小菅努の商品アナリスト日記

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2019年01月

下値は固まってきた原油相場

下値は固まってきた原油相場
減産対応の着実な履行を期待

NY原油先物相場は、昨年12月24日の1バレル=42.36ドルをボトムに、1月中旬には50ドル台前半まで値上がりする展開になっている。石油輸出国機構(OPEC)やロシアなどの協調減産政策に対する信頼感が浮上する中、過剰供給是正に対する期待感が高まっていることが背景にある。

昨年12月にOPECやロシアは、2019年1~6月期に合計で日量120万バレルの減産対応を行うことを合意したが、マーケットでは合意が遵守されるのか、そもそも需給リバランスに十分な規模なのか懐疑的な見方が強く、原油相場は値崩れを起こしていた。株価急落といった外部環境の悪化も影響したが、2019年も過剰供給状態が続くのではないかとの強い警戒感が、原油相場の値崩れを促していた。

しかし、年明け後に昨年12月の産油量データの公表が始まると、OPEC最大の産油国であるサウジアラビアが1月を待たずに先行して減産に踏み切ったことが確認され、少なくとも減産合意が遵守されない事態は回避できるとの信頼感が高まっていることが、原油安に修正を迫っている。OPECによると、12月のOPEC産油量は前月の日量3232.8万バレルから3157.8万バレルまで、実に75.1万バレルもの大幅な減少になっている。サウジアラビア一カ国で46.8万バレルの減産を行った他、リビアやイランの産油量も大きく下振れしている。

また、ロシアやUAEなどの主要産油国が減産合意へのコミットを強く表明する中、1月以降の国際原油需給が大幅な緩和状態に陥るリスクは限定的との評価が広がりを見せている。1~3月期中に供給過剰状態を解消できるのかは疑問視する向きが多いが、仮に減産合意が100%に近い遵守率を確保できれば、4~6月期には供給「不足」状態に回帰する可能性が高い。

まだ減産履行は始まったばかりであり、イラクなど減産対応の遅れが指摘されている国もある。ただ、供給量の下振れはほぼ確実な情勢にあり、大規模な供給過剰が発生するリスクが解消されていることが、原油安是正を促している。

一方で、ここから急激な原油高が想定されている訳ではない。需給リバランスの進展は、あくまでも米国のシェールオイルなどが現在の見通しに沿った増産圧力に留まることが前提条件になる。仮に、過度の原油高がシェールオイル生産を刺激する事態になれば、改めて原油相場を押し下げることで生産を抑制するか、OPECなどの減産量の引き上げが求められることになる。

国際エネルギー機関(IEA)は、需給リバランスについて「短距離走」ではなく「マラソン」になると指摘しているが、現時点でシェールオイルと既存産油国の共存できる価格水準は、50ドル割れである必要はない一方、60ドル台は許容できないだろう。
(2019/01/23執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年1月28日「私の相場観」

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天然ゴム、季節性の「賞味期限」は残り少ない

〔アナリストの目〕天然ゴム、季節性の「賞味期限」は残り少ない

東京市場の天然ゴム先物相場(RSS)は、(先ぎり継続足が)2018年11月21日の151円ちょうどをボトムに、年明け後の1月中旬に190円台を回復する展開となっている。21日時点では最大で28.1%の上昇率を記録、昨年5月30日以来、約6カ月半ぶりの高値を更新した。

基本的には、季節要因の影響が大きい値動きになっている。天然ゴムの生産サイクルが減産期から生産期への移行局面を迎えるのと前後して産地相場が上昇に転じ、それにけん引される形で期先限月も値位置を切り上げるという専ら供給サイドの要因に基づいている。当ぎりベースで見ると、昨年11月中旬の130円台前半に対し、足元では200円台を回復しており、季節要因に基づく上昇圧力がいつまで持続するかがゴム相場の焦点になる。

減産シーズンに向かうとはいえ、世界の自動車市場が縮小傾向を強める中、需要環境は決して良好と言えない。中国の18年の新車販売台数は、天安門事件が発生した翌年以来となる28年ぶりに減少した。

減税による需要先取りの反動、ナンバー規制といった特殊要因の影響もあるが、経済成長の鈍化が新車販売の鈍化を促すのは世界的なトレンドになっており、タイヤメーカー各社も決算発表において、今後の需要環境の不確実性を指摘している。季節要因の支援が弱まれば、ゴム相場が大きく上昇する必要性は薄れることになる。

そこで過去のデータを検証してみると、ゴム相場(期先)は一般的に11月から翌年2月にかけて上昇しやすい傾向が見受けられる。10年間の平均値幅だと、12月の20円44銭高が最大であり、次いで1月の10円50銭高となる。

一方、2月に入ると上昇圧力が弱まり、2〜6月は前月比マイナスとなる傾向が強い。減産圧力がピーク化するのは4月の傾向が強いが、期先の受け渡し時期は生産期のピークを迎える秋で、必然的に季節性を反映した上昇圧力が鈍ることになる。

実際、足元でも当先の逆サヤ(期近高・期先安)傾向が強くなっており、当ぎりの上昇に期先が対応し切れなくなっていることがうかがえる。昨年も、期先は11月中旬から上昇トレンドを形成したが、1月中旬にピークアウトし、その後は本格的なダウントレンドに転換している。

足元の上昇圧力に関しては、残り1カ月程度の「賞味期限」が残されているか否かの評価となり、200円台回復の可能性があるものの、そこからさらに上昇トレンドを大きく発展させるのは難しいだろう。

仮に、季節性に基づく上昇トレンドの一服、反転を阻止する動きがあるとすれば、生産国の政策介入である。タイ農業省は今後5年で生産量の約3分の1を削減する必要性を訴えており、インドネシア、マレーシアなどの主要生産国と協調して供給圧力を抑制できれば、減産期明け後の増産懸念を後退させる形で、高値維持が可能となるシナリオは残されている。

ただ、原油とは異なり天然ゴムの供給調整が成功した例は少なく、現在は財政面での制約も強い。市況対策の思惑も足元の産地相場を下支えているが、石油輸出国機構(OPEC)並みの強力な市況対策を打ち出せなければ、季節性の支援が薄れる動きと連動して、ダウントレンド再開のリスクが高まる。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(2019/1/22執筆)
(出所)時事通信社「アナリストの目」2019/01/22

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金相場は長期底打ちの可能性

金相場は長期底打ちの可能性
安全資産への資金シフトの時

昨年10月の株価急落以降、金相場を取り巻く環境が徐々に強気ムードに変わり始めている。グローバル経済の減速懸念が強まる中、金融市場に強いストレスが見受けられ、ボラティリティの高まりが安全資産に対する投資ニーズを高めているためだ。もともと、米国株の過熱感を指摘する声は強く、昨年も2月と10月に大規模な調整局面を経験している。利益や売上高に対して株価水準が割高な状態にあることを示す指標は多い。それでも実体経済や企業業績の上振れ傾向が続く中、投機マネーの株式市場に対する流入傾向は維持されていた。しかし、ここにきてグローバル経済が想定よりも強い下振れ圧力に晒されるとの警戒感が強まる中、株価が「調整」ではなく「ピークアウト」局面を迎えているのではないかとの懸念が浮上している。

米経済はトランプ政権の打ち出した減税政策の影響もあり、2018年には過熱感さえある急成長を見せた。しかし、こうした政策効果が19年後半には薄れる一方、米中貿易戦争や欧州政治環境の不安定化などが経済を必要以上に下押しするリスクが警戒される中、資産防衛やリスクヘッジの観点から、金市場に対する資金流入が加速し始めている。

象徴的なのが金上場投資信託(ETF)市場であり、昨年10月以降はほぼ一貫して投資残高を積み増している。昨年も欧州勢は政治環境の不安定化を背景に年初から金ETFを買い進んでいたが、米系投資家は安全資産に対する投資ニーズを見出すことができず、逆に金ETFを売却し、金利上昇で保有メリットが高まるドルや、実体経済の底固さを背景に強含む株式市場に資金をシフトさせていた。しかし、10月の株価急落後は米系投資家も金ETFの買い手に転換し、リスク投資に対する緊張感が著しく高まっていることが示唆されている。

そこに浮上してきたのが、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ停止議論である。これまでFRBは、経済環境は利上げを必要としているとの判断から、断続的な利上げ対応が好ましいとの判断を下してきた。それは12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも変化はなく、19年中は2回の利上げを当局者が想定していることが示されていた。しかし、年末・年始を挟んで金融市場のボラティリティが一段と高まる中、利上げサイクルを終了すべきか否かは別としても、いったんは利上げを停止して様子をみるべきとの意見が勢いを増している。マーケットでは、このまま利上げサイクルが終了するのではないかとの見方も強く、米金利低下・ドル安圧力も金相場を支援し始めている。

2009年から続く株高トレンド、そして15年から続くFRBの利上げサイクルが同時に終了時期を迎える可能性が高まる中、金相場の長期ダウントレンドに終止符が打たれるか否かの分岐点に差し掛かっている。金相場の「売り材料」が「買い材料」への転換を完全に実現すれば、金相場は一時的な反発ではなく長期上昇トレンド形成に向かおう。
(2019/01/16執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年1月21日「私の相場観」

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小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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