小菅努の商品アナリスト日記

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2019/12

NY原油は60ドル台到達

NY原油は60ドル台到達
追加減産と米中合意を好感

NY原油先物相場は、1バレル=60ドル台に乗せている。12月6日に石油輸出国機構(OPEC)プラスが、来年1~3月期に日量50万バレルの追加減産を実施することで合意し、供給過剰に対する警戒感が後退している。また、米中通商協議は「第一段階」の合意に到達し、米中貿易摩擦の激化によって世界経済が減速するとの警戒感が後退していることも、原油相場を支援している。米国株は過去最高値を更新しており、リスク選好性を高めた投機マネーの一部が、原油市場にも流入している。

OPECプラスが、日量50万バレルの追加減産を合意できたインパクトは大きかった。11月段階では、追加減産はもちろん、来年3月までが期限されている協調減産の延長合意さえも危ぶまれていたが、最終的には共同閣僚監視委員会(JMMC)の勧告に沿う形で、大規模な追加減産が合意されている。

これで、2020年の国際原油需給環境が安定化するのかは、議論の余地もある。例えば、国際エネルギー機関(IEA)は、追加減産の完全履行を前提にしても、来年1~3月期には日量70万バレルの供給過剰が生じるとの見通しを示している。ただ、少なくともOPECプラスが需給・価格安定化の維持に寄与する姿勢を示していることは間違いなく、大幅な供給過剰が発生するリスクは後退している。

しかも、このタイミングで米中通商合意が実現しており、世界経済の底入れ感を強めることができれば、需要と供給の双方から原油需給バランスに対しては安定化圧力が発生することになる。資源価格全体が、世界経済の底入れ期待から地合を引き締めており、原油相場のみが上昇しているのではないことも重要である。大手金融機関は相次いで2020年の原油価格見通しを引き上げており、再び50ドル台前半まで大きく値下がりするような当面のリスクは解消されている。

 ただ、あくまでも大規模な協調減産体制によって過剰供給状態を回避しているのが現状であり、原油相場の先高観を形成するのは難しい。4月以降も協調減産体制を維持できるのかは不透明であり、ロシアは早くも3月の会合で減産規模の縮小を協議する必要性を訴えている。

また、12月入りしてからは米石油リグ稼働数が再び増加に転じており、原油価格環境の改善を受けて、シェールオイル開発業者が増産体制を強化している可能性が示されている。本格的な原油高によって、各国で増産対応が進むことを許容できるほどには、原油需給環境は安定しておらず、60ドル台前半からの原油相場の上昇余地は限定されよう。

まだ原油需給バランスは脆弱であり、非OPEC圏で想定以上の増産圧力が発生するような展開を許容する程の余裕はない。短期スパンでは株価との連動性も目立つが、株高環境でも需給の制約が原油相場の上昇余地を限定しよう。
(2019/12/26執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年12月30日「私の相場観」

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株高でも堅調な金相場

株高でも堅調な金相場
通商合意への期待弱い

米中両国は12月6日、「第一段階」の通商合意に到達したと発表した。15日に米政府の対中追加関税発動を控えたぎりぎりのタイミングだったが、追加関税の発動見送りに加えて、一部関税措置の税率を半減させることが決定された。一方、中国側は農産物やエネルギーなどの米国製品の購入拡大、知的財産権の保護などの9項目での対応を約束している。詳細な内容については明らかにされていない部分も多いが、米中通商協議が初めて合意に到達した意味は大きく、12月上旬は世界的な株高圧力が強くなった。米中関係は2020年のマーケット環境における最大の不確実要素とも言え、通商環境の正常化が進むのであれば、少なくとも世界経済の先行き不透明感は大幅に後退することになる。

通常、こうしたリスクオン環境になれば、金や米国債などの安全資産は大きく売り込まれることになる。株式市場で十分な投資収益が期待できるのであれば、敢えて金利も配当も生み出さない金市場で資金を運用する必要性は薄れるためだ。しかし実際には、金相場は寧ろ底固さを見せており、リスク資産の株価と安全資産の金価格が、同時に上昇する局面になっている。NY金先物相場は11月上旬に1オンス=1450ドルの節目を下抜いていたが、12月中旬は1480ドル水準での値動きが目立っている。

では、なぜリスクオンの投資環境で安全資産である金が変われているのだろうか。一つの理由が、マーケットでは米中通商合意の効果について、懐疑的な見方も根強いことだ。一部の制裁関税措置については税率が半減されているが、大部分の関税措置はそのまま維持されることになる。また、米中両国は早期に「第二段階」の通商合意を実現することに意欲を示しているが、実際に通商協議が早期に大幅進展するとみている向きは多くない。そもそも、「第一段階」の通商合意でさえも年単位の時間を必要としており、今後は中国経済の構造改革などより対立が根深い分野での交渉が残されている。2020年は米大統領選挙の年であり、一般的には内政も外交も停滞し易い。「第一段階」の通商合意の先は、トランプ政権の二期目以降の議論になるといった見方も強い。

そもそも、今回の通商合意で世界経済の低迷、各国金融政策の緩和化といった、2019年の金相場を大きく押し上げてきた相場テーマが劇的に変わる訳ではない。20年も低成長環境で金融緩和策の限界が打診され易く、金相場が大きく値崩れを起こすリスクは限定される。

定期市場では投機筋の大規模な買い残高が維持されており、金上場投資信託(ETF)市場からの資金流出にもパニック色は乏しい。直ちに急伸する必要性は乏しいが、実体経済が低迷する中での株価高騰にはバブル化しているのではないかとの懸念が付きまとうことになる。リスク資産を買い進みながらも、安全資産に対する投資ニーズも高まる、一見すると矛盾した相場環境が正当化されている。(2019/12/19執筆)
【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年12月23日「私の相場観」

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OPEC総会から1週間、原油価格はどうなった?

12月5日に石油輸出国機構(OPEC)総会、翌6日にOPEC加盟国と非加盟国(OPECプラス)の会合が行われてから、1週間が経過した。同会合では、OPECプラスとして、来年1~3月期に日量50万バレルの追加減産を行うことなどが合意されたが、その間に原油価格はどのような反応を見せたのだろうか。

原油需給には季節性が存在しており、特に年前半は需要の端境期であるために、原油需給バランスが緩み易い時期になる。このため、2020年上期も大規模な供給過剰が発生し、原油相場は値崩れを起こすのではないかとの警戒感があった。OPEC加盟国の間、特に国営石油会社サウジアラムコの上場手続きに入っているサウジアラビアは、当初から追加減産に意欲を示していた。しかし、市場シェアの喪失を警戒するロシアは、中東産油国との比較で財政面に余裕があることもあり、追加減産に対しては否定的な立場を表明していた。

こうした中、ぎりぎりの調整で協調減産の規模を日量120万バレルから170万バレルまで拡大合意できたことは高く評価できる。サウジアラビアなどは割当量を上回る自主的な減産も継続するとして、OPECの発表では実質的な減産規模は210万バレルに達するとしている。これは20年の世界石油需要推計値の2.1%に相当する規模になる。

では、このOPECプラス会合と前後して原油価格はどのような動きをみせたのだろうか。

国際指標となるNY原油先物価格は、11月29日時点では1バレル=55.02ドルまで下落していた。ロシアのノバク・エネルギー相が追加減産はもちろん、減産期間の延長にさえ否定的な立場を表明したことで、OPECプラス会合で何も合意できない事態が警戒されたためだ。しかし、その後は各種メディアで産油国筋から追加減産で合意できるとの見通しが示されると、OPEC総会前日の12月4日終値では58.43ドルまで値上がりしていた。

こうした状況で12月5日にOPEC総会が開催されたが、同会合では協議や合意内容について明らかにされず、翌日のOPECプラス会合後に発表を行う方針だけが示された。6時間を超える長時間の協議でありながら、記者会見も行われない異例の展開を見せた。このOPEC総会前に開催された共同閣僚監視委員会(JMMC)では、日量50万バレルの追加減産が勧告され、ロシアのノバク・エネルギー相は1~3月期と期間を絞って供給過剰リスクに対応することには理解を示したが、5日終値は前日比横ばいの58.43ドルとなっていた。

この状況でOPECプラス会合が開催されたが、日量50万バレルの追加減産が合意されたことで、12月6日終値は59.20ドル(前日比0.77ドル高)、取引時間中には一時59.85ドルまで値上がりする展開になった。その後は60ドルの節目を前に足踏み状態が続き、58~60ドルのレンジで膠着化していたが、13日に米中が「第一段階」の通商合意に到達したと発表すると60ドルの節目を突破し、サウジアラビア石油施設が武装勢力フーシ派の攻撃を受けた直後である9月17日以来の高値を更新している。すなわち、OPECプラスの追加減産合意では大きな値動きがみられなかったが、米中通商合意で60ドル台に乗せた格好になる。

◆ガソリン、灯油価格の値上がり余地は限定的か

OPECプラスは日量50万バレルの追加減産で合意し、供給過剰リスクに何ら対応を見せない最悪の事態は回避された。しかし、国際エネルギー機関(IEA)はそれを考慮に入れても来年1~3月期には日量70万バレルの供給「過剰」が発生する可能性があるとしており、マーケットでは本当に国際原油需給が安定化するのかは懐疑的な見方も残されている。

また、1~3月期までは協調減産体制が継続されるが、4月以降にどのような枠組みになるのかは3月に再協議が行われることになり、今回合意された減産体制を4月以降も継続できるのかは不透明感が強い。原油価格の水準が切り上がると、米国のシェールオイルやブラジルの深海油田など、今回の合意には参加していないOPEC非加盟国からの増産圧力が強まるのではないかとの警戒感もある。追加減産の合意が間違いなく履行されるのかを見極めたいとのムードもある。OPECプラス会合の結果では、原油価格の急落は回避されるが、急伸も困難というのがマーケットの評価だった。

最終的には、米中通商合意という別の視点から60ドル台に乗せており、当面は原油価格との間に連動性がみられる株価動向に注意が必要である。株価が更に高騰すれば、原油価格がつれ高する可能性は残されている。ただ、今回の米中通商合意では世界経済見通しが劇的に改善する訳ではなく、原油需給の視点ではここから更に大きく上昇する展開までは求められていない。国内ガソリンや灯油価格に対しても若干の押し上げ圧力が発生し易い状況だが、国内石油製品価格が劇的に上昇する可能性は低いだろう。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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