小菅努の商品アナリスト日記

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2020/08

産金株の隆盛、石油株の衰退

産金株の隆盛、石油株の衰退
資源株のトレンドが変わる

著名投資家ウォーレン・バフェット氏の率いるバークシャー・ハサウェイは、今年4~6月期に米銀行株を大量に売却する一方、産金大手バリック・ゴールドの株式2090万株、約600億円相当を購入していたことが明らかになった。

バフェット氏は、マーケットでは金嫌いで知られている人物の一人であり、従来から金には「有用性はない」として、利益を生み出す優良企業に対して、できるだけ多くの金額を長期にわたって投じる必要性を訴え続けていた。こうした中、金価格の動向に強い影響を受ける産金株に対する本格投資に踏み切ったことが注目を集めている。

今回投資したのは金上場投資信託(ETF)ではないため、金に対する直接投資を行っている訳ではない。あくまでも産金事業でバリック・ゴールドが収益を上げることを想定しての投資行動になる。しかし、米経済成長の最も大きな恩恵を受ける業種の一つである銀行株を大量売却して、その資金を産金株に投じたことで、マーケットではバフェット氏が新型コロナウイルスによる米経済の長期停滞、低金利環境を想定し、産金事業がある程度の長期にわたって高い成長率を持続する厳しい状況を想定しているのではないかとの見方が広がっている。バフェット氏は、金に対する従来の否定的な見解を変えたのか明らかにしていないが、今後の発言によっては新たな「援軍」、「応援団」を得た状態になるのかもしれない。

一方、アメリカの代表的な株価指数であるダウ工業平均株価を算出するS&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズは、ダウ工業平均株価から石油大手エクソン・モービルを除外すると発表した。ダウ工業平均株価は僅か30銘柄で米株式市場全体の動向を反映できるように構成されているが、現在の30銘柄では最も古い1928年から採用されてきたエクソン・モービルが、8月31日付けでダウ工業平均株価から除外されることになる。

現在のダウ工業平均株価では、エクソン・モービルの他にシェブロンが組み込まれており、石油会社は30銘柄中の2銘柄を占める状態が長期にわたって続いていたが、ついに1銘柄の時代に移行することになる。

脱化石燃料の動きに加えて、ESG投資に象徴される環境に配慮した企業投資を求めるブームもあり、石油株は投資家から敬遠される傾向が強くなっている。エクソン・モービルは「石油の世紀」を象徴する銘柄の一つだったが、もはや主要30銘柄の地位を維持できなくなっている。

しかも、事実上はエクソン・モービルの代替でダウ工業平均株価に新たなに正用されることになったのが、ソフト大手セールスフォース・ドットコムである。クライドによる顧客管理システムなどを主力にしており、米経済の軸足が「石油」から「データ」に移行していることを象徴する動きの一つと言えるかもしれない。
(2020/08/26執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年08月3日「私の相場観」

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株高・ドル安・在庫減少でも上がらない原油価格の謎


原油価格が膠着化している。NY原油先物相場は1バレル=40ドル台前半で小動きに終始している。6月8日に40ドルの節目を回復しているが、その後は約3か月で43ドル水準まで値上がりするのに精一杯の状況にある。その間に、世界的な株高・ドル安が進行したことを考慮すれば、コロナ禍以前の50~60ドル水準を回復する展開を支持する余地もあったが、実際の6月以降は底固いものの値動きの鈍さが目立つ状況が続いている。

コロナ禍の世界経済に対するショックが後退する中、原油需要環境も改善傾向にある。一部の国で新型コロナウイルスの感染第2波が観測されているが、4~5月にみられたような都市封鎖(ロックダウン)に象徴される強力な行動規制の再開は、日本を含む各国が見送っている。当然にロックダウンはコロナ禍終息に大きな効果が認められるが、4~6月期の経済活動の急速な落ち込みを受けて、各国政府はもはやロックダウン再開を有力な選択肢にはできない状況に陥っている。石油輸出国機構(OPEC)の推計では、世界石油需要は4~6月期の日量8,184万バレルが7~9月期には9,210万バレル、10~12月期には9,583万バレルまで回復する見通しになっている。

経済活動がコロナ禍以前の状態を早期に回復するのは困難としても、回復基調を維持できるのであれば、国際原油需給は緩和状態のピークを脱し、正常化に向かうプロセスが原油価格を押し上げるのは当然とも言える。実際に、米原油在庫は7月中旬から5週連続で減少中であり、過剰在庫の削減は着実に進んでいる。5月17日の5億3,660万バレルが、8月21日には5億0,780万バレルとなっている。

また、原油相場と同様に景気動向に強い影響を受ける株式相場は、米国のS&P500とNASDAQ総合指数が早くも過去最高値を更新している。石油輸出国機構(OPEC)プラスも、需給リバランスは可能との判断から8月1日以降は協調減産の規模を日量970万バレルから770万バレルまで大幅に削減している。産油国は、有事対応としての減産について、規模を縮小する出口戦略への着手が可能と考えている訳だ。

それにもかかわらず原油相場が伸び悩んでいるのは、今後の需要環境に対してあまりに多くの不確実性があるためだ。秋から冬にかけて改めてコロナ禍が深刻化すれば、石油需要は容易に大きく下振れする可能性がある。仮にロックダウン再開といった事態になると、4月と同様に再び原油価格がゼロになる事態までも想定しておく必要がある。

実際に、6月下旬以降に米国で新型コロナウイルスの感染被害が広がりを見せ始めると、米国の末端石油需要の回復はほぼ止まっている。米製油所の原油処理量は、前年同期の水準を15.5%下回っている。ガソリン需要も7.5%下回っている。OPECプラスの内部報告書でも、今年の世界石油需要について前年比で日量910万バレル減を基本にしつつも、コロナ禍の動向次第で1,120万バレル減までマイナス幅が拡大し、過剰在庫の減少が進まない可能性も想定していることが明らかになっている。

しかも、米国では夏のドライブシーズンが終わり、今後は需要の端境期に向かうことになる。製油所はメンテナンスシーズンに突入し、コロナ禍の影響を考慮に入れなくても秋にかけて需要が停滞し易い時期に向かうことになる。秋冬のコロナ禍に対する警戒感が杞憂に終わるのであれば、原油相場は世界的な在庫取り崩しの動きと連動して緩やかな上昇地合が支持される。しかし、コロナ禍が深刻化した場合には、これまでの需給リバランスの取組が全て破綻し、改めて過剰在庫が原油相場を大きく下押しするリスクを抱えた状態にある。

全てはコロナ禍が年末時点、そして来年にどのような展開を見せているのかに依存するが、先読みが困難な状況が、過剰在庫の削減が進み、株高・ドル安が進む環境下にあっても、原油相場の膠着化を支持している。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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天然ゴム、コロナ禍からの回復遅れる生産

〔アナリストの目〕天然ゴム、コロナ禍からの回復遅れる生産

天然ゴムの産地相場が急伸している。タイ中央ゴム市場におけるRSS現物相場は、コロナ禍による経済活動の低迷が深刻化した4〜5月にかけて1キロ=40バーツ水準まで下落していたが、8月には50バーツの節目を回復し、昨年7月以来の高値を更新している。

需要環境と供給環境のコロナ禍からの回復力における温度差が、産地で需給タイト感を発生させている。コロナ禍は第2波、第3波が世界各地で観測されているとはいえ、世界全体としてはそのショックが消化される局面にある。中国の7月新車販売台数は4カ月連続で前年比プラス、3カ月連続で2桁増になっている。政府のインフラ投資によって、トラックなどの商業車に特需が発生している影響もあるが、タイヤ販売に関しても新車用、買い替え用ともにコロナ禍前の水準を上回っているとみられる。欧米でもタイヤ販売は4〜5月がボトムであり、6月以降は改善傾向にあるとの報告が目立つ。

一方で、供給環境はこうした需要回復に見合ったペースで改善していない。タイでは干ばつ傾向が依然として強い一方、インドネシアやマレーシアではモンスーンによる豪雨が観測された。今後はラニーニャ現象が発生するとの警戒感も強い。前回のラニーニャ現象が発生した2010〜11年には、天然ゴム以外にも、砂糖やコーヒーなどの農産物価格全体が急伸した経験がある。

また、新型コロナウイルスの影響でゴム農地では労働力不足が深刻化している。特に外国人労働者の職場復帰が遅れており、ゴムのみならずパーム油でも農場経営における大きなリスク要因になっている。さらに新型コロナウイルス対策で農場や工場では新たな操業体制の確立を求められているが、供給環境の正常化には大きな後れが目立つ。

決して供給の絶対量が大きく落ち込んでいるわけではなく、供給量トレンドは上向きである。しかし、需要と供給との間で回復ペースには明確な違いが見受けられる結果、産地需給に対して突然にタイト感が浮上した状態になっている。

◇産地主導の上昇地合い維持か

産地相場の上昇トレンドが確立する中、JPX天然ゴム先物相場RSSも、4月2日の1キロ=138円30銭をボトムに、8月には170円台までコアレンジを切り上げている。中国通貨人民元相場の上昇もあって、上海ゴム相場の値動きの鈍さがJPXゴム相場の上値も抑えているが、産地における需給タイト感が解消されるまでは、産地主導の上昇地合いが維持されよう。決してゴム相場の高騰が要求されるような需要環境にはないが、コロナ禍からの回復プロセスにおける供給環境の相対的な脆弱(ぜいじゃく)性が、ゴム相場を押し上げやすい状況にしている。 
(2020/08/25執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)時事通信社J-COM「アナリストの目」(2020年08月25日)

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ダウ平均がエクソンを除外、米株式市場で石油株の凋落加速

米S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズは8月24日、アメリカの代表的な株価指数であるダウ工業平均株価の構成銘柄から、石油大手エクソン・モービル、製薬大手ファイザー、防衛大手レイセオン・テクノロジーズの3社を除外する一方、ソフト大手セールスフォース・ドットコム、製薬大手アムジェン、産業機械大手ハネウェル・インターナショナルの3社を新規で組み入れると発表した。8月31日から新たな30銘柄で構成されるダウ工業平均株価の算出が開始されることになる。

ダウ工業平均株価は、僅か30銘柄で米国の上場株式市場全体像を反映するように意図されている。定量的なルールはないとされているが、1)時価総額が大きい、2)企業として名声がある、3)多くの投資家が関心を示している、4)持続的な成長を示している、5)米国で設立され本社がある、6)売上高の大半を米国内の営業活動で生み出しているなどの特性を有している。

ただ、時代の変化によって株式市場の全体像を反映する銘柄は変わるため、株価平均委員会が見直しを行い、常に最適な30銘柄が選択されるようになっている。例えば、指数の計算が始まった1800年代は農業や鉱工業の比率が高かったが、その後は経済発展と連動する形で情報通信業や医療などのサービス業の比率も高まり、近年はNASDAQに上場するハイテク企業から選択されることも増えていた。

エクソン・モービルは、現在のダウ工業平均株価を構成する銘柄では、採用年が1928年と最も古くなっているが、ついに除外されることが決定したのが今回の発表になる。これで、ダウ工業平均株価を構成する石油株は、シェブロンの1社になる。

エクソン・モービルは2006~12年にかけて、時価総額で米国最大の企業となった時期もあったが、脱化石燃料の動き、環境に配慮するESG投資、更にはコロナ禍におけるエネルギー需要の停滞を受けて、投資家から敬遠される傾向が強くなっていた。「石油の世紀」を支配する主要企業の一つだったが、もはや米国の株式市場においては、石油会社がダウ工業平均株価の中に2銘柄も組み込まれる力はなくなったと評価されている。

そして、エクソン・モービルの事実上の代替銘柄として選ばれたのがクラウドの顧客管理を主力とするセールスフォース・ドットコムになる。エクソン・モービルの代替銘柄が製造業ではなく新たなハイテク株になったことは、「データの世紀」への移行を象徴する動きの一つと言えるかもしれない。企業や国の競争力を高める原動力が、「原油」から「データ」に変わりつつあるトレンドが、ダウ工業平均株価の構成銘柄に対しても大規模な入れ替えを迫っている。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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方向性欠く展開が続く原油

方向性欠く展開が続く原油
需要見通しに不確実性

 原油相場は、高値膠着気味の展開が続いている。NY原油先物相場は、6月8日に1バレル=40ドルの節目に到達したが、それ以上は値動きが鈍化しており、過去2カ月間では辛うじて40~43ドル水準までコアレンジを切り上げる展開に留まっている。

世界経済は4~6月期の急減速を受けて、7~9月期には回復傾向を強めている。新型コロナウイルス対策の都市封鎖(ロックダウン)といった強力な施策が解消されるにつれ、経済活動は正常化に向かっている。石油需要に関しても、欧米では4~5月に最悪期を脱し、6月以降は明確な回復傾向を見せている。石油輸出国機構(OPEC)の推計だと、世界石油需要は1~3月期の日量9241万バレルが4~6月期には8195万バレルまで落ち込んだが、7~9月期には9222万バレル、10~12月期には9622万バレルと、急ピッチな改善傾向が続く見通しになっている。

 だからこそ、OPECプラスは8月から協調減産の枠を日量970万バレルから770万バレルまで大幅に引き下げても問題はないと判断し、有事対応としての協調減産体制の緩和に踏み切っている。需要が順調に回復するのであれば、それに応じて減産規模の段階的な縮小も可能と考えている訳だ。

 問題は、需要見通しが依然として大きな不確実性を抱えていることだ。現在の需要回復見通しは、新型コロナウイルスの感染被害がこれ以上広がらないことを前提にしている。しかし、今後は北半球が秋から冬に向かうことになり、その際に感染被害の第2波、第3波を回避できるのかは不透明感が強い。仮に限定的とはいえロックダウンが再開されるような事態になると、石油需要見通しは大幅な下方修正を迫られるリスクを抱えている。

 実際に、新型コロナウイルスの感染被害が再び広がりを見せた米国では、7月以降の需要回復がほぼ止まっている。これまでは末端の石油製品需要が明確な回復トレンドを見せていたが、足元では大きな回復も落ち込みも見られない状況になっている。製油所稼働率の回復も一服しており、本当に年末に向けて需要の回復、そして過剰在庫の取り崩しが進むのかは、依然として懐疑的な見方も根強い状況にある。

OPECと国際エネルギー機関(IEA)は、8月月報においてともに今年の石油需要見通しを下方修正している。航空機用ジェット燃料の需要回復が遅れている影響等も指摘されているが、IEAが需要見通しを下方修正したのは実に4カ月ぶりのことになる。需要環境・見通しに対して、明らかな逆風が確認されている。

 短期スパンであれば、ある程度の在庫減少圧力を見通すことはできる状況にある。7月以降は、米原油在庫の取り崩しが進んでいる。一方で、年末時点でどのような需要環境にあるのかは、明確な見通しを描くことが難しい状況が続くことになる。このため、株高・ドル安と理想的な市場環境でも、原油相場は明確な方向性を打ち出せない展開が続き易い。
(2020/08/19執筆)
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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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