小菅努の商品アナリスト日記

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2020/06

先行き不透明感で金は堅調

先行き不透明感で金は堅調
株価と関係なく買われる

 金相場が騰勢を強めている。NY金先物相場は1オンス=1700ドル台前半をコアとした膠着状態が続いていたが、6月下旬に入ってから上昇傾向を強め、年初来高値を更新している。スポット市場では約8年ぶりの高値が更新されており、1800ドル台乗せも意識される状況になっている。
 背景にあるのは、新型コロナウイルスの「第2波」に対する警戒感が強くなっていることだ。各国はロックダウンなどで新型コロナウイルスの封じ込めを進め、中国では3月、欧米では5月以降に経済活動の正常化を進める動きが強くなっている。しかし、6月入りしてからは米南部や中国北京などで改めて新規感染者数の増加が報告されており、本当に経済活動の正常化が可能なのか、先行き不透明感が強くなっている。

 株式市場では、景気トレンドの波はあっても、経済正常化のプロセスに変化が生じることはないとの楽観ムードも目立つ。米国株は乱高下を繰り返しながらも緩やかな安値修正プロセスを維持しており、6月のNASDAQ総合指数に至っては過去最高値を更新している。このため、リスク資産買い・安全資産売りの動きも十分に想定できる状況にあるが、実際には「リスク資産の株式」と「安全資産の金」が同時に上昇する展開になっている。

 米連邦準備制度理事会(FRB)が強力な金融緩和策を展開していることもあり、株式市場では投資家のリスク選好性が維持されている。しかし、金市場では株価がファンダメンタルズとかい離した投機的な高値を形成しているのではないかとの警戒感が強く、株高が逆に金に対するヘッジニーズを創出する状況になっている。現在のマーケット環境では、経済正常化期待から株式を買い進む動きがみられても、市場環境不安定化のヘッジとして金も買い進むことが選択されている。これは世界同時金融危機後に見られたのと同じ現象である。

 経済活動が最悪期を脱した可能性が高いことは間違いないが、米金融当局者は過度の楽観ムードを強くけん制している。新型コロナウイルスの感染被害は未だに終息した訳ではなく、ワクチンや治療薬の開発が順調に進み、市民が社会活動や経済活動に対する不安を払拭できるのかは、依然として不透明感が強いためだ。

 特に雇用環境の改善は遅れがちであり、マイノリティーや低所得者などの弱者程に、新型コロナウイルスの経済的ダメージが大きいことは、最近の黒人抗議デモの影響もあって、重大な関心事になっている。経済正常化が想定よりも遅れる可能性も高く、議会は追加的な財政出動、FRBは追加金融緩和の議論を継続している。

新型コロナウイルスを起点とした経済リスクは依然として膨張を続けており、安全資産に対する投資ニーズ軽減が可能な状態にはない。金上場投資信託(ETF)も、ほぼ一貫して投資残高の拡大を進めている。1800ドル台へのコアレンジ切り上げが打診されよう。
(2020/06/25執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年06月29日「私の相場観」

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コーヒー相場や安値低迷か

コーヒー相場や安値低迷か
6年ぶりの高在庫水準へ

 ICEコーヒー先物相場は、1ポンド=100セントの節目を下抜き、約8か月ぶりの安値圏で取引されている。昨年12月には一時142.45セントまで値上りしていたが、今年は4月以降に売り圧力が強まり、断続的に値位置を切り下げる展開になっている。背景にあるのは、ブラジルの大規模な増産によって国際コーヒー需給が6年ぶりの緩和状態に陥ると予想されていることだ。

 ブラジルのコーヒー生産は隔年で増産と減産を繰り返すサイクルにあるが、2020/21年度は増産(表作)年に該当する。このため、ブラジルの増産で需給が緩むことは広く予想されていたが、その増産圧力が従来の想定を上回る可能性が高まっているのだ。

 米農務省(USDA)によると、20/21年度の世界コーヒー生産高は前年度比915万袋(1袋=60kg)増の1億7609万袋が見込まれているが、ブラジル産のみで860万袋の増産が予想されている。今季のブラジルでは、総じて良好な気象環境に恵まれたことで高イールドが実現する見通しになっている。5~6月にブラジルではアラビカコーヒーの収穫作業が始まっているが、新型コロナウイルスの影響で例年と比較すると若干の遅れが報告されているが、今後は過去最大のコーヒー生豆が市場に供給される見通しになっている。しかも、ブラジル通貨レアルが過去最安値圏にあることで、ブラジルの農家は安値でも出荷意欲が強いとみられ、これから強力な供給プレッシャーの発生が確実視されている。

 一方、世界コーヒー需要は前年度比234万袋増の1億6628万袋と、強力な増産圧力に対応した伸びは期待できない状況になっている。新型コロナウイルスの影響がコーヒー需要にどのような影響を及ぼすのかは不透明だが、カフェやレストランなどへの外出が手控えられると、コーヒー需要に対して下押し圧力が発生することになる。実際にコーヒーチェーン最大手スターバックスは、アメリカ、カナダ、中国などで相次いで大規模な閉店を行うと発表している。今後はテイクアウト用の店舗展開を増やすとしているが、アフター・コロナの社会がコーヒー需要にどのような影響を及ぼすのかは、手探りの状態にある。

 20/21年度の世界コーヒー期末在庫は4148万袋が見込まれているが、これは前年度の3510万袋を18.2%も上回っている。これから各国で収穫作業が順調に進めば、大量の在庫が生産国と消費国の双方で発生することになり、コーヒー相場は90セント割れの可能性も含めた安値低迷状態が続き易い状況にある。新型コロナウイルスは中南米で依然として感染被害が広がり続けているため、収穫や流通、出荷にトラブルが発生すると短期的な需給ひっ迫感が浮上する余地はある。しかし、通常の供給体制が維持できるのであれば、需給緩和状態がコーヒー相場の低迷状態を促そう。

(2020/06/18執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年06月22日「私の相場観」

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緩やかな上昇続く天然ゴム

緩やかな上昇続く天然ゴム
生産環境に混乱残る

 東京天然ゴム先物相場は、4月2日の1kg=138.30円をボトムに、6月入りしてからは150円台中盤から後半まで値上がりする展開になっている。新型コロナウイルスによる需要ショックが想定以上に早く解消に向かう中、安値修正の動きが優勢になっている。

 新型コロナウイルスは、天然ゴムの主要消費先であるタイヤ需要環境にも壊滅的な被害をもたらした。外出規制の影響で新車販売が落ち込むのみならず、自動車工場の稼働も停止したことで、タイヤ工場も操業停止や縮小を迫られた。しかし、中国では2月、欧米では4月が自動車市場のボトムだった可能性が高く、その後は需要環境の改善傾向が、ゴム相場を支援している。

 最大市場である中国では、2月の新車販売が前年同期比で79.1%減少したが、4月には早くも4.4%増とプラスに転じ、5月は更に販売が伸びた模様だ。地方政府が補助金や商品券の交付といった販売奨励策を導入したこと、自動車取得制限を緩和したことなどで、マーケットの想定を大きく上回るペースで販売環境が正常化している。米国でも、4月の新車販売台数はほぼ半減したが、5月には概ね8割水準を回復する動きを見せている。

 5~6月にかけては欧米でも自動車工場の稼働が再開しているが、新車用と買い替え用タイヤの販売はともに改善傾向を見せている。厳しい雇用や所得環境から、タイヤ販売環境が早期に正常化できるのかは疑問視する向きも多い。しかし、少なくとも最悪の状態を脱したとの安堵感はある。

 しかも、今季は供給サイドも大きなリスクを抱えている。例年であれば、乾季の4月が減産期のピークであり、5月以降は雨季への移行に伴い段階的に生産量が拡大し、年末に向けて増産シーズンに向かう。しかし、今季のタイ中央ゴム市場の集荷量は、4月と5月とでほとんど変化がみられず、減産期明けが明らかな遅れを見せている。

 産地気象環境には特段の問題が見られないが、新型コロナウイルスの影響で農業部門も大きなダメージを受けており、供給障害が発生している。特にゴムなどのきつい農作業を求められる業種では外国人の出稼ぎ労働者への依存度が高いが、新型コロナウイルスの影響で入国や就労ビザなどの点でトラブルが発生しており、6月入りした後も供給環境の改善が遅れている。

 このまま新型コロナウイルスの第2波がみられなければ、6月には需要環境が更に改善を見せるのはほぼ確実である。その際に供給環境の改善が見られないと、ゴム相場は上昇ペースが加速する可能性もある。4~5月にかけて膠着状態が続いていた産地相場も、6月入りと前後して上昇傾向を強めている。
(2020/06/04執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年06月08日「私の相場観」

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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