小菅努の商品アナリスト日記

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2018年05月

イランの無理筋、OPEC総会でサウジに反旗か?

イランのザンギャネ石油相が輸出国機構(OPEC)に対して、米国からの経済制裁に対して同国に対する支援を要求していることが明らかになりました。米国は、核合意からの離脱と同時にイランに対して経済制裁を科す方針を示していますが、それにイラン単独ではなくOPECとして対抗することを要求した格好になります。

Reuters=UPDATE 1-Iran seeks OPEC support against U.S. sanctions - letter

イランがこうした要請の根拠として掲げているのがOPEC憲章第2条になりますが、これは集団または個別で加盟国の利益を守ることを確認する一般条項であり、石油政策とは必ずしも関係ない今回の米国の経済制裁の動きに対して、OPECがイランと共同歩調をとることを要請するのは無理がありそうです。

【OPEC憲章第2条】
無題
















(出所)OPEC

ただ、ザンギャネ石油相はこれと同時に、現在マーケットで話題になっている協調減産政策の見直し議論には反対する意向を明らかにしました。一部加盟国が勝手にOPECを代表したような形で増産メッセージを発していることに強い不満を示しています。明らかにサウジアラビアを念頭に入れたものであり、6月OPEC総会ではサウジ=イランの対立が顕在化する可能性が浮上しています。

かつてとは異なり、仮にイランが協調減産緩和から造反してフル増産に踏み切ったとしても、米国の経済制裁が実施されればイランが増産を行う余地は殆ど存在しません。その意味ではイラン抜き政策調整を合意したとしても何ら問題はありませんが、イランの支援要請に対して同じシーア派のイラクなどが同調する動きをみせると、OPEC総会が波乱を起こす可能性が浮上します。これまで少なくとも石油政策においては強力な結束が保たれた状態が維持されてきましたが、対応を誤ると政治、軍事、経済に加えて石油政策でもサウジとイランとの対立が先鋭化する可能性があります。

サウジに接近するロシア、距離を保つイランと、OPECの枠組みは大きな転換期を迎えているのかもしれません。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

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協調減産修正は、トランプ大統領のため?

石油輸出国機構(OPEC)やロシアなどが協調減産政策の修正を巡る検討を開始したことが、国際原油価格の急落を促しています。ベネゼエラやイランの供給障害に対応するためというのが一般的な理解になりますが。OPECのバルキンド事務局長はトランプ米大統領のTweetを受けてのことだと発言しています。

Reuters=OPEC SecGen says Trump's tweet prompted talks on easing oil caps

需給の視点を否定している訳ではありませんが、4月20日にトランプ大統領が原油高についてOPECのせいだと批判したこと(参考:トランプ米大統領が石油市場に投げた「爆弾」)に対する回答が、今回の協調減産政策の見直しを行う誘因の一つという訳です。「OPECは米国の友人だ」として、強い配慮を見せています。



イランなどは、核合意破棄はトランプ大統領が自国のシェール業者を潤すための原油高を演出する取り組みと批判していますが、実際の米国では必ずしもこれ以上の原油高を求める声は強くなく、逆に燃料価格の高騰が問題視されています。

米議会でも、行き過ぎた燃料価格の高騰によって、家計部門に対する減税効果が薄れるとの危機感が広がっています。秋には中間選挙も控えており、これからドライブシーズンに向けての燃料価格高騰は政治的に許容できないものになっています。

Reuters=Senate Democrats want Trump to prod OPEC to lower oil prices

【米ガソリン小売価格】
chart (1)



















(出所)EIA

トランプ米大統領はこのTweetの後に原油高について踏み込んだ発言を行っていませんが、OPEC(特にサウジアラビア)が対米関係の視点で原油高にブレーキを掛けようとする試みを行うのであれば、その成否は別として「トランプ大統領がもたらす原油高の制約」という視点も必要かもしれません。

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協調減産緩和の際の需給シナリオ

石油輸出国機構(OPEC)やロシアが協調減産緩和に踏み切る可能性が浮上する中、原油相場は急落しています。協調減産の修正状況次第では需給見通しが大きく変わる可能性もあるため、上昇相場は一服した格好です。

まだどのような政策対応が講じられるのかは不透明感が大きい状況ですが、現時点で比較的有力と言える日量100万バレルの生産水準引き上げを前提にしたのが下のグラフです。非OPECの産油量引き上げでCall on OPEC(青線→緑線)が下方修正される一方、OPEC産油量(灰色→赤色)に引き上げられることになります。

仮に7~9月期時点で日量100万バレルの増産が行われると仮定しても、Call on OPECをOPEC産油量が上回ることは回避されますが、ギャップは大幅に縮小することになります。この修正状況を織り込んだ際に、原油価格見通しをどのように修正すべきかが今後の議論になります。

1

















こちらは上の推計値を前提に、在庫変動がどのように修正されるのかを試算したものです。上と同じく、7~9月期に日量100万バレルの増産が行われる前提になります。仮に協調減産の修正がなければ、7~9月期は日量115万バレル、10~12月期は141万バレル、それぞれ在庫が減少する見通しでした。一方、日量100万バレルの増産が行われると、7~9月期は15万バレル、10~12月期は41万バレルのそれぞれ在庫減少見通しになります。

イメージとしては、年後半に2億3,000万バレルの在庫減少見通しだったのが、5,000万バレルの在庫減少見通しに修正されます。

2

















実際には7~9月期に一気に生産調整が実施される可能性は低い状況ですが、年末までの強気派にとって最悪のシナリオという意味では、この程度の数値を想定しておくのが議論のスタートになりそうです。

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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