小菅努の商品アナリスト日記

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2018年04月

イラン情勢に緊張する原油

イラン情勢に緊張する原油
底流には需給の引き締まり

国際原油相場では、イラン情勢に対する注目度が高まっている。5月12日までにトランプ米大統領はイランに対する経済制裁解除を継続するか否かの決断を迫られることになり、そこに至る交渉状況によってはイラン産原油供給に大きな不確実性が浮上するためだ。

イランの核開発問題に対しては、2015年に米英独仏中露の6カ国とイランとの間で核開発を制限するための合意が結ばれており、それに基づき米政府はイランに対する経済制裁を解除した状態にある。これはオバマ前政権の大きな歴史的遺産(レガシー)と言われているが、トランプ米大統領はこの合意に根本的な問題があるとして、認めないと明言していた。具体的には核兵器やミサイル開発の査察などより踏み込んだ監視の必要性を訴えており、核合意の見直しが実現しない場合には、核合意離脱も辞さないとしている。

実はこの問題は1月にも発生していたが、その時点ではトランプ大統領は決断を下すことを見送り、法律に基づき120日間の時間的猶予が発生していた。その間に核合意の見直しが実現しない場合には、核合意から離脱するというのが当時のトランプ大統領の主張であり、国際社会は当初はトランプ大統領に翻意を迫り、それが無理と判断してからは合意見直しの方向で調整を進めている。

仮に合意見直しで調整が進めば、5月中旬にかけて原油相場急騰のリスクが後退する。一方、米国の核合意離脱といった最悪の展開になると、イラン産原油供給の先行き不透明感、地政学リスクの高まりが原油相場の急騰を促す可能性がある。残り2週間の交渉期限で、どのような結論が出るのかが注目されている。4月は米国のロシア制裁を巡る動きで非鉄金属相場が乱高下したが、原油相場でも同様の混乱が生じるリスクが浮上している。

もっとも、いずれにしても国際原油需給が安定化していることに変化はなく、イラン要因で急騰が回避されたとしても原油相場は強含みの展開が続く可能性が高い。国際エネルギー機関(IEA)は、今後数カ月で先進国の在庫が5年平均に回帰するとの見方を示している。また、サウジアラビアやロシアなどの主要産油国は6月の石油輸出国機構(OPEC)総会後も年末まで協調減産を継続する方向で調整を進めている。漸く安定化し始めた原油需給・価格を再び供給過剰・価格低迷状態に逆戻りさせないために、最新の注意を払った出口戦略が模索されている。

米長期金利の急上昇で株価が乱高下するなど、投資環境が不安定化していることが、数少ない原油安のリスク要因になる。ただ、投資家のリスク許容度が極端に落ち込まないのであれば、需要拡大と協調減産による過剰供給状態の解消、更には若干の需給引き締まりが、原油価格の緩やかな上昇トレンドを支持する展開が維持されよう。NY原油相場は今年1月に1バレル=60ドル台に乗せたばかりだが、70ドル台定着を打診する展開が現実味を増している。(2018/04/25執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年4月30日「私の相場観」

「石器時代は石がなくなったから終わったのではない」の再考

石器時代は石がなくなったから終わったのではない。
石に代わる新しい技術が生まれたから終わった。


1962年から86年までサウジアラビアの鉱物資源相を務めたアハマド・ザキ・ヤマニ氏の警告です。9年近く前の2009年7月4日の日本経済新聞に掲載されました。

国際原油価格は、良好な需要環境、そして協調減産の成果で余剰在庫の解消が進む中、WTI原油ベースで2014年11年以来の高値を更新しています。急落前の1バレル=100ドル台と比較するとまだ割安ともいえますが、ここにきてイラン情勢が緊迫化していることもあり、70ドル台回復が視界に入った状態にあります。

純粋な需給の視点であれば、産油国の政策調整が今後も維持され、シェールオイルなど新しい原油供給との共存時代を作り上げることができれば、再び100ドルの原油価格も見通せる状況になります。産油国サイドでは投資が絶対的に不足していることで、寧ろ供給不足が発生するのではないかとの懸念の声も聞かれる状況にあります。

一方で、理由は環境問題か原油価格高騰への警戒感は別として、輸送用エネルギーの分野では脱石油の流れはもはや回避不可能なレベルまで発展しています。電気自動車(EV)はまだ走行距離などの面で幾つかの問題を抱えていますが、技術の進歩によって乗り越え可能なレベルであり、石油需要に関してはいつ伸びが止まるのかというカウントダウンが始まっている状況です。

多くの産油国もこの流れはもはや不可避なものであることは認識しており、石油化学分野への本格進出などの形で石油時代の終わりに向けて準備を進めています。サウジアラビアに関しては、投資主体の経済体質への転換も目指されています。そのための時間稼ぎの観点であれば、脱石油の流れを加速しかねない原油高は、本当に歓迎すべき動きと言えるのでしょうか。サウジアラビアは80ドル、100ドルを希望しているといった報道もありましたが(参考:サウジアラムコのIPO問題が押し上げる原油価格)、ヤマニ氏の言う石器時代が「石に代わる新しい技術が生まれたから終わった」との認識が正しいのであれば、原油高は新しい技術開発の流れを加速させ、石油時代の幕引きを早めてしまう結果になるのかもしれません。

従来であれば、原油高は短期需要抑制、景気下押し圧力との評価が議論の中心でした。しかし、石油の時代そのものが終わる可能性が浮上する中、これまでの需給分析の手法がそのまま今後も通用するのか、従来は存在しなかった下向きの価格エネルギーの存在も考慮に入れる必要がある時代になっています。

石器から青銅器への移行と異なり、石炭から石油への移行は石炭利用の消滅を招いたわけではありません。寧ろ、石油需要はそのままで新エネルギーが今度のエネルギー需要拡大をカバーするといった見方もありますが、大きな時代の転換期に差し掛かっていることが、マーケットに新たな不確実性を持ち込んでいることは間違いなさそうです。ヤマニ氏の発言が話題になった当時は漠然とした未来の議論でしたが、現実の脅威として石油に変わる新エネルギーの存在感が増す中、「石器時代は石がなくなったから終わったのではない」というヤマニ氏の警告の再評価が求められています。

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大豆ミールの急騰を促した事故映像

中国向け輸出の先行き不透明感(参考:中国の米国産大豆輸入にブレーキ、意図が読めない不安感)から軟化傾向にあった大豆相場ですが、大豆ミール相場の突然の急反発につれ高する展開になっています。今、何が起きているのでしょうか?

【CBOT大豆ミール先物】
ダウンロード













(出所)CME

きっかけは、下の動画に映っています。



これはアルゼンチンのサンタフェ州のロサリオ港で撮影されたものです。パラナ川北東部の穀物輸送の拠点であり、周辺地区から集荷された穀物は、ここで大西洋まで積み出しされます。穀物などを上場するロサリオ取引所(ROFEX)は穀物市場のニュースでも目にすることがあると思いますが、昔からの穀物集荷の重要拠点です。

このロサリオ港ですが、4月25日に輸送船がドックへの接岸に失敗し、倉庫から輸送船に穀物を積み込む施設が破壊されてしまいました。これによって穀物輸送が停滞し、特に供給にタイト感があった大豆ミール相場の高騰がシカゴ市場にも波及しているのが現状です。

Reuters=Cargo ship collides with dock in Argentine grains hub Rosario

港湾当局によると、25日時点でトウモロコシ2.4万トン、大豆ミール2.7万トンの輸出が止まったとされていますが、その後も接岸できない輸送船がパラナ川で渋滞を引き起こしており、大豆ミール相場の高騰が促されています。それ程深刻な被害ではないとの報告もありますが、年間1,000万トンの輸送が行われているとのデータもあり、輸送停滞が続いている間は、どうしても大豆ミール相場は不安定な値動きを迫られることになります。

アルゼンチンのこの種の事故の復旧能力はどの程度のレベルなのでしょうか。現地の復旧作業のペースが、大豆ミール相場の上昇余地を決定づけます。27日時点では、悲観的な見方が優勢だったことが、週末を前に投機買いを呼び込みました。

なお、ロサリオの位置関係は地図上ではこのようになります。

無題















(出所)Google Map

また、昼間のロサリオ港の穀物ドックはこのような形になっています。船舶が見える部分の接岸に失敗し、穀物運搬施設が破壊された状況です。

rosario-puerto

















(画像出所)NABSA

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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