小菅努の商品アナリスト日記

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2019年09月

金価格が上昇再開を打診中

金価格が上昇再開を打診中
金ETFは6年ぶり高水準

金相場が改めて騰勢を強め始めている。基調転換のきっかけの一つになったのは、中東情勢の不安定化だ。9月14日にサウジアラビアの石油施設が攻撃を受け、世界の原油供給の約5%が一時中断した。原油供給障害については比較的早いペースで解消に向かっており、9月中には完全復旧が実現する見通しになっている。このため、急騰していた原油相場は急反落に転じており、概ねサウジ石油施設が攻撃を受ける前の値位置に回帰しつつある。一方で、この攻撃はイエメンの反政府武装組織フーシ派が犯行声明を出しているものの、サウジの隣国であるイランの関与が強く疑われている。英仏独の欧州3カ国は、攻撃はイランによるものだとして、同国を批判する共同声明を出している。サウジもイランの犯行だとして、報復攻撃の必要性を訴えている。現段階では、トランプ米大統領が軍事報復には慎重姿勢を崩していないが、24日には国連総会の演説でイランを強くしており、中東で大規模な戦争行為が発生するのではないかとの警戒感が金需要を喚起している。

一方、米下院はトランプ大統領の弾劾に向けた正式な調査の開始を発表した。大統領選でライバル視されている民主党のバイデン前副大統領とその息子を巡る醜態を調査するように、ウクライナのゼレンスキー大統領に圧力を掛けた疑惑がある。この調査の見返りに保留中の軍事的な支援を行った疑いもある。米下院では民主党が多数派のため、罷免に向けて上院で弾劾裁判を開くための弾劾訴追が成立する可能性がある。罷免には共和党が多数を握る上院で3分の2以上の賛成を得る必要があるため、実際に罷免が成立するとみている向きは多くない。しかし、これによって大統領と民主党との対立が更に激化すれば、2020年の選挙まで必要とされる経済政策を実行できなくなる可能性がある。

世界経済が減速する中にあっても、米経済は相対的な底固さを保っている。9月17~18日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)でも、今年2回目の利下げを実施しながら、その先の追加利下げの有無については明確な態度を示さなかった。ただ、ここにきて米経済に対しても減速の兆候が増え始めており、大統領弾劾手続きは直接的には米政治リスクの高まりが金価格を刺激するが、米経済の減速リスク、追加利下げの可能性を更に高める動きとの評価も要求される。

定期市場では9月上旬に調整圧力が目立ったが、金上場投資信託(ETF)の投資残高は急増している。既に2013年以来の高水準に達しており、長期投資家の金市場に対する資金シフトが活発化していることが窺える。

10月第2週には閣僚級の米中通商協議も控えているが、どのような結果になるのか先読みは難しい。トランプ大統領は、部分的合意ではなく最終合意を目指すとして、大統領選前の合意を急がないとの強硬姿勢を打ち出している。投資環境は依然として多くの不透明感を抱えており、安全資産の代表格である金は買われ易い地合が維持されている。
(2019/09/25執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年9月30日「私の相場観」

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株高に警告を発する銅価格、危機は終わっていない

米国株は過去最高値圏での取引になっている。今年の米国株は、米中貿易摩擦の深刻化から5月、そして8月と二度にわたって急落を経験したが、9月は安値修正の動きが強まり、いつ過去最高値を更新してもおかしくない状況になっている。ダウ工業平均株価は7月に付けた過去最高値2万7,398.68ドルに対して、9月27日終値は2万6,820.25ドルとなっており、10月第1週に再び過去最高値を更新する可能性も十分にある。

世界経済の減速が進んでいるとは言え、米実体経済は健全さを保っている。今年は米連邦準備制度理事会(FRB)が「予防的」、「保険的」な観点から2度にわたって利下げに踏み切ったが、9月17~18日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、金融当局者の中心意見としては今年、更に来年も追加利下げの必要性はないとの見通しになっている。

さすがに貿易相手国の景気動向の影響を強く受ける製造業は減速感が強くなっているが、労働市場が極めて好調なことで個人消費環境は良好さを維持している。企業業績も急激な伸びは一服しているが、大きく崩れるには至っておらず、2度にわたる利下げ対応が逆に米国株を押し上げる動きを強めている。

10月は10~11日に閣僚級の米中通商協議が予定されているが、中国は協議を前に米国産大豆や豚肉など農産物の購入量を増やしており、トランプ米大統領は一般に思われているよりも早い段階で通商合意が実現する可能性を指摘している。

一方、コモディティ市場の視点からは、現在の株高は必ずしも土台がしっかりとしたものとは言えない。それは、銅価格が一向に上昇せずに、今年の最安値圏での低迷を続けているためだ。

銅は、安価で加工性が良く、高い導電性、熱伝導性を有しているため、様々な産業分野で使用されており、銅価格は世界の景気動向に敏感に反応する傾向にある。このため、マーケットの関係者の間では「炭鉱のカナリア」や「ドクター・カッパー(Dr.Copper)」とも言われ、銅価格の低迷は経済危機を予告していると言われることが多い。特に最大消費国である中国経済との連動性が強いが、LMEの銅相場(3カ月物)は、4月の1トン=6,500ドル水準に対して、8月以降は5,600~5,900ドル水準での低迷状態が続いている。これは今年の最安値圏である。

9月入りしてからの急速な株価上昇局面でも銅相場の低迷状態に変化は見られない。もし、銅価格が「炭鉱のカナリア」としての機能を失っていないのであれば、「高騰する株価」と「低迷する銅価格」とのバランスの乱れには注意が求められる。世界的に株価は高値水準を維持しているが、コモディティ市場では原油や鉄鉱石、天然ゴムなど、銅以外の産業用素材も軒並み低迷している。

これはコモディティ市場では世界経済が更に減速するとみている向きが多いことを意味しており、楽観ムードが目立つ株式市場とは全く異なる評価が下されている。「高騰する株価」と「低迷する銅価格」のどちらが正しい判断なのか、評価が割れた現状は金融市場の混乱が続く可能性が高いことを示唆している。

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※図表はリンク先の記事参照。

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米石油業界が年末に想定している原油価格は?

米国のダラス地区連銀がエネルギー業界幹部を対象に行った四半期調査「エネルギー・サーベイ」によると、7~9月期の「エネルギービジネス指数」はマイナス7.4となり、4~6月期のマイナス0.6から更に落ち込んだ。2四半期連続のマイナスであり、2016年1~3月期以来で最低になっている。米国のシェールオイルは大規模な増産体制を維持しているが、その一方で石油リグ稼働数は急激な落ち込みが続いており、エネルギー業界は現在のビジネス環境を極めて厳しいと捉えていることが確認できる。

短期的な成長阻害の最大要因としては、「価格が低過ぎる」との回答が42人と最多になっており、次いで「資本アクセスの制限」が20人、「投資家のフリーキャッシュフロー創出圧力」が13人などとなっており、価格の問題がエネルギービジネスのボトルネック化していることが確認できる。また、投資家がエネルギー業界への投資に慎重になっており、投資よりも現金確保を優先するように圧力が掛かっていることも確認できる。

成長阻害の2番目の要因としては、「価格が低過ぎる」の27人が最多だが、「労働力不足」が13人、「資本アクセスの制限」が12人、「投資家のフリーキャッシュフロー創出圧力」が11人となっており、良好な雇用環境の中でエネルギー業界の人手不足が成長にも影響を与えていることが確認できる。

また興味深いのは、米エネルギー情報局(EIA)が掘削未仕上げ井(DUC)を約4,000と推計していることに対して、適切が37人、多いが12人に対して、少ないが50人と回答数が多くなっていることだ。DUCは掘削されながらも採算性などの問題から完工が見送られているものであり、短期的な生産抑制要因であると同時に、将来的な増産余力として機能するものになる。足元の完工の遅れはEIAの統計以上に深刻なものである可能性が高い一方、増産余力はEIAの想定以上である可能性が示されている。

一方、石油業界幹部が想定している年末時点のWTI原油価格だが、レンジが48.00~75.00ドル、平均で56.92ドルとなっている。4~6月期の調査時点では、レンジが32.00~79.00ドル、平均で57.14ドルとなっていた。約3カ月で原油価格のレンジが急速に狭まっていると同時に、概ね50ドル台中盤から後半付近で原油価格が落ち着くとみている向きが多いことが示されている。

分布状況だと、55.00~59.00ドルを予想している向きが最も多く、次いで60.00~64.99ドル、50.00~54.99ドルとなる。回答数が比較的多いレンジは50~65ドル水準であり、ここ最近の価格レンジを踏襲するとみている向きが多い模様だ。

石油業界が現行の原油価格が安過ぎてビジネス環境が悪化しているとみている以上、原油相場の急落は求められない。原油相場の急落が要求されるのは、シェールオイルの生産量を大幅に引き下げる必要性が浮上する程に、需要見通しが悪化した場合になる。一方で、原油価格さえ回復すれば大規模増産の余力が存在していることも確認されている。今回の調査からは、原油価格が大きく乱高下する必要性は乏しいことが読み取れる。


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小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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