小菅努の商品アナリスト日記

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2018年06月

7月のオイルサンドは減産必至、カナダの停電続く

カナダのアルバータ州北東部に位置するFort McMurray地区のオイルサンド生産地で停電が発生しています。Syncrude Canadaに出資するSuncor Energyは6月22日に停電による生産障害を報告し、その後は7月いっぱいは生産障害が続く可能性が指摘されています。Suncor Energyによると日量36万バレルの生産能力があり、カナダを中心に北米の原油需給に大きな影響が及ぶことが想定されます。

【アルバータ州Fort McMurray地区】
無題



















(出所)Google Map

アルバータ州にはHardisty石油ターミナルがあり、そこから米中西部にかけてはKeystone Pipelineが敷設されており、カナダから米国向け原油輸出ルートが存在します。このため、停電が続きオイルサンドの生産障害が続けば、1)カナダ産重質油へのプレミアム、2)米国産原油へのプレミアムという形で、北米原油需給のひっ迫化圧力が原油価格に上向きのエネルギーを発生することになります。

【Keystone Pipeline】
無題

































(出所)TransCanada

実際に、6月22日の石油輸出国機構(OPEC)総会後は国際原油相場の急伸が確認されていますが、ブレントや中東産原油に対してWTI原油の上昇幅は相対的に大きくなっています。ブレント原油とWTI原油のスプレッドは、6月中旬の1バレル=10ドル前後に対して、6月28日時点では4.40ドルまで縮小しています。ちなみに、TOCOM原油は中東産原油が標準品のため、WTI原油相場の急騰程には、大きな影響が発生していません。

無題
















今後は、米国内(特にクッシング地区)の原油在庫減少圧力として、需給インパクトが拡大していく見通しです。WTI原油の期近限月主導の短期上昇リスクを想定しておく必要が高まっています。米金融大手ゴールドマン・サックス・グループは「inventory stockout(在庫切れ)」が発生するリスクを指摘しています。期間限定のポジティブ材料ですが、OPECの供給増加が不十分との見方が浮上しているタイミングだけに、原油価格に対するインパクトは必然的に大きなものになります。日量36万バレルと言えば、1カ月で1,080万バレルの供給減少圧力になります。この全てが米原油在庫に反映される訳ではありませんが、日量数万バレルの供給減少でも軽視することはできません。

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米国債を売り、金を買うロシア中銀

ロシアが外貨準備における米国債の削減に動いています。2017年4月時点の1,049億ドルに対して、直近の今年4月時点では451億ドルに留まっています。これが外貨準備の減少に伴う動きであれば分かり易いものですが、実際には原油価格回復と連動してこの間の外貨準備は急増しています。つまり、米国債購入圧力が強まり易い局面で、寧ろ積極的に米国債保有を削減しています。

【米国債保有高(国別)】
無題













(出所)Department of the Treasury,US

もちろんロシア政府は公式にその理由を説明するようなことはありませんが、今年に入ってからのトレンドであり、特に4月にその動きが加速したことからは、トランプ政権の対外政策が強硬さを増していることと無縁ではないでしょう。

一般に外貨準備として米国債が志向されるのは、米国の信用に裏付けられた「無リスク(risk free)」性にあります。準備資産を米国債で運用するのは、常識ともいえるオペレーションでした。しかし、ロシアは少なくとも自国にとって米国債は「無リスク」ではないと考えている模様であり、戦略的に米国債を手放しています。

そして、これとは対照的に購入量が増えているのが金です。4月時点での過去1年間に193.9トンの購入が報告されている。もはや中国を上回る規模の金保有国になっています。もちろん、戦略的に米国債を握ることで、米国のファイナンス面での命綱を握るという選択肢もあります。中国などは明らかにカードとして米国債保有残高の多さを利用しています。しかし、ロシアに関しては米国債離れを選択しています。トランプ政権の対外政策が厳しさを増す毎に、外貨準備政策を変更する第二、第三のロシアが誕生することになりそうです。

無題

















【ロシアの金準備資産】
Q1_2000_Q1_2018_Gold_Reserves__Tonnes

















(出所)WGC

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イラン産原油の取引停止は困難、日本も制裁されそうです

米国務省は11月の対イラン経済制裁までに、各国に対してイラン産原油取引を停止することを求めました。

CNBC=Oil buyers must cut all Iranian crude imports by November, State Dept says

無題














(画像出所)CNBC

オバマ政権は180日毎に20%の削減と段階的な輸入削減を要請しましたが、トランプ政権は11月の経済制裁開始までに完全停止することを求め、要請が無視された際には制裁を科す方針を示しています。

イランは2017年に平均で日量250万バレルの原油とコンデンセートを輸出していますが、これを国際原油市場から排除することで、経済面からイランに対する締め付け強化を狙ったものです。既に欧州や日本に対しては要請を行う一方、中国、インド、トルコに対しては要請を行っていない模様です。

イラン産原油の輸出先は、中国20%、インド18%、韓国14%、イタリア7%、日本5%、フランス5%などとなっています。アジア地区向けの輸出規模が大きくなっていますが、中国とインドのみで38%、そこに日本と韓国を合計すると57%に達します。

【イラン産原油の輸出先】
crude_oil_exports






















(出所)EIA

ただ、中国政府はこうした米政府の要請には応じないとしています。過去の経済制裁を振り返ると、インドやトルコも恐らく(殆ど)対応しないでしょう。韓国は対応する見通しですが、現実問題としては油種の問題もあってゼロに近づけるのは難しいとみられています。

日本の国別輸入先だと、イラン産は5%のシェアを有しています。これだけの代替供給を残り4ヵ月強で経済活動に影響を及ぼすことなく確保できるのか、厳しい状況です。菅義偉官房長官も記者会見で「日本企業に悪影響が及ばないよう、米国を含む関係国としっかり協議したい」としたものの、政府としての対応は決めかねていることを示唆しています。おそらく、米国の要請通りにイラン産原油輸入をゼロにするのは困難でしょう。

米国が無理を承知で各国に経済制裁を科すのか、それとも現実路線に修正するのかはわかりませんが、最近のトランプ政権は(自らの信じる)原理原則を重視する傾向にあり、先行きは厳しい状況です。イラン産原油取引縮小の形で「誠意」を見せつつ米政府を満足させる方向性はオバマ政権下でも経験していますが、その時よりも遥かにタフな交渉を迫られることになるでしょう。

イランは自国の原油供給を国際市場から排除するのは不可能と自信を示していますが、中国などがイラン産原油の調達量を増やさなければ、陸上・海上に死蔵される在庫が急増し、国際原油需給は見かけの数値以上のタイト感に襲われることになります。原油は存在するが取引できない状況に向かうことになります。

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サウジ・エネルギー相がOPEC総会後に語ったこと

石油輸出国機構(OPEC)総会は、OPECの産油政策の方向性が明らかになると同時に、各産油国が何を考えているのかも多くの情報が得られる重要イベントになります。その中でもサウジアラビア・ファリハ・エネルギー相がOPEC総会直後に行った発言を紹介します。
WE TAKE OIL SUPPLY DECISIONS BASED ON MARKET ANALYSIS, NOT ON TRUMP'S TWEETS
協調減産政策について、トランプ米大統領の(原油高批判の)ツイートに基づいて修正を行ったのではなく、あくまでも市場分析に基づいていることを確認しています。米国サイドからは日量100万バレルの増産プレッシャーが強くなっていましたが、サウジとしては米国の圧力にOPECが屈したとの批判を気にしていることが確認できます。今後、トランプ大統領が原油高批判を行う度に、OPECが増産を決めることは難しくなります。
SAUDI ARAMCO INTERNATIONAL OIL RESERVES AUDIT CONFIRMED AT CLOSE TO 270 BLN BARRELS

SAUDI ARAMCO WILL BE INCREASING PRODUCTION CAPACITY
サウジアラムムコの確認埋蔵量が2,700億バレルであることを確認しています。従来の報告内容と変わりませんが、外部監査でも世界最大規模の埋蔵量が確認されています。株式公開を見据えたアピールと言えるでしょう。更に生産能力を拡充することにも意欲を示しています。
SAUDI TO ADD HUNDREDS OF THOUSANDS OF BARRELS TO THE MARKET FROM JULY

YOU WILL SEE A MEASURABLE INCREASE IN PRODUCTION IN JULY
7月にサウジのみで数十万バレルの増産が可能であることを確認しています。増産効果は7月中に顕在化することになります。
IT WILL BE A CONCERN IF OIL PRICES RISE FURTHER
更に原油価格が上昇することには懸念を表明しています。価格ではなく需給で政策調整を行っているとしていますが、実際には原油高抑制の意思を有している模様です。
WHEN ASKED ABOUT IRAN SANCTIONS, WE HAVE OPTIONS TO REVIEW SUPPLY IN SEPT
イランの供給動向によっては、9月に政策見直しを行う可能性に含みを持たせています。早ければ、3ヵ月後にも政策の調整が行われます。
OPEC invites Russia to join as observer 
OPECがロシアに対して、フルメンバーとしての加盟を促したことが明らかにされています。一方、ロシアはフルメンバーは検討していないとしていますが、オブザーバーとしてのOPEC加盟の可能性は認めています。ロシアとしては、OPEC加盟国の一つになることに意味を見いだせていませんが、OPEC=ロシアの協調路線が過去1年半で大きな成果を挙げたことで、協調関係強化の流れの中で、オブザーバー加盟という選択肢が浮上しています。従来の恒久的な協調機関を設立するとの議論との関係など分からないこともありますが、OPEC=ロシアの協調関係は新たなステージに突入することになります。

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天然ゴムが今年最安値に

天然ゴムが今年最安値に
農家の安値限界を打診

自動車タイヤなどに使用される天然ゴム価格が急落している。東京商品取引所(TOCOM)では、5月22日の1kg=202.10円をピークに、6月下旬には今年最安値となる170円水準まで値下りしている。2016年10月以来の安値が更新されている。

最も底流部分にあるのは、東南アジアが減産期から生産期への移行が進んでいる季節要因である。天然ゴムの生産サイクルには明確な季節性が存在しており、一般的に乾季によってゴム樹液の出が悪くなる4~5月が減産期のピークになる。実際にこの時期は産地相場が底固く推移しており、それが東京や上海といった消費地市場におけるゴム価格も下支えしていた。しかし、6月に入ると降水量が回復し始め、それと連動する形で集荷量が増加していることがが、産地主導でゴム相場を押し下げる流れに転換している。

タイ中央ゴム市場の場合だと、5月時点ではRSSの集荷量が日量50トンに届かない営業日も目立ったが、6月入りしてからは100トン台確立を打診する動きをみせている。これに伴い現物相場も値下がりしており、5月中旬には1kg=50バーツ台前半を推移していたのが、6月下旬には40バーツ台中盤まで値下りしている。

しかもタイミングが悪いことに、6月15日にはトランプ米大統領が中国の知的財産権侵害などを巡って500億ドル相当の中国製品に対して制裁課税を行う方針を発表し、それに対して中国側は同程度の強度での報復措置を講じる方針を発表している。世界1位と2位の経済規模を有する米中の間で貿易戦争が発生する可能性が浮上していることが、ゴム相場の下げをエスカレートさせている。

投資家のリスク選好性の後退に加えて、米中経済の下振れ懸念も手伝い、非鉄金属を筆頭に原油などに対しても押し下げ圧力が発生している。この流れの中でゴム相場も下振れしており、米中双方が更に緊張を高めるような動きを見せると、値崩れ状態が加速する可能性も抱えている。

一方で、現在の価格水準はコストの視点では下げ過ぎ感が強くなっている。タイの農家は従来から60バーツ水準がゴム農園の経営を維持する上での最低価格として、できれば80バーツが必要と主張している。こうした中、40バーツ台中盤の値位置は、過去に農家の売り渋り、安値への抗議デモといった価格防衛の動きを促してきたレベルであり、産地主導で安値是正が促されるリスクに注意が求められる。

特に、過去に生産国政府が市況対策に動き出すきっかけとしては、農家の抗議デモが大きな役割を果たしており、ゴム相場の値崩れに対して産地が抵抗を示すと、マクロ需給要因に基づく値下り圧力が、コストの視点から下げ止まる可能性が浮上することになる。過去に何度も繰り返されている相場パターンだが、今年も生産国政府に対して市況対策を求める催促相場の様相を呈し始めている。
(2018/06/20執筆)

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(出所)中部経済新聞2018年6月25日「私の相場観」

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

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