金融政策会合で、主要政策金利の1週間物レポレートを10.25%で据え置くことを決定した。マーケットでは1.75%の追加利上げが予想されていたため、この決定は予想外で意外感が強く、トルコリラは急落している。

リラ/円相場は会合直前の13.43円をピークに、一時13.11円まで最大2.4%の急落地合になっている。対ドルでもほぼ同様の値動きがみられ、ともに過去最安値を更新している。

トルコ中央銀行は前回9月24日の会合において、レポレートを8.25%から10.25%まで引き上げている。これは約2年ぶりの利上げであり、声明文では「インフレが予想以上に上昇した」と指摘していた。その後発表された9月消費者物価指数は前年同月比11.75%上昇と8月の11.77%上昇から下振れしたが高止まりしており、更にアゼルバイジャンとアルメニアの軍事衝突などの地政学リスクがリラ相場を一段と押し下げる中、マーケットではインフレ抑制、通貨防衛のための追加利上げは不可避とみていた。

しかし今会合の声明文では、「インフレ見通しに対するリスクを抑制するために取られた金融政策と流動性管理の措置を受けて、金融状況の大幅な引き締めが達成された」として、9月の利上げで目的は達せられたとの評価が下されている。

現実にはインフレ見通しが一段と悪化する中で、利上げの目標が達成されたとの評価には意外感があり、マーケットでは経済ではなく政治で利上げ打ち止めが決断されたのではないかとの懐疑的な見方が広がっている。エルドアン大統領が景気抑制要因となる利上げに反対姿勢にあることは周知されている。このため、経済環境からは今後の金融政策を予想することが困難、かつ、不透明な金融政策フレームに早くも逆戻りしたのではないかとの懸念が広がっている。すなわち、トルコ中央銀行がインフレや通貨価値コントロールの役割を政治的要因で放棄してしまったとの疑惑が再燃しているのである。

トルコリラ相場が改めて過去最安値を更新する動きは、マーケットが今回の利上げ見送りの判断の妥当性に疑問を投げ掛けたと評価できよう。地政学リスクの解消も進まない中、下向きのボラティリティの高まりが警戒される地合が続く見通しだ。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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天然ゴム価格が2年8カ月ぶりの高値更新、コロナ禍でも価格急騰の理由

タイヤなどの原料になる天然ゴム価格が急伸している。大阪取引所の天然ゴム先物相場(RSS)は、10月初めの1㎏=183.10円に対して21日の時間外取引では210円台に乗せ、2018年2月以来の高値を更新している。

新型コロナウイルスの影響で自動車生産・販売が一時停止した4月には138.30円まで値下りしていた相場だが、コロナ禍が深刻化し始める前の200~210円水準を完全に上抜く展開になっている。

背景にあるのは、「需要環境の正常化」と「生産障害」が同時進行していることだ。需要と供給の双方の要因から需給バランスが引き締まっていることが、価格高騰を促している。

新型コロナウイルスは当初、感染被害防止の観点から各国で自動車やタイヤ工場に対して稼働停止を迫った。新車販売が事実上ストップしたこともあり、天然ゴムに対する需要は大きく落ち込んだ。しかし、その後は新車用タイヤ、買い替え用タイヤ需要共に急速に回復し、特に最大市場である中国では安定的に前年同期の水準を上回る需要環境が実現している。

一方、供給サイドではラニーニャ現象の影響が大きい。ラニーニャ現象は東南アジアで豪雨、洪水、台風などの異常気象をもたらしており、その影響で天然ゴムの集荷量も落ち込んでいる。本来だと雨期となるこの時期は天然ゴムの増産期であり、来年の乾季に訪れる減産期に備えて在庫積み増しを進めていく時期になる。しかし、今年は大阪取引所の生ゴム指定倉庫在庫は前年同期のほぼ半分の水準まで落ち込んでおり、十分な在庫手当てを行えないままに増産期が終わりに近づいていることが警戒されている。今年は同じくラニーニャ現象の影響で、トウモロコシ、小麦、大豆などの穀物相場が急伸している影響もあろう(参考:ラニーニャ現象で穀物相場が高騰、世界的不作の恐怖)。

しかも、主産地タイでは首都バンコクを中心に反政府デモが展開されており、政治的混乱も供給リスクとして警戒されている。また、インドネシアやマレーシアでは新型コロナウイルスの新規感染者数が増加しているため、天然ゴム農園で通常の農作業ができるのかも不透明感が強くなっている。

8月には天然ゴム相場が急伸した局面で、農家などが手元在庫の売却を加速させたことで、9月にかけては上げ一服感が広がっていた。しかし、再び集荷量が落ち込む一方で、再度の値上がりでも集荷量が増えない状態になる中、天然ゴム需給のひっ迫化に対する警戒感が一段と強くなっている。

2018年後半以降、天然ゴム相場は210円水準で上値を抑えられる展開が繰り返されているが、ここを上抜くようなエネルギーがあると、更に大相場に発展する可能性も浮上することになりそうだ。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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天候不順で農産物全面高

天候不順で農産物全面高
ラニーニャ現象の余波続く

気象庁は10月9日に公表した最新の「エルニーニョ監視速報」において、「夏からラニーニャ現象が発生しているとみられる」、「今後冬にかけて、ラニーニャ現象が続く可能性が高い(90%)」との報告を行っている。ラニーニャ現象とは、南米沖の海面温度が基準値よりも低い状態になると発生する異常気象であり、グローバルな天候不順を引き起こす傾向が強い。今年は、中国南部で大規模な洪水被害が発生し、日本でも豪雨や洪水被害が多発しているが、いずれもラニーニャ現象の影響が指摘されている。

ラニーニャ現象が発生すると日本では冬の間に厳しい寒波が観測され易いが、東南アジアでは海水温度が高めに推移するため、積乱雲の発生から台風や豪雨被害が発生し易い。実際に今年は東南アジア全域で洪水被害が報告されており、天然ゴムやパーム油の供給不安が高まっている。2011年にはタイで自動車工場が大規模な洪水被害に見舞われたが、農地や道路の冠水被害が報告されると、供給不安から急伸地合が形成される可能性が高まる。中国でも洪水や台風の影響で農産物の収穫量が減少しており、米国産などの調達量を増やしている。

一方、南米のブラジルやアルゼンチンでは乾燥懸念が強くなっている。現在、南米はトウモロコシや大豆の作付け期になるが、最高気温が40度近くに達する一方で、週間降水量がゼロの地域も多く、作付け作業の遅れが警戒されている。作付けが失敗に終わるリスクから、降雨による土壌水分の改善が待たれているが、このままホット・アンド・ドライ(高温乾燥)傾向が続くと、不作のみならず作付け放棄のリスクも浮上することになる。ロシアやカザフスタン、フランスなどでも熱波が報告されている。2020年度産が収穫期目前に大きなダメージを受け、更には冬小麦の作付けに対する影響も警戒されている。米国でもメキシコ湾でハリケーンが頻発し、今年は原油や天然ガス、綿花生産などが大きなリスクに晒された。

農産物価格が歴史的な高騰相場を形成するパターンを振り返ると、概ねエルニーニョ現象発生後のラニーニャ現象発生となっている。二つの異常気象が連続して発生すると、高い確率で農産物供給全体に大きな混乱が生じ、異常ともいえる高騰相場が形成されることになる。近年では2010/11年度、06/07年度、1997/98年度などがそのパターンだが、今回のラニーニャ現象もエルニーニョ現象の終息後に発生している。

まだラニーニャ現象は夏場に発生したばかりとみられるが、これが長期化して来年の作付け期にまで持ち越されるような事態になると、深刻な供給懸念が農産物相場を強く刺激しよう。特にコロナ禍で労働力や輸送、輸出などサプライチェーンは大きなリスクを抱えているだけに、そこに天候リスクが加わることに対する警戒感は強い。ラニーニャ現象が一時的なものに留まるか否かに注目したい。

(2020/10/14執筆)
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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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