小菅努の商品アナリスト日記

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2019/10

世界経済の減速で原油需要低迷

世界経済の減速で原油需要低迷
OPECは減産体制強化を議論

世界経済の減速傾向が進む中、2020年の国際原油需給バランスを安定化させることができるのか、不透明感が強くなっている。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界石油需要は19年が前年比で日量100万バレル増20年が同120万バレル増となっており、世界経済の減速圧力にブレーキが掛かり、石油需要も持ち直すとの見通しが採用されている。しかし、こうした需要見通しの基礎となる国際通貨基金(IMF)の世界経済成長率見通しは19年が5回連続の下方修正となり、7月時点の3.2%から3.0%まで引き下げられている。20年も7月時点の3.5%から3.4%まで下方修正されている。このまま世界経済の減速が進めば、当然に石油需要の伸びも鈍化することになる。

 一方、米国のシェールオイルは急ピッチな増産傾向が続いており、米エネルギー情報局(EIA)の推計だと19年は前年比で日量127万バレル増、20年は91万バレル増となっている。新規投資は抑制されがちだが、生産性の高い鉱区に集中投資が行われており、世界石油需要の伸びの大部分はシェールオイルの増産によって吸収可能な状態が想定されている。足元の需給バランスは決して過度に緩和している訳ではないが、20年に原油需給が大きく供給超過方向に傾き、原油相場が値崩れを起こすリスクが高まっているのではないかとの危機感は強い。

 こうした中、石油輸出国機構(OPEC)は12月の総会で政策調整を行う可能性を強く示唆し始めた。供給過剰リスクから原油相場が軟化傾向を強めていることで、あくまでもOPECが需給バランスの安定化に責任を持つとのメッセージを発する必要があると考えている模様だ。バルキンド事務局長は、「あらゆるカードがある」として、現行の協調減産の積み増しも検討していることを認めている。主要加盟国からも追加減産に理解を示す声が強くなっており、11月中に得られるマクロ指標が劇的な改善をみせなければ、OPECは協調減産の期限を20年3月から更に延長すると同時に、減産体制そのものの強化に踏み切る可能性が高い。

こうした中でネックとなるのが、減産合意遵守率が低下しているイラクやナイジェリアの存在である。現行の協調減産体制は、「フリーライド(ただ乗り)」を許さないことで合意を完全に履行するとの強いメッセージを市場に発することで、原油相場を下支えしてきた。しかし、財政難から出来る限り産油量を増やしたいとのニーズもあり、減産合意が遵守できない国が出てくると、OPECやロシア主導の需給管理システムが破綻する可能性が浮上する。

全ての産油国にとって、減産しても原油価格を維持した方が原油売却収入を最大化できる状況が続くことになるが、12月のOPEC総会に向けて改めて減産合意の順守を確認した上で、追加減産に踏み切ることができるか否かが問われる重要な局面を迎えている。
(2019/10/24執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年10月28日「私の相場観」

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米中「合意」でも金価格は上昇

米中「合意」でも金価格は上昇
世界経済の減速は止まらない

10月10~11日に行われた米中通商協議の閣僚級会合では、トランプ米大統領の言う「第一段階の合意」が成立した。詳細な情報開示は行われていないが、中国側が米国産農産物の購入拡大、知的財産権の保護、技術強要移転問題への対応、為替市場の柔軟性といった分野で譲歩を見せ、米国側は10月15日に予定されていた対中関税引き上げを見送ることになった。まだ12月の対中関税引き上げを回避できるのかなど幾つかの論点が残されているが、今後数週間を掛けて詳細を詰め、11月16~17日のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会談の際に、トランプ大統領と習近平・中国国家主席が合意文書に署名することを目指すことになる。

この結果についてマーケットの評価は割れているが、過去の通商協議とは異なり幾つかの個別項目について「合意」が形成されたことは、大きな進歩と評価できる。米中協議の度に米国と中国とは制裁・報復関税を強化し続けてきたが、漸く米中関係の悪化傾向に歯止めを掛ける目途が立ち始めている。トランプ政権の対中スタンスに大きな変化が生じている訳ではないが、米実体経済に減速の兆候がみられること、2020年の大統領選挙に向けて目に見える「外交成果」を欲していることが、今回の合意形成を後押しした模様だ。

ただ、これによって既存の制裁・報復関税の撤回といった議論が進む訳ではなく、ファーウェイ(中華技術)などハイテク企業に対する制裁緩和・解除についても議題に上がるレベルに到達していない。これからトランプ大統領の関心は大統領選のみに集中することになり、今後1年にわたって通商協議は膠着化に向かう可能性が高い。中国政府としても、大統領選で民主党候補が勝利する可能性もある以上、敢えてトランプ政権との間で厳しい条件の合意形成を目指す必要性は乏しくなる。このまま米中両国が制裁・報復関税の影響を受け続ける状況が続くことになろう。

このため、米中通商「合意」でマクロ経済環境が大きく変わることはない。マインドに対するポジティブな効果は認められるが、実際には米中の「新冷戦」とも言われる対立構造はそのまま維持されることになる。既に米経済は製造業から非製造業へと減速圧力が波及し始めており、更に労働市場や個人消費環境でも下振れリスクが高まっている。国際通貨基金(IMF)は2019年の世界経済成長見通しを7月時点の3.2%から3.0%まで引き下げたが、景気リスクバランスは下向きに傾斜した状態が解消されない見通し。

米連邦準備制度理事会(FRB)は今年に入ってから既に2回の利下げに踏み切っているが、10月29~30日の会合で更に利下げに踏み切る可能性もある。また、バランスシートの拡大も議論される見通しであり、量的緩和政策は意図していないとされるものの、現実には緩和効果を発生させることになる。安全資産としての金に対する投資ニーズには、今回の「合意」によって何ら変化は生じないだろう。
(2019/10/17執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年10月21日「私の相場観」

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ガソリン小売価格上昇は一時的

ガソリン小売価格上昇は一時的
原油価格は軟化傾向

資源エネルギー庁によると、10月7日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は、1リットル=148.1円となった。9月17日の142.9円から3週連続の値上がりであり、約4カ月ぶりの高値を更新している。9月中旬の国際原油相場が急伸した影響が、国内ガソリン価格にも反映されている。
9月14日にはサウジアラビアの石油施設がドローンや巡行ミサイルの攻撃を受け、一時は世界の原油供給の約5%が中断する事態に陥った。サウジアラビアは特にアジア向けの出荷規模が大きく、仮に長期にわたって供給障害が発生すると、日本でも原油輸入量が一気に落ち込むリスクが警戒された。千葉県の台風被害による国内石油精製に対するダメージは限定的だったが、原油調達コストの値上がりが、末端ガソリン価格に対しても着実に波及するプロセス上にあることが確認できる。

仮にサウジアラビアに対して第二、第三の攻撃が行われて原油生産の復旧が遅れ、または、攻撃への関与が疑われているイランとの軍事衝突発生といった事態になると、原油価格が断続的に値上がりし、秋の行楽シーズンのガソリン価格が急騰する可能性も存在していた。

しかし実際の原油価格は、サウジアラビアの石油施設が攻撃を受けた直後の9月16日に高値を確認し、その後は急反落に転じている。指標となるNY原油先物価格は、9月13日の54.85ドルが一時63.38ドルまで急伸したが、10月入りしてからは51~54ドル水準まで値下がりしており、寧ろ原油価格が急伸する前の値位置を下回り始めている。中国や欧州に加えて米国でも景気減速懸念が強まる中、国際原油需給の緩和リスクが強く警戒されているためだ。また、この時期は北半球の製油所が秋の定期メンテナンスを行うため、製油所向け原油需要が落ち込む傾向がみられることも、原油価格を下押ししている模様だ。米国の原油在庫は直近の4週間連続で増加中であり、短期需給の緩みも原油安の一因になっている。

原油安で財政が疲弊したイラクやエクアドルで反政府デモが活発化するなど、既に原油安の弊害は顕在化し始めており、更なる急落相場が求められる訳ではない。米国では石油リグ稼働数の減少傾向が続いており、シェールオイル生産会社も原油安に対して悲鳴を上げている。

ただ、このままNY原油先物価格が50ドル台前半での低迷状態に回帰するのであれば、原油調達コストは抑制された状態が続き、ガソリン小売価格も140円台前半まで段階的に値下がりする方向性になる。世界経済の減速が進む中、石油価格だけが大きく上昇する環境にはない。10月下旬から11月にかけて、ガソリン価格は鎮静化に向かおう。
(2019/10/10執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年10月14日「私の相場観」

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収穫期に豪雪被害か、米国産トウモロコシに不作の脅威

トウモロコシ価格が約2ヵ月ぶりの高値を付けている。北半球では春先に作付けされたトウモロコシが収穫期を迎えている。しかし、世界最大のトウモロコシ生産国である米国において、気象環境が不安定化していることで、予想されていた収量を確保できなくなる可能性が浮上しているためだ。

指標となるCBOTトウモロコシ先物価格は、10月8日の取引で1Bu=396.50セントと400セント台乗せを窺う展開になっているが、これは直近安値を付けた9月9日の352.25セントから12.6%の値上がりになる。

米農務省(USDA)によると、10月6日時点の収穫進捗率は15%となっており、まだ未収穫のトウモロコシが大量に農地に残された状態にある。しかし、9月下旬には記録的な豪雨で収穫作業が進まなかったことに加えて、今週は穀倉地帯北部からカナダにかけて記録的な豪雪が観測されるとの予報が出ていることで、品質や収量に対して更に大きな被害が生じる可能性が浮上している。

10月入りしてからの寒波の影響で、前週時点でもノースダコタ州で今季初の降雪が観測されるなど、気象環境は不安定化していた。しかし、今週は冬型の嵐が穀倉地帯を直撃する見通しであり、最大で60センチ程度の降雪が観測される可能性も指摘されている。

実際にどの程度の生産障害が発生するのかは不確実だが、トウモロコシ相場は受粉期を終え、天候要因での不確実性を抱えたいわゆる「天候相場」は終ったとの評価に傾いていただけに、季節外れの豪雪予報がトウモロコシの供給不安を高めている。

今季は春先にも豪雨が観測されたことで作付け作業に遅れが生じ、例年と比較して厳しい作柄環境に置かれている。しかも、その影響で収穫作業が終わる時期も例年より遅れることになるが、それだけに例年よりも早く降霜や降雪といった冬型の気象環境になると、生産高見通しの下方修正を迫られ易くなっている。その意味では、春の作付け環境悪化の余波がまだ続いているとの評価も可能だろう。

10日にはUSDAの月例需給報告(WASDE)が発表されるが、9月1日時点の四半期在庫が既に大幅に下方修正されているだけに、今回は新穀、旧穀ともに在庫見通しの大幅な下方修正が確実な情勢にある。しかも、新穀のイールド予想が楽観的に過ぎたのではないかとの議論も浮上しているタイミングで、新たな天候リスクを抱えていることに対する警戒感は強い。需給バランスは適度にひっ迫化する見通しとあって、トウモロコシ価格は上昇し易い環境にあったが、今週の雪嵐(snow storm)の被害状況によっては、一段と堅調な値動きが続き易くなる。

国内では、安倍首相が米国産トウモロコシの購入について「米国と合意していない」と発言したことが話題になっているが、そもそも米国において輸出用のトウモロコシが大量に余る事態は回避される可能性も浮上しているのが現状である。トランプ政権は、貿易相手国に対する輸入拡大要請に加えて、バイオ燃料政策の見直しなどトウモロコシの需要喚起に動いているが、不作によって大量の在庫を抱える事態が回避されるシナリオが現実味を増している。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

※図表はリンク先の記事参照。

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トウモロコシ相場は底入れ

トウモロコシ相場は底入れ
収穫期の豪雨に苦しむ

シカゴ穀物相場が上昇している。CBOTトウモロコシ先物相場は、9月9日の1Bu=352セントをボトムに、10月入りしてからは390セント水準まで急伸する展開になっている。8月は受粉期を無難に消化したことで急落地合を形成していたが、改めて天候リスクに敏感な地合になっているためだ。

10月のトウモロコシは収穫を迎える時期になり、本来であればハーベスト・プレッシャーが相場を下押しされ易い時間帯になる。倉庫に大量の荷が確保されることで、現物市場での売却圧力が強まることが、定期相場も下押しする傾向が強い。しかし今季は、この収穫期に豪雨傾向が強くなっており、収穫作業の停滞が強く警戒されている。

米国のコーンベルト北部からカナダ南部にかけては、前線が発達しており、連日のように豪雨が観測されている。一部では洪水被害も発生しており、収穫作業が遅れがちになっている。今季は作付け作業の遅れで生産ステージ全体が遅れがちになっているが、収穫期の長雨は品質悪化に直結するため、予想されていた収量を確保できないのではないかとの警戒感が広がっている。

あくまでも天候次第の相場環境にあり、晴天が続くようになれば、収穫作業は一気に終了に向かうことになり、ハーベスト・プレッシャーの相場圧迫が開始される可能性もある。しかし、現時点での気象予報では、10月も雨がちな天候が続く見通しになっており、更に豪雨・洪水被害が続くと、収穫期にもかかわらず急伸地合が形成される可能性もある。

トウモロコシ市場においてもう一つ注目されたのが、9月30日に米農務省(USDA)が発表した四半期在庫である。これは2018/19年度の期末在庫を確定する数値になるが、市場予測24.28億Buを大きく下回る21.14億Buとなった。これは、マーケットの想定よりも需要が上振れしていたが、生産が下振れしていたことを意味する。USDAは10日に最新の需給報告を発表するが、そこでは18/19年度の在庫見通しの大幅な下方修正が行われるのが確実な情勢になっている。前年同期の21.40億Buも下回る在庫水準であり、少なくともトウモロコシ相場は大きな値下りは要求されなくなっている。350~360セント水準で今季のボトムを確認した可能性が高い。

一方、10月10~11日には閣僚級の米中通商協議が開催される。中国は協議を順調に進めるため、事前に米国産大豆の大量購入に踏み切っている。トウモロコシに関しては直接的な影響は小さいが、仮に中国の米国産農産物の購入環境が正常化に向かうのであれば、シカゴ穀物相場全体の価格水準が切り上がる可能性も浮上する。

今後は南米の作付け期も始まることになるが、米国産の生産水準が抑制される中、19/20年度の国際トウモロコシ需給は引き締まり易い環境にある。値固めを進めつつ、上昇の機会を探る展開になろう。
(2019/10/03執筆)

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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