小菅努の商品アナリスト日記

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2018年12月

底入れの時期を打診する金

底入れの時期を打診する金
利上げ停止の有無が焦点に

12月18~19日に開催された今年最後の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、マーケットと米金融当局者の認識に大きなかい離が生じていることを再確認させる内容になった。株価急落に象徴されるように世界経済の減速懸念が強まる中、マーケットは米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを継続することは困難であり、今会合では2019年中の利上げ停止が示唆されるとの見方が優勢だった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)も社説で利上げ停止の必要性を訴え、トランプ米大統領も利上げ停止を強く訴えていた。

しかし今回のFOMCで示された当局者の金利見通しは、2019年中に2回、20年に更に1回程度の利上げを想定するものになっている。これは9月時点の見通しと比較すると利上げ回数を1回削減したことになり、基本的にはハト派方向に政策見通しが修正されている。中立金利が3.0%から2.8%まで引き下げられたことも、従来想定されていた程に強力な利上げは継続できないとの判断を示している。

ただマーケットのコンセンサスは19年中に多くても1回の利上げで、そこで利上げサイクルは終了するというものになっており、今回のFOMCは「予想されていた程にハト派ではない」との評価になっている。

現状では来年6月に次の利上げが想定されており、仮にFOMCが強気の景況判断、労働需給の引き締まりなどを手掛かりに断続的に利上げに踏み切れば、ドル買い・金売り対応が再開される余地を残す。一方、仮に6月追加利上げが実施できない状況、もしくは6月利上げで利上げサイクルの終了を迫られる事態になると、19年下期に金相場は中長期の底入れを確認し、反発では無く上昇トレンド形成に向かう可能性が高まる。

今年は一貫してマーケットが米金融政策を正確に読めない状態が続いた。これがドルインデックスを押し上げ、通貨的な視点では金相場に対して強力な下押し圧力として機能した。第4四半期は辛うじてリスクオフ化が安全資産の観点から金相場を押し上げたが、株安が一服すると売られ易い地合に変化はみられない。
 
しかし、仮に19年中にマーケットの利上げを早期に停止すべきとの主張が正しかったことが確認されると、ドル買い・金売りの13年から5年にわたって続く中長期トレンドが終了し、ドル売り・金買いの新たなトレンドが形成される可能性が浮上することになる。

トランプ米大統領は、企業経営者特有の感で利上げ継続は危険との判断を下しているが、FRBは一貫して経済環境は良好であり、利上げ継続よりも利上げ停止のリスクの方が大きいと考えている。米利上げサイクルが終了し、更に利下げに向かう局面は、歴史的にみて金相場が長期底入れを確認する時期になる。今回のFOMCの予想通りに利上げが継続されるのか、それとも見通しの修正を迫られるのかが、19年の金相場の焦点になる。
(2018/12/26執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年12月31日「私の相場観」

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OPECプラスは減産合意

OPECプラスは減産合意
原油価格の急騰は難しい

石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟国は12月7日、日量120万バレルの減産対応を行うことで合意した。ロシアが最後まで減産対応に難色を示したことで、6日のOPEC総会時点では結論を出せなかったが、ぎりぎりの交渉で減産合意の形成には成功した形になっている。事前のマーケットでは、2019年の供給過剰見通しに産油国が何ら対応できない可能性も警戒されていたが、最終的にはロシアもOPECとの協調を重視して、減産による供給過剰化の阻止で共同歩調を取ることになった。期間は1~6月であり、4月に政策調整の必要性を改めて議論することになる。
 今回の減産合意に関しては、過剰供給リスクへの対応としては、一応の及第点を与えることが可能なものになっている。少なくとも1~6月期に大規模な在庫積み増しが行われることは阻止することが可能であり、需給バランスは均衡化に近い状態を実現できることになる。

しかし、減産合意後の原油相場の反応は鈍い。NY原油先物相場は、1バレル=50ドルの節目水準でサポートされているが、安値修正の動きが活発化しているとまでは言えない。背景にあるのは、第一に今回の減産合意の規模が過剰供給阻止に十分なのか疑問があること、第二に減産合意が履行されるのか不確実性を残していることである。

日量120万バレルの減産合意は極めて大きな規模だが、OPECの需給見通しを前提にすると、在庫積み増し圧力そのものを完全に否定することは難しい。特に4~6月期には改めて在庫積み増し圧力が強まり易く、そのタイミングで米国のシェールオイル増産ペースが加速するような事態になると、改めて需給緩和圧力が相場を下押しする可能性がある。

また、今回はロシアが最後まで減産合意に難色を示したことで、合意内容が履行されるのかも、不確実性が高い。ロシアのプーチン大統領は、現在の原油価格水準に満足感を示しており、減産は合意したものの数カ月の時間をかけて段階的に行うとしている。仮に実際の減産圧力発生まで時間が掛かると、減産合意が十分に機能しない可能性も抱えている。

減産合意形成には成功したことで、今後は実際にどの程度のペースで減産が行われ、それが在庫積み増し圧力をどこまで阻止できるのかが問われることになる。現状では50ドル台を大きく割り込むような必要性は後退する一方、60ドル台を回復するような需給引き締め圧力は発生しない見通し。仮に早期に60ドル台乗せを打診するのであれば、何らかの供給障害が発生することが求められよう。

OPEC非加盟国の増産圧力が、世界石油需要の伸びを上回る状態が恒常化する中、いずれにしてもOPECなど従来型の産油国を取り巻く環境は厳しい。当面は減産対応で需給緩和リスクの解消を目指すが、50ドル水準での下げ一服を目指すのが中心になる。
(2018/12/12執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年12月17日「私の相場観」

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ロシア抜きでは何も決められなかったOPEC総会、求心力低下は避けられず

ロシア抜きでは何も決められなかったOPEC総会、求心力低下は避けられず

12月6日にウィーンで石油輸出国機構(OPEC)の第175回総会が開催された。米国のシェールオイルなど非OPECの産油量が急増する一方、世界経済の減速で需要見通しに下振れ圧力が強まる中、2019年の供給過剰見通しに対してOPECとしてどのように対応するのかを決定する、石油市場にとっては極めて重要なイベントである。

OPECの需給予想によると、OPEC産原油に対する需要は2018年の日量3,259万バレルに対して、19年は3,154万バレルまで105万バレル減少する見通しになっている。また、10月の産油量実績3,290万バレルを基準にすると、19年の国際原油市場で改めて在庫が急増する事態を避けるためには、年平均で136万バレルの減産対応が求められることになる。

2017年以降は「OPECプラス」とも言われるOPECの枠組みを超えた産油国間の協力関係が構築されており、OPEC単独で減産対応を行う必要はないが、ロシアなど非加盟国も含めて減産対応の必要性があることは議論の余地がない状況になっている。

しかし、今回のOPEC総会では明確な結論を出すことができなかった。メディアの報道をみても、ロイター通信は「減産で暫定合意」と報じる一方、ブルームバーグは「物別れ」と報じるなど、評価が割れている。OPECが発表したプレスリリースだと、2019年の国際原油需要と供給とのバランスを取るために前回の6月総会の政策を変更する見通しを示すも、7日にOPEC非加盟国と協議を行った上で最終的な決定を下すとされている。

減産の暫定合意とも言える一方、合意形成に失敗したとも言える状況であり、OPECの最高意思決定機関としては、曖昧な内容に留まったとの評価が否めない。

背景にあるのは、もはやOPECのみで国際原油需給を安定化させることは不可能な状態にあることだ。理論上はOPECが日量136万バレルの減産を行えば、2019年の国際原油需給バランスは均衡化する。しかし、これはOPECが産油量を4.1%削減することを意味し、さすがに簡単に受け入れることができるものではない。このためロシアなどの協力が必要不可欠だが、そのロシアの態度が明らかでないため、OPEC総会で結論を下せなかったのだ。

OPEC総会が開催されている時、ロシアのノバク・エネルギー相はサンクトペテルブルクに居り、プーチン大統領と協議を行っていた模様だ。OPECとしては、ロシアがどの程度の減産を負担してくれるかが分からない限り、OPEC全体の減産幅もスケジュールも決められず、7日に予定されているOPEC加盟国と非加盟国との会合に結論を先送りした格好になっている。

OPECが市場シェアを失う中、もはやOPECのみで原油需給・価格管理が可能な時代は終わっていることが強く印象付けられる異例の事態になっている。ロシア、更に言えばプーチン大統領がOPECの減産要請に対してどのような対応を見せるのかで、OPECの産油政策は決まることになる。

もはやOPECはロシア抜きでは自らの産油政策さえ決めることができない時代を迎えている。需給管理においてはロシアなど非加盟国との協力を求められる一方、米国のトランプ大統領はOPECの産油政策に対する圧力を隠さなくなっており、OPECの存在感が急速に薄れてしまっていることが強く印象付けられる。カタールは来年1月にOPECから脱退することを決定したが、影響力を失いつつあるOPECの求心力低下は、国際原油市場における強力な不安定化要因になりそうだ。「OPEC総会でOPECの産油政策を決められなかった」という事実は、重く受け止める必要がある。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)ロシア抜きでは何も決められなかったOPEC総会、求心力低下は避けられず(Yahoo!ニュース)

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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