小菅努の商品アナリスト日記

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2020年01月

WHOが緊急事態宣言でも株高の理由

世界保健機構(WHO)は1月30日、中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎について、「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」と宣言した。22~23日の緊急委員会では、中国以外では感染が抑制されていることを理由に緊急事態宣言の発動を見送っていたが、その後は中国以外でも感染被害が拡大しているため、国際的な協調体制が必要と判断した模様だ。

WHOが緊急事態宣言を出すのは今回が6件目であり、新型コロナウイルスが国際社会にとって大きな脅威に成長していることが確認できる。ただ、金融市場に目を向けると、WHOの緊急事態宣言後に、世界の株価や原油価格などは上昇に転じており、一見すると奇妙な現象が発生している。

30日のダウ工業平均株価は、一時は前日比244.69ドル安の2万8,489.76ドルとなっていたが、終値時点では逆に124.99ドル高の2万8,859.44ドルとなっている。31日の日経平均株価も、前日比171.17円高の2万3,148.92円と反発して始まっている。

これは、WHOが緊急事態を宣言し、7つの分野で勧告を出したものの、「国際的な貿易と渡航の制限は認めない」(テドロス事務局長)方針を示した結果である。現在の金融市場では、新型コロナウイルスが社会のみならず実体経済にも深刻な被害を及ぼすのではないかとの警戒感が広がっている。例えば、中国の政府系シンクタンク中国社会科学院のエコノミスト張明氏が、新型コロナウイルスの影響で1~3月期の国内総生産(GDP)が約1%押し下げられ、5.0%、もしくはそれを下回る成長率になる可能性を示したことが、話題になっている。

こうした中、WHOが貿易と渡航の制限を勧告すると、各国が中国との間のヒトとモノの動きを強制的に制限し、経済活動が急速に縮小する可能性が警戒されていた。しかし、そこまでは踏み込んだ勧告が行われなかったことが、金融市場に一種の安堵感をもたらしている。米疾病対策センター(CDC)が、米国内でも人から人への感染を確認する一方、「米国人一般への差し迫ったリスクは依然として低い」と報告したことも、金融市場における緊張緩和に寄与している。

ただ、今回のWHOの緊急事態宣言でヒトやモノの移動が更に鈍るのは必至であり、最悪の状況を脱したとまで考えている向きは少ないだろう。今後の展開の予見可能性が殆ど存在しない状態に変化はみられない。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)WHOが緊急事態宣言でも株高の理由(Yahoo!ニュース)
※図表はリンク先の記事参照。

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12週間ぶりに値下りしたガソリン価格、鍵を握る新型コロナウイルス

資源エネルギー庁の「石油製品価格調査」によると、1月29日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は1リットル=151.5円となり、12週間ぶりに値下りした。

昨年9月17日の142.9円をボトムに、今年1月5日には150円の節目を突破し、前週には2018年11月26日以来となる約1年3ヵ月ぶりの高値を更新していた。米中通商合意の実現で世界経済の見通しが改善したことで、原油調達コストが大きく値上がりしていた結果である。年明け後は、更に中東で米国とイランの全面戦争も警戒される状態になったことが更に原油価格を押し上げ、ガソリン価格もどこまで上がるのか分からないとの緊張感に包まれていたが、比較的早い段階で急激なガソリン価格高には歯止めが掛かり始めている。

■原油価格は3週間前から急落している

なぜガソリン価格の高騰に歯止めが掛かっているのかは、原油価格をみれば一目瞭然である。指標となるNY原油先物価格は、昨年10月上旬時点では1バレル=50ドル台前半で取引されていたが、米中通商合意の実現で世界的な株高傾向が加速すると、原油価格も急伸地合に転じ、年末時点では61.06ドルまで値上がりしていた。このタイミングで中東のイラクにおいて米国とイランが一触即発の状態に陥る中、中東からの原油供給が途絶える最悪の事態も警戒され、1月8日には一時65.65ドルまで急伸する展開になっていた。

ここまではメディアでも大きく取り上げられていたが、実はその後の原油価格は急落しているのだ。米国とイランが全面的な軍事衝突に陥る事態が回避される一方、依然として脆弱な世界経済環境から2020年上期の国際原油需給は供給過剰状態になるとの予想が、国際エネルギー機関(IEA)などから相次いで示された結果である。

しかも、このタイミングで発生したのが中国・武漢から広がりを見せている新型コロナウイルスの感染被害であり、1月27日の原油価格は52.13ドルまで値下りしているのである。3週間に満たない期間で原油価格は最大で13.52ドル、率にして20.6%も急落しており、これがガソリン価格に対しても強力なディスカウント圧力として機能している。

ガソリン小売価格には、原油調達コスト以外にも精製コストや各種税金が加算されるため、原油価格の20%安がそのまま全て反映される訳ではない。ただ、国内指標となる東京商品取引所(TOCOM)のガソリン先物価格も、期近物では1月8日の1キロリットル=6万2,400円をピークに、29日安値は5万3,280円となり、1リットル当たりで最大9.12円の下落圧力が発生している。

実際には、ガソリン先物価格のピークが小売価格に全て反映されている訳ではないため、この9.12円安がそのまま実現する訳ではない。ただ、現在の先物価格は概ね10月上旬時点の水準まで下落しているため、現時点で145円割れまでは正当化できないが、146~148円水準までの値下りであれば、十分に許容できる。ガソリン価格の値上がりが再び話題になり始めているが、給油時期を急ぐ必要性はなく、むしろ必要な時まで給油時期は先送りした方が良いだろう。

■今後の鍵を握るのは中国経済の行方

今後のガソリン価格動向の鍵を握るのは、新型コロナウイルスの感染被害の深刻度である。本稿執筆時点では中国本土のみで死者132人、感染者5,000人超と報告されているが、更に脅威が増していけば実体経済、そして石油需要にも深刻な影響が生じる可能性があるためだ。

中国政府が団体旅行の規制を行ったことで、既に飛行機の運航には多数のキャンセルが報告されており、ジェット燃料の需要が大きく落ち込む可能性がある。また、中国経済活動全体が冷え込む事態になると、幅広い分野で原油・石油製品需要が失われる可能性もある。実際に、石油輸出国機構(OPEC)内部でも、中国の需要減退に備えるために協調減産期間の延長、減産幅の拡大など、対策が必要ではないかとの議論が浮上し始めている。

仮に、こうした警戒感が杞憂に終われば、瞬間的なパニック状態で必要以上に原油価格が値下がりしている状態と評価され、ガソリン価格に対する下押し圧力は一時的なものに留まることになる。一方、新型コロナウイルスで中国経済が本格的に冷え込む事態になれば、ガソリン価格は長期低迷局面に移行することになる。

昨年の中国国内総生産(GDP)は、29年ぶりの低い伸び率に留まったが、米中貿易摩擦に続いて新型コロナウイルスのショックが直撃すると、中国はもちろん日本経済にとっても無視できないインパクトが生じる可能性がある。新型コロナウイルスも、一見するとガソリン価格とは無縁の出来事のようだが、現在の国際原油市場においては最大の関心事になっている。
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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通商合意後に急落した大豆

通商合意後に急落した大豆
中国の買い付けに不透明感

米中両国政府は1月15日、「第一段階」の通商合意に署名した。昨年10月の合意発表後も署名が行えない状態が続いていたが、トランプ政権下で展開されている米中貿易戦争において、初めて明確な成果を得られた格好になる。既存の関税措置の大部分は残される一方、「第二段階」の通商合意は秋の米大統領選後になるとの見方が強く、実体経済に対するインパクトについては、それほど大きなものにはならない可能性が高い。世界銀行も、下振れリスクを後退させるが、直ちに成長加速を促すことは難しいと報告している。ただ、今回の「第一段階」の合意では、中国側が米国からのモノ・サービスの輸入を2017年の1860億ドルをベースに、向こう2年間で2000億ドル増やすことが合意されているため、農産物など中国の輸入拡大対象リストに掲載されたものは大きな影響を受ける可能性がある。
特に米中貿易戦争の直撃を受けた農家は輸出拡大を強く期待しており、今回の通商合意を受けて農家・酪農家のトランプ米大統領に対する支持率は大統領就任後の最高を更新している。しかしマーケットに目を向けると、シカゴ大豆先物相場は合意文書への署名が行われる直前の1Bu=935~950セント水準に対して、910セント台(1月23日移転)まで大きく値位置を切り下げる展開になっている。

背景にあるのは、中国が実際に米国産農産物の購入に踏み切るのか、依然として不透明感が残されていることだ。マーケットでは、通商合意と同時に中国が大規模な輸入再開に踏み切るとの期待感が広がっていたが、実際には合意署名から一週間が経過しても、大口の輸出成約は一切報告されていない。中国の劉副首相は、農産物の購入は市場原理に基づいて行われることを強調しており、合意への署名が行われたものの、無条件で輸入拡大を進める意図を有していないことを明らかにしている。

そもそも大豆に関しては、中国は米中貿易戦争の激化で国内での増産を進め、海外からの輸入を抑制するための対応を進めている。しかも、海外からの輸入もブラジルやアルゼンチンなど南米産の調達を増やすことで、米国産大豆がなくても需給環境を安定化させるための仕組みを作り上げている。更に、近年はアフリカ豚コレラの影響で豚の飼育頭数が減少している結果、大豆を圧搾して得られる飼料・大豆ミールの需要も落ち込んでいる。このため、マーケットではそもそも中国は米国産大豆の輸入拡大を必要としていないのではないかとの疑念が広がっている。

現状では、中国が米国産大豆の調達を増やすのか増やさないのかは不明だが、マーケットでは改めて大豆相場を押し上げるためには、中国の買い付けを確認することが必要との見方が強い。900セント台を大きく割り込むような必要性は乏しいが、このまま上値の重い展開を続けるのか、安値修正局面に移行するのか、中国次第のマーケット環境が続く。
(2020/01/23執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2020年01月27日「私の相場観」

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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