小菅努の商品アナリスト日記

金、プラチナ、原油、天然ゴム、穀物、農産物などのコモディティ市場をメインに、為替、株価指数などもカバーしています。

金融機関、商社、事業法人、ベンダー様向けにマーケット分析情報の配信業務を行っています。コモディティ市場のレポート配信サービス(法人向け)、寄稿・講演のご依頼などは、下記E-Mailまでお問合せ下さい。

マーケットエッジ株式会社 https://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com

2020/04

【原油の乱】先物取引・ETF・CFD、知っておくべき「原油投資」の特性

「ヒロコの投資ゼミナール」に出演しました。
【原油の乱】【原油の乱】先物取引・ETF・CFD、知っておくべき「原油投資」の特性





原油価格がマイナス化した衝撃

原油価格がマイナス化した衝撃
米内陸部の貯蔵能力が限界に

4月20日のNY原油先物市場では、受け渡しまでの期間が最も短い5月限が、一時マイナス40.32ドルまで急落した。原油価格がマイナス化したのは、歴史上初めてのことである。通常、原油価格がマイナス化するようなことはないが、これは原油の売り手が1バレル当たり40.32ドルを支払うことで、買い手に原油を引き取ってもらう取引になる。膨大なコストを掛けて生産した原油を、無料のみならず追加の代金を支払ってでも、引き取ってもらわなければならない状況に陥っているのだ。

背景にあるのは、新型コロナウイルスの影響で需要環境が崩壊状態に陥る一方、生産調整が遅れていることだ。米国内ではガソリン需要が前年同期比で40%以上減少しているが、シェールオイルの生産調整は遅れている。既に売却価格を固定するヘッジ取引が行われていることに加えて、一旦操業を停止した際の再開コストが極めて高いため、原油相場の低迷でも緩やかなペースでしか生産調整が進まない状況にある。

この結果、米国内の原油在庫は急増しており、特にNY原油先物の受け渡し場所であるオクラホマ州クッシング地区で、在庫貯蔵能力の限界を迎えるのではないかとの危機感が強くなっている。4月17日時点のクッシング地区の原油在庫は5974万バレルとなっているが、このままのペースで在庫の積み増しが続くと、5月中には貯蔵能力の限界である7900万バレルに到達する可能性がある。このため、売り手は在庫売却を急ぐ一方、買い手はそもそも購入しても在庫保管場所を確保できない状態に陥っているため、マイナス価格まで値下りしても売買が成立しづらい状況に陥っている。

 原油価格のマイナス化は、あくまでもNY原油の5月限に限定された動きであり、日本で主に取引されている中東産原油はマイナス化していない。北海ブレント原油もプラス圏を維持している。このため、世界的にみて原油価格がゼロを下回っている訳ではないが、米国内需給の歪みが特に深刻化していることを象徴する動きとして注意が必要な状況になっている。

 今後のマーケットの関心は、5月限に続いて6月限もマイナス化する事態を回避できるかになっているが、先行きは楽観視できない。在庫貯蔵能力の限界が、5月限がマイナス化した主因であれば、在庫環境を正常化していかない限り、6月限でも同じ問題が生じる可能性があるためだ。

 しかし、現状では新型コロナウイルスの終息が実現した訳ではなく、輸送用エネルギー需要環境の正常化が今後1カ月の間に実現するのかは不透明感が強い。需要が十分に回復しないのであれば、シェールオイルは生産されても保管場所を確保できない一種の「産業廃棄物」と化すことになり、シェール産業の生産を本格的に減少させるため、異常な安値が正当化される余地がある。
(2020/04/23執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年04月27日「私の相場観」

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 https://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com   

協調減産でも上がらない原油

協調減産でも上がらない原油
あまりに大きな需要ショック

石油輸出国機構(OPEC)プラスは3月12日、協調減産を再開することで最終合意した。5~6月に日量970万バレル、7~12月に770万バレル、2021年1月~22年4月に580万バレルと、過去に経験したことのない大規模な減産を向こう2年にわたって実施することになる。6月の状況次第では、追加減産にも含みを持たせており、原油需給・価格環境の不安定化に終止符を打つ強い意志をみせた。

一方、20カ国・地域(G20)エネルギー相会合では、石油市場安定化のための取組を確認するも、減産の数値目標などを設定することはできず、各国に判断が委ねられることになった。原油相場の急落によって米国やカナダなどの産油量は減少する見通しだが、実際にどの程度の減産圧力が発生するのかは、先行きが見通せない状況になっている。

それでも世界原油供給量の1~2割を削減する動きは、原油需給環境の安定化に一定の貢献が期待できる。少なくとも、需要減少に伴う在庫積み増し圧力を軽減することは可能になる。しかし、これで需要を供給とのバランスを均衡化させることができるかは別問題であり、マーケットでは少なくとも短期的には供給過剰状態が在庫積み増しを促す展開が続くとの見方が優勢になっている。

国際エネルギー機関(IEA)は、石油市場にとって2020年は過去最悪の年、2020年4月は過去最悪の月になったとの評価を下している。新型コロナウイルス対策のために各国で移動規制が行われ、経済活動が停滞した結果、石油需要は過去に経験したことのない落ち込みを見せているためだ。前年同月比だと、4月は2900万バレル減、5月は2600万バレル減が予想されている。6月にはある程度の回復が見込まれているが、それでも1500万バレル減と厳しい需要環境が続く見通しになっている。

これはOPECプラスの協調減産、米国などの自然減産、消費国の戦略備蓄増強などの動きを以てしてもカバーするのが難しい規模の需要喪失が発生していることを意味する。足元では新型コロナウイルスの収束期待が浮上し始めているが、経済活動の正常化によって需要環境の改善を促していくまでは、原油需給の緩和状態を解消することは難しく、油田閉鎖を促すための安値誘導を継続する必要性が高い。
NYMEX原油先物相場のサヤをみても、5月限と6月限が期先限月に対して大幅にディスカウントされた強力な順サヤ(期近安・期先高)が形成されており、マーケットでも需給バランスが安定化し始めるのは最短で7~9月期になるとみている向きが多いことが示されている。

 需要環境が回復し始めれば、これまでの原油安で供給量が大幅に落ち込んでいるだけに、需給バランスは安定化に向かうことになる。ただ、現在発生している需要ショックの解消には多くの時間が必要であり、原油相場の安値修正プロセスは必然的に長期化する。

(2020/04/16執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年04月20日「私の相場観」

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 https://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com   

OPECプラス会合に不透明感、トランプ大統領の脅しは通じるか?

原油価格を下支えするためのサウジアラビア、ロシア、米国を中心とした主要産油国の調整が難航している。4月9日に石油輸出国機構(OPEC)プラス会合、10日に20カ国・地域(G20)エネルギー相が開催され、世界経済や金融市場を不安定化させる一因になっている過剰な原油安を是正するための協議が行われる予定になっているが、その直前になっても基本合意に到達できていない。

論点の一つが、OPECプラスの協調減産に対して米国やカナダ、ブラジル、ノルウェーなど、その枠組みに入っていない主要産油国からも協力を得られるかになっている。新型コロナウイルスの影響で原油需要が大きく落ち込む中、減産対応が必要なことは全ての産油国が理解している。一方で、自国の減産に他産油国が「ただ乗り(フリーライド)」して、自国の生産・販売シェアを喪失することに対する警戒感も強く、サウジアラビアとロシアは協調減産再開の条件として、他産油国の協力を掲げている模様だ。

しかし、米政府は反トラスト法の存在を理由に、民間石油会社が原油価格押し上げを目的に協調減産を行うことはできないとしており、未だに合意点を見出すことができていない。カナダやノルウェーなどは協調減産への参加に一定の理解を示しているが、シェールオイル産業を抱える米国抜きで協調減産を合意するのか、それとも協議を破たんさせるのか、延長するのか、難しい判断を迫られている。

米国サイドも何も行動を起こしていない訳ではない。例えば、米エネルギー省(DOE)は、米産油量が一時的に日量200万バレル減少するとの見通しを示している。すなわち、協調減産はできないが、自主的な減産は行われているとのロジックをOPECプラスに提示した格好になっている。ただ、これは需要の減退や原油安でシェールオイル生産が落ち込んでいる結果であり、ロシア大統領府のペスコフ報道官は協調減産と認めることはできないと一蹴している。

トランプ米大統領も、「米石油会社は既に減産している」として、米国のフリーライド論に反発しているが、サウジアラビアやロシアを納得させるだけのロジックを提示できていない。「OPECとロシアが減産しないのであれば多くのオプションがある」と、制裁関税などの脅しで対応しているのみである。

米下院共和党議員団は、サウジアラビアのムハンマド皇太子への書簡で、サウジアラビアが「人為的なエネルギー危機」の終息に向けて行動しなければ、両国の経済的・軍事的な協力が危うくなるとも警告している。あくまでも圧力でこの問題を乗り切ることができると考えている模様だが、サウジアラビア政府は何ら態度表明を行っていない。

イランのザンギャネ石油相は、事前の合意ができていないのであればOPECプラス会合の開催に反対すると発言している。合意形成が進んでいないのであれば、OPECプラス会合の日程を延期する選択肢が望ましいのだろうが、TV会談の形になることもあり、ギリギリのタイミングまで調整が続けられることになる。

今週のNY原油市場では、協調減産合意への期待と警戒とが交錯しており、明確な価格トレンドを打ち出せていない。ただ、9日のOPECプラス会合でどのような結論を示すのかは、原油価格はもちろん、世界経済や金融市場にも大きな影響を及ぼすことになる。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 https://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com 

原油安に慌て始めた産油国

原油安に慌て始めた産油国
トランプ政権も介入始める

石油輸出国機構(OPEC)プラスの協調減産体制は、3月末を以て終了した。2018年1月から国際原油需給と価格の安定化に寄与してきた政策だが、3月6日のOPECプラス会合で追加減産を巡る協議が決裂したことを受けて、協調減産体制そのものが崩壊する最悪の状況に陥っている。しかも、現在は新型コロナウイルスの影響で人々の外出が規制されるロックダウンが世界各地で展開されている状況にあり、ガソリンやディーゼル需要が大幅に落ち込む最悪の需要環境にあって、OPECプラスは増産政策への転換を進めることになる。世界の人口の4割が何らかの形で移動制限を受けており、これまでに見たことのないような需要減退圧力に晒されている。

追加減産の必要性が議論される状況にあって、逆に増産政策を展開する以上、4月以降の国際原油需給が強力な緩和圧力に直面するのは避けられない状況になっている。マーケットでは、現状を「価格戦争(price war)」と評価しており、原油相場の急落環境にあってどの産油国が生き残ることができるのか、激しい生存競争が繰り広げられることになる。

このため、高コストの生産者が市場から撤退する形で需給リバランスを目指すことになるが、需要崩壊とも言える状況にあっては、原油安が減産対応を促しても、容易に需給環境が安定化する状況にはない。一方で、過度の原油安は消費者にとっては好ましい現象とも言えるが、その一方でオイルマネーの株式市場からの資金引き揚げ、シェール企業が資金調達を行うハイイールド債の利回り急伸、石油関連企業の倒産など、世界経済や金融市場に強いストレスを与えているため、対策を巡る議論も活発化している。

当初、ロシアはOPECプラスの枠組みで協調減産体制の維持を模索したが、サウジアラビアのロシアに対する反発は極めて強く、ハイレベル協議を行えないほどに二国間の関係は悪化している。このため、ロシアは対立関係にある米国に対しても原油安への対応で共同歩調を取ることを要請し、米ロ間で対応が協議され始めている。ロシアとしては、OPECプラスと米国との協調の形で改めて協調減産を実施することを模索している模様だが、現段階ではサウジアラビアに対して政策転換を迫る見通しが立たない状態にある。

トランプ政権は原油需給・価格安定化のための新たな枠組みの検討を始めており、ロシアの代わりにOPECと米国の協調減産体制も含めた、様々な協調体制案も浮上している。まだ議論は初期段階だが、これまで原油「高」を批判し続けていたトランプ政権さえも、もはや放置することができないレベルの原油安が実現している。いずれにしてもサウジアラビアを協調減産体制に取り込まない限りは、当面の原油需給を安定化させることは困難であり、長い時間をかけて各国に対して生産調整を促すか、サウジアラビアの協調減産体制回帰が、原油安是正の必要条件になろう。
(2020/04/02執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年04月06日「私の相場観」

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 https://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com  
sponsored link
記事検索
 
QRコード
QRコード
sponsored link
プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

【URL】
マーケットエッジ株式会社

【E-mail】
kosuge.tsutomu@outlook.com

【SNS】
Twitter

【連絡先】
E-mailでお願い致します。相場動向に関する質問への個別対応は行っていませんのでご了承下さい。
小菅努のコモディティ分析
小菅努のコモディティ分析 ~商品アナリストが読み解く「資源時代」

会員制の有料メルマガです。コモディティの基礎知識から専門的な分析まで提供しています。1,944円/月、週2回以上の発行です。

詳細や購読のお申し込み方法は
http://foomii.com/00025
をご覧下さい。
アナリストの視点
Yahoo!ニュース コモディティアナリストの視点

Yahoo!ニュースに不定期で寄稿しています。

過去のレポートはこちら をご覧下さい。
Twitter
amazon.co.jp