小菅努の商品アナリスト日記

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2019年02月

パラジウム相場の高騰続く

パラジウム相場の高騰続く
需給ひっ迫は構造問題

自動車の排ガス触媒などに使用される貴金属パラジウム相場が急伸している。NYパラジウム先物相場は、年初の1オンス=1198.90ドルに対して、2月15日の取引では1400ドルの節目を突破し、早くも1500ドルの節目を窺う展開になっている。比較的需給項目が近いプラチナ相場が800ドル水準の安値保ち合いになる中、パラジウム相場は極めて明確な上昇トレンドを形成している。その上昇の勢いは、不安定な投資環境で再評価が進む金相場さえも大きく上回っており、今や金相場を100ドル以上も上回る価格水準に到達している。

パラジウム相場の高騰は、極めて分かり易いロジックであり、その分かり易さが投資人気を集めている。即ち、需給ひっ迫化に対する警戒感の強さである。英貴金属商ジョンソン・マッセイ社が今月発表した最新のレポートでは、パラジウムの供給不足は「構造的」として、短時間に解消される可能性は低いとの見方が示されている。

世界的な景気減速懸念から世界の新車販売は鈍化しているが、排ガス触媒に使用されるパラジウムという観点では、なお強い追い風が吹いている。欧州、中国、インドなどが19年中に相次いで環境規制の強化を予定しており、それに伴い排ガス中のNOxなどを除去するための排ガス触媒フィルター需要の拡大が確実視されている。特に欧州では、排ガス規制そのものの強化に加えて、試験方法の厳格化も順次実施されることになり、自動車メーカー各社は不適合となるリスクへの対応から排ガス制御の取組を強化せざるを得ない状況にある。これと同様のトレンドは欧州以外でも観測されており、19~20年にかけてパラジウムの自動車触媒用需要は二桁の伸びになると推計されている。また、化学分野を筆頭とした産業用需要も底固く、価格高騰の影響を受けないとみられている。特に積層セラミックコンデンサー(MLCC)はハイエンド製品に限定されて使用されているため、他の競合する金属が少なく、需要拡大傾向が維持されるとみられている。

一方で、鉱山からの生産は大きく伸びないとみられている。確かにパラジウム価格は高騰しているが、同時に生産されるプラチナや非鉄金属相場が伸び悩んでいるため、パラジウム生産の採算環境は十分に改善していない。18年に関しては、安値で買われたパラジウム上場投資信託(ETF)の売却が進んだことで需給バランスが大きく乱れることは回避されたが、今後はパラジウムETFの売却を進める余地も乏しく、需給ひっ迫化を阻止する展望が描けない状況にある。

当然に現物市場では急ピッチな価格高騰に対する抵抗もみられるが、パラジウム先物のサヤは逆サヤ(期近高・期先安)の状態を維持しており、一種のスクィーズ的な状況が続いている。需給の論理では一段高必至だが、どこまでの価格高騰を許容するのか、需要家の我慢の限界ラインが打診される。
(2019/02/20執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年2月25日「私の相場観」

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金を本格購入し始めた中央銀行

金を本格購入し始めた中央銀行
ニクソン・ショック以来の規模

金は宝飾や工業用のいわゆる加工用需要の他に、地金・コイン・上場投資信託(ETF)などの投資需要が存在する。そして、他のコモディティにはないもう一つの需要項目として、中央銀行など公的部門の購入がある。

中央銀行は対外債務の返済、輸入代金の決算などを目的に外貨準備を保有しており、金本位制が崩れた後は国際基軸通貨のドルを通常だと短期米国債の形で保有して運用することになる。近年はドルへの一極集中に対する警戒感からユーロや英ポンド、円、更には豪ドルやカナダドル、中国人民元などに分散されることもあるが、特に問題がなければ無リスクで流動性が最も高い米国債が選択されることになる。一方で、各国中央銀行は伝統的に金準備も保有しており、その時々の運用政策によって金を購入したり売却したりする。1990年台にはイングランド銀行(英中央銀行)などの金売却の動きが、金価格の歴史的低迷の一因になったと言われている。

通常だとあまり注目されることのない需要項目だが、ここ数年は金総需要の10%前後が中央銀行によって吸収される傾向にある。この公的部門の金需要だが、2018年は651.5トンとなり、17年の274.8トンから74%もの急増となっている。これは1971年のニクソン・ショックで金とドルとの兌換が停止され、ブレトン・ウッズ体制に終止符が打たれた時以来の規模の大きさである。

一般的に、金は配当や利息収入を生まないため、必ずしも投資対象としては優位性があるものとは言えない。しかし、配当や利息を生まないということは発行体が存在しないことを意味し、通貨や国債などとは完全に異なる世界に位置付けられる特殊な資産になっている。中央銀行は外貨準備の安定化のために、近年は通貨間の投資分散を進めており、その選択肢の一つに金も存在しているが、18年は突然にその勢いは加速したのだ。

これは、明らかにドル・米国債に対する不信任が中央銀行の世界で広がっていることを意味する。米国のトランプ政権は誕生してから既に3年が経過しているが、2年目となる18年は中国との貿易戦争を本格化させるなど、「アメリカ・ファースト」を実現するために対外的な強硬姿勢が目立った。こうした中、米国と対立を深めたロシアが米国債から金に中央銀行のポートフォリオの大変革を行ったが、それと同様の動きが世界的に広がりを見せたのが18年だった。

そして、ここ最近は中国が外貨準備高が安定しているにもかかわらず、米国債の売却を進めている。昨年12月には約2年半ぶりに中国人民銀行が金準備の積み増しに動いている。民間投資家とは別の視点で中央銀行は動いているが、仮に19年も公的部門の金需要が更に上振れするようなことがあると、投資環境とは別に需給要因からも金価格は上昇し易い環境になろう。
(2019/02/13執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年2月18日「私の相場観」

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ゴムの値下りリスク高まる

ゴムの値下りリスク高まる
減産期の織り込みは終了

東京商品取引所の天然ゴム先物相場は、昨年11月21日の1kg=151.00円をボトムに今年1月21日の193.40円まで急伸したが、2月上旬は180円水準まで高値から下押しされる展開になっている。年末年始の急伸地合に関しては特段の新規材料は見当たらない。年末にかけて原油や株価が急落したことを考慮すれば、寧ろ急落しても違和感のない相場環境であった。しかし、ゴム相場は季節サイクルを織り込む形で、約2カ月で28.1%の急伸地合を形成した。

天然ゴムは、穀物などとは異なり樹皮を削って樹液を採取するため、原則として年間を通じて生産が可能である。ただ、乾季にはゴムの樹液の出が悪くなるため、一般的には生産活動が鈍化し、殆ど集荷が行われなくなる。地域的な違いはあるものの、例年だと4月に減産シーズンのピークが到来する傾向にある。このため、期先が減産期に差し掛かると、ゴム相場に対しては季節的な上昇圧力が発生する傾向にあり、昨年と同様に今年も年末年始を挟んだ上昇圧力が観測されている。

ただ、季節性を反映して上昇したのであれば、減産期が生産期に移行すれば、ゴム相場の上昇は正当化できなくなる。既に東京ゴムの期先限月は7月限になっており、一般的にこの時期にまで減産状態が続いていることはない。5~6月に関しては、乾季が長期化するハードウィンタリングと呼ばれる異常気象になると減産状態が維持されるが、期先限月の季節要因は値上がりよりも値下りを支持することになり、これが足元でゴム相場の上値を圧迫する背景になっている。過去のデータを振り返ってみても、2~6月のゴム相場は下落する傾向が強く、概ね季節トレンドに沿う形の反落局面を迎えた状態と評価している。

高値は2018年1月が216.30円だったの対して今年1月は193.40円であり、同じ季節要因で上昇した相場だが、10.6%値位置が切り下がっている。ゴム相場のマクロ環境としては、需給緩和による値下がり傾向が続いていることが確認できる。このため、季節性による値下りリスクが警戒される局面だが、仮に生産期に向けて高値を維持するシナリオが存在するとすれば、それは生産国の市況介入だった。減産期に生産・出荷制限をおこなえれば、季節性に基づく値下り圧力を否定できる可能性もあるためだ。

このため、昨年10~12月期から市況対策の議論は活発に行われていたが、実際には何ら目立った動きはみられない。12月、1月と議論は続けられていた模様だが、上述のように季節性でゴム相場が反発したこともあり、生産国の介入意欲は一気に後退しており、現時点では介入の議論は立ち消えになっている。季節性に基づく上昇相場が、季節性に基づく下落相場に転換する時期を迎えている。このまま生産国が無為無策の状態を維持すれば、一気に160円水準まで下げる可能性もある。
(2019/02/06執筆)

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(出所)中部経済新聞2019年2月11日「私の相場観」

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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