小菅努の商品アナリスト日記

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2019/11

リスクオン化で金が急落

 リスクオン化で金が急落
安全資産の下げは一時的か

投資家のリスク選好性が高まっている。10月10~11日に合意された米中通商協議について、合意文書に署名するための詰めの協議が行われているが、従来想定されていたよりも踏み込んだ内容になる可能性が浮上しているためだ。10月時点では追加関税の発動を停止する貿易戦争の「停戦」が議論されていたが、11月入りしてからは中国が制裁・報復関税の段階的な撤廃で合意したと発表しており、貿易戦争が一気に「終戦」に向かう可能性が浮上しているためだ。トランプ米大統領は関税撤廃の合意を否定しているが、米中両国の首脳が合意文書に署名する時期が近づいているとの見方が、投資環境のリスクオン傾向を加速させている。

米国株は過去最高値を更新しており、米経済成長や企業業績の伸び鈍化が目立つ中でも、株高傾向は維持されていることが再確認されている。米連邦準備制度理事会(FRB)は当面の利下げ対応が終了した可能性を強く示唆しているが、世界的な低金利環境が長期化するとの見方もあって、株式市場に対する投機資金の流入傾向が強くなっている。また、原油や銅などの産業用素材市況も底固さを見せており、米中通商合意による経済見通しの改善期待が各種資産価格に反映されている。

一方、安全資産は逆に大きく売られており、金や米国債、円などは上値の重さが目立っている。NY金相場の場合だと、9月には1オンス=1550ドル水準まで値上がりしていたが、11月上旬には1400ドル台中盤まで値下がりしている。米中貿易戦争、FRBの利下げサイクルなどと歩調を合わせて急伸してきたが、短期筋の利食い売りが膨らんでいる模様だ。金上場投資信託(ETF)市場でも売却圧力が目立つ状況にある。

問題は、米中通商合意で金相場が本格的なダウントレンドに突入するのか、それとも一時的な調整安に留まるかである。この点については、調整安との評価が基本になろう。米中通商合意が大きな変化であることは間違いないが、世界経済の減速傾向に修正を迫るのは難しい。各国中央銀行は大規模な金融緩和策を展開しているが、その傾向にも変化は生じないだろう。

しかも、利下げ余地の乏しさから財政出動拡大の必要性が高まっているが、債務の膨張は金価格の上昇圧力に直結することになる。特に、米国ではトランプ政権下で債務水準が著しく拡大しており、この状況で金市場から本格的な資金流出が促される可能性は低い。

株価高騰はネガティブだが、その株式相場の過熱感が高まっていることも、金市場に対する投資ニーズを高めることになる。低ボラティティ環境を前提としたリスクオンのポジションが著しく拡大しており、昨年2月に発生した「ボラティリティ・ショック」の再発も警戒される状況にある。短期筋の買い玉整理が一巡すれば、徐々に値固めを再開し、1500ドル台を回復する程度のエネルギーはあろう。(2019/11/14執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年11月18日「私の相場観」

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OPECが追加減産を検討

OPECが追加減産を検討
ロシアは慎重姿勢崩さず

世界経済の減速で国際原油需給の緩みが警戒される中、産油国サイドの動きが活発化している。現在、石油輸出国機構(OPEC)やロシアなどの「OPECプラス」は日量120万バレルの協調減産を行っており、来年3月までは現在の政策を維持することで合意している。この政策は一定の効果を上げており、原油需給バランスの極端な乱れを阻止してきた。しかし、このまま世界経済の減速が進むと、当然に原油需要の伸びも鈍化することになり、2020年の国際原油需給が再び緩むリスクが警戒され始めている。

今年は12月5日にOPEC総会、6日にOPEC加盟国と非加盟国の会合が予定されているが、OPECのバルキンド事務局長は「あらゆるカードがある」として、追加減産対応にも含みを持たせている。中東産油国の一部からも、再び原油需給が緩和して原油価格が急落する事に対して高いレベルの警戒感が示されており、追加政策調整を巡る議論が活発化している。

産油国経済を考えれば、「減産率」よりも「原油価格上昇率」の方が大きくなれば、原油売却収入は拡大することになり、減産対応が正当化される。一方で、相次ぐ減産対応は市場シェアの喪失を意味し、石油市場への影響力の低下、国内石油産業の縮小、販売競争の激化などの副作用を生じることになる。また、米国のシェールオイル生産は一時期との比較では鈍化しているものの、大規模な増産体制が維持されている。OPECプラスの減産強化で原油価格を押し上げると、シェールオイルの増産体制が強化され、OPECプラスの市場シェアを米国に譲り渡すだけの結果に終わる可能性も浮上する。

こうした観点からロシアは大規模な協調減産政策に慎重であり、ノバク・エネルギー相は追加減産の議論は行われていないとして、必要な際には「微調整」を行うとの立場に留めている。ロシア石油会社からも、現行の協調減産体制が終了する来年3月までは、政策調整の必要性はないといった発言も報告されている。エネルギー省筋は、米国のシェールオイル増産が鈍化していることを協議で考慮すべきとして、追加減産対応に疑問を投げ掛けている。

OPEC総会までは残り1カ月だが、今後1カ月はぎりぎりまで調整が続けられることになる。最終的には、追加減産対応が必要な状況になるとみられるが、1)追加減産対応で合意できるのか、2)合意できるとすればどのような時間軸になるのか、3)追加減産の規模はどうするのかなど、多くの不確実性を残した状態にある。政策調整の可能性が浮上していることで、原油相場が50ドル台を大きく割り込む必要性は薄れているが、60ドル台確立を打診することは困難だろう。中東産油国経済が破綻せず、かつ、シェールオイル増産が加速しない価格水準として、50~60ドルをコアとしたレンジの居心地が良い。
 (2019/11/29執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年11月04日「私の相場観」

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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