小菅努の商品アナリスト日記

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2020/04

難航する産油国の協調減産協議、米国にも減産参加を求める声が強い

トランプ米大統領の仲介によって、主要産油国が協調減産の再開を模索し始めているが、合意が形成されるのかは、なお予断を許さない状況が続いている。サウジアラビアは4月5日に石油輸出国機構(OPEC)緊急会合の開催を要請したが、実際に緊急会合を開催できるかも含めて、産油国間の調整が難航しているためだ。

過度の原油安が経済や金融環境に対しても大きなリスク要因になる中、トランプ米大統領が対立を続けるサウジアラビアとロシアとの間で協議再開の働き掛けを行い、交渉のテーブルにつく方向での調整が始まっていることは大きな進歩である。一方で、トランプ大統領の主張する世界石油供給の約1割に相当する日量1,000万バレル、更には1,500万バレルといった大規模な協調減産の再開で合意できるのかは、依然として不透明感が強い。

当初は4月6日にもOPECプラスのテレビ会談が開催されると産油国間での調整が進んでいたが、現在は9日や10日開催で再調整が行われている。3月6日のOPECプラス会合では、サウジアラビアとロシアの協調減産延長を巡る協議が決裂したことで、協調減産体制そのものが崩壊した反省もあり、特にサウジアラビアは緊急会合開催前に事実上の合意形成を望んでいる模様だ。しかし具体的にどのような内容の協調減産であれば各国が合意できるのか、協議が難航している。

新型コロナウイルスの影響で、多数の産油国が対面ではなくTV中継で会談を行うため、実際の会談では突っ込んだ議論はできないとの思惑もあるのだろう。緊急会合はセレモニー的な内容になる可能性が高く、事前の合意形成が重視されている。

ロシアのプーチン大統領は4日、日量1,000万バレル規模の協調減産に理解を示し、原油価格について1バレル=42ドル前後が望ましいとして、具体的な価格ターゲットにも言及している。その一方で、原油相場の急落はサウジアラビアが協調減産から離脱し、ディスカウント販売を行っている影響が大きく、サウジアラビアに責任を取らせるといった挑発的な発言も行っている。サウジアラビア外務省は、プーチン大統領の発言を事実ではないと反発するなど、ロシアとサウジアラビアとの関係性は依然として緊張状態にある。

■米国にも減産参加の貢献を求める声が強い

より重要なポイントは、新しい協調減産体制には、従来のOPECプラス以外の産油国にも参加が要請されていることだ。世界的な危機状態とあって、全ての産油国に対して原油需給バランス安定化への貢献が求められている。具体的には、米国、カナダ、ブラジル、ノルウェーなどである。特に、原油安是正のための仲介を主導している米国に対しては、OPECとロシアの双方から協調減産への参加を求める声が高まっている。

米国では反トラスト法の影響で、国内石油会社に対して直接的な減産指示を行うことはできないとされているが、自主的な生産調整など何らかの形で、供給過剰状態を解消するための貢献を求める声が強い。現時点で、米政府高官からは否定的な発言が相次いでいるが、カナダ、ノルウェー、ブラジルなどは協調減産参加が法的、政治・経済的に可能なのか調整が進められており、主要産油国が一致して原油安に対抗する姿勢を打ち出すことができるかが問われている。

ただ、国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、仮にOPECプラスが日量1,000万バレルの協調減産を実施しても、4~6月には日量1,500万バレルの在庫積み増しが行われるとして、いずれにしても供給過剰状態の解消は難しいとの認識を示している。協調減産合意が実現すれば、無理な原油安によって各国で油田のシャットダウンを促すような必要性は薄れるが、それが国際原油需給・価格の安定化に十分な規模といえるのかは、全くの別問題になる。それだけ、新型コロナウイルスの原油需要に対するショックは厳しいものになっているということだ。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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サウジアラビアが産油国の緊急会合を要請、トランプ大統領の仲介成功か

トランプ米大統領は4月2日、サウジアラビアとロシアが原油の協調減産体制に回帰するとの見通しを示した。自身のTwitterにおいて、サウジアラビアのムハンマド皇太子と電話会談を行ったこと、そのムハンマド皇太子がロシアのプーチン大統領とも会談を行ったことも明らかにしている。

具体的には昨年の世界原油需要の約1割に相当する日量1,000万バレルかそれ以上の減産が行われることを期待、希望するとして、実現すれば石油・ガス産業にとってグレートだと投稿している。更には、減産幅が1,500万バレルに達する可能性も指摘し、全ての人にとって良い(グレートな)ニュースだと、自身のディール成功を誇示している。

サウジアラビア国営メディアもムハンマド皇太子とトランプ大統領の電話会談が行われ、サウジアラビアが石油輸出国機構(OPEC)プラスに対して緊急会合の開催を要請したと報じている。

■「価格戦争」終結に向けての第一歩になるか

3月6日のOPECプラス会合で追加減産を巡る協議がロシアの反対で破綻して以降、サウジアラビアは一切の協議を拒否して協調減産の期限が切れる4月1日以降の大規模増産の準備を進め、安価で大量の原油を市場に供給することで、自国のシェア拡大を目指す方針を鮮明にしていた。産油国の間でいわゆる「価格戦争(price war)」が展開されることへの恐怖心が、原油価格の急落を促していた。

しかし、原油相場急落が世界経済や金融市場、米国にとってはシェール産業に対する大きな脅威になる中、トランプ大統領が対立を深めるサウジアラビアとロシアとの間で仲介役を担った格好になる。

今後の焦点は、1)いつどのような形で緊急会合を開催できるのか、2)協調減産で合意できるのか、3)合意できるとすればどのような内容になるのか、4)その合意で新型コロナウイルスによる需要ショックをどこまで相殺できるのかなど、多岐にわたる。現時点でのファクト(事実)としては、トランプ大統領の仲介でOPECプラスの臨時会合開催の可能性が高まっていることだけであり、その先は全く見通すことができていない。

しかし、供給過剰の是正を「価格」のみならず「政策」でも働き掛けることが可能になれば、無理な原油安でシェールオイルなど高コスト原油の生産停止を迫る必要性は薄れることになる。現実問題として、需要が崩壊状態になる中で、産油国が協調しても原油需給バランスを安定化させるのは難しい。ただ、産油国が意図的に供給過剰状態を深刻化させる最悪の状態には終止符を打てる可能性が浮上していることが、原油価格の急伸を促している。

4月2日のNY原油先物価格は、1バレル当たりで前日比5.01ドル高の25.32ドルと、1日で24.7%の急伸地合になっている。同日の高値は27.39ドルであり、前日比では7.08ドル高(34.9%高)となっている。【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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シェールオイル企業の破たん始まる、トランプ大統領は原油安是正のディールに自信

米シェールオイル生産のホワイティング・ペトロリアム(Whiting Petroleum Corp)は4月1日、日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条の適用を申請したと発表した。サウジアラビアとロシアの対立、そして新型コロナウイルスの影響で原油・天然ガス価格が急落する中、負債の削減などキャッシュフローの改善による経営再建を目指すことになる。同社は上場企業であるが、今回の原油相場急落における初の破たん事例になる。

シェールオイル企業の破たんが現実化したことで、今後はエネルギー企業の資金調達は一段と困難になり、経営破たんやデフォルト(債務不履行)が連鎖的に発生する可能性も高まっている。シェールオイル産業の崩壊がいよいよ目に見える形で確認できる状況になっている。

こうした中、トランプ米大統領は原油安問題に本格的に取り組む方針を固めた。4月3~5日にはホワイトハウスに石油企業幹部を集め、エネルギー産業の支援策について協議を行う方針を示している。

また、現状はサウジアラビアにとってもロシアにとっても非常に悪い状態だとして、「両国はディール(取引)できるだろう」として、「価格戦争(price war)」の終結にも自信を示している。既にサウジアラビアのムハンマド皇太子、ロシアのプーチン大統領と個別に電話会談を実施しているが、4月1日には今後「数日」以内に「価格戦争」を終わらせることが可能だろうとの極めて楽観的な見方を示している。

国際原油市場は、新型コロナウイルスによる需要減退という問題の一方、サウジアラビアとロシアの対立で主要産油国が増産に踏み切るという最悪の状況に直面している。3月6日の石油輸出国機構(OPEC)総会でサウジアラビアが強く要請していた追加減産案がロシアの反対によって否決されたことで両国の関係が悪化しているが、サウジアラビアはロシアとの協調減産で需給管理を行うことを放棄し、積極的な増産対応で自国の市場シェアを最大化する方針に切り替えている。

トランプ大統領も、当初はガソリン価格の値下がりは消費者にとって好ましい面もあるとして静観の構えを見せていたが、自国の石油産業、更には金融市場にとっても原油価格の急落が大きなリスク要因になる中、4月入りと前後して原油安の解消に向けて動き始めている。

当初は、米国の介入に反対の姿勢を示していたロシアも、サウジアラビアとの協議を断念し、トランプ大統領の仲介に期待を寄せる姿勢を示している。サウジアラビアは協調減産体制の期限が切れた4月1日に過去最高の原油供給を行った模様だが、トランプ大統領の仲介によって主要産油国が協調減産体制に回帰できるのかが注目される局面になる。

一部産油国からは、米国に対してもOPECプラスの協調体制への参加ないしは協力を求める声も浮上しており、米国、サウジアラビア、ロシアの世界三大産油国が新たな国際協調の枠組みを模索し始めている。

世界的に外出を制限するロックダウンが展開されている結果、国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は3月26日の段階で、世界で約30億人がロックダウンの影響を受け、石油需要は昨年実績の20%に相当する日量2,000万バレル減少する可能性を報告している。こうした中、仮にサウジアラビアやロシアを軸とした協調減産体制が再開されても、原油需給・価格環境が直ちに安定化する訳ではない。

ただ、協調減産が再開されれば、シェールオイル産業に対するストレスは緩和され、シェール産業の崩壊を引き起こす必要性は薄れることになる。「政策」と「価格」によって需要と供給とのバランスが均衡のとれた状態にすることが求められている。仮に「政策」による生産調整が実現すれば、その分だけ「価格」による生産調整の必要性は薄れ、原油価格の急落傾向対してはブレーキが掛かり始める可能性がある。トランプ大統領が得意とする「ディール」の成否に注目したい。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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