小菅努の商品アナリスト日記

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2018年03月

シカゴ穀物相場が急反落中

シカゴ穀物相場が急反落中
南米産の天候相場は終了

年初から3月中旬にかけて、シカゴ穀物相場は急伸した。CBOTトウモロコシ先物相場の場合だと、年初の1Bu=351.25セントに対して、3月13日高値は395.25セントに達しており、最大で12.5%の上昇率が記録されていた。大豆先物相場も年初の967.50セントに対して3月2日高値は1082.50セントに達しており、こちらは最大で11.9%の上昇率が記録されている。

背景にあったのは南米アルゼンチンの気象環境悪化であり、同国で干ばつ被害が発生した影響で穀物生産見通しが急激に悪化したことが、穀物相場の急騰を招いていた。米農務省(USDA)によると、アルゼンチン産のトウモロコシ生産高は昨年12月時点で4200万トンが見込まれていたが、最新報告では3600万トンまで14.3%の下方修正になっている。また大豆生産高は同5700万トンから4700万トンまで17.5%の下方修正であり、世界の穀物供給見通しに大きな不確実性が発生したことが、穀物相場を強く刺激した。いわゆる「天候相場」型の値動きである。

一方で、3月中旬以降の穀物相場は急反落している。トウモロコシは370セント台中盤、大豆は1030セント水準まで値下がりしている。南米の穀物生産は収穫ステージを迎えており、厳しい生産環境ながらも不確実性については後退することになる。天候リスクの具体的な生産インパクトが確定に向かう中、必要以上のリスクプレミアムについては剥落を迫られることになり、それが3月中旬以降の穀物相場を急反落させている。アルゼンチンで降雨が観測されている影響も指摘されているが、仮に再び干ばつ警告が強まったとしても、穀物相場を再び大きく押し上げるのは困難だろう。

ただ注意が必要なことは、こうしたアルゼンチン不作の米国内穀物需給に与えるインパクトは、トウモロコシと大豆とで全く異なっていることだ。トウモロコシに関しては、アルゼンチン産が不作となった影響で、米国産に代替需要が発生している。米国産のトウモロコシ輸出は極めて高いレベルを推移している。一方、大豆に関しては、アルゼンチン産が不作だったもののブラジル産の生産が良好なことで、米国産大豆に対する引き合いは寧ろ下振れ傾向にある。3月中旬以降の急落相場で、トウモロコシは370セント台中盤、大豆は1030セント水準まで値下がりしている。ともに急落地合を形成しているが、需給環境からはトウモロコシ相場には割安感が浮上し始める一方、大豆相場は更に下振れするリスクを抱えた状態と評価している。

そして月末には2018/19年度の米作付意向面積がUSDAから発表される。大豆面積の上振れに対する警戒感が強いが、4月に入れば米国産穀物の作付け作業もスタートすることになり、米穀倉地帯の気象環境に一喜一憂する新たな天候相場を迎えることになる。(2018/03/21執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年3月26日「私の相場観」

産地主導の上昇を打診する天然ゴム相場

◎〔アナリストの目〕産地主導の上昇を打診する天然ゴム相場

東京天然ゴム先物相場は、2月16日の1キロ=179円20銭をボトムに190円水準までコアレンジを切り上げる展開になっている。トランプ米政権の引き起こす貿易戦争に対する懸念からコモディティー市況全体の上値の重さが目立ち、しかも、為替市場で円高圧力が強まる逆風が吹き荒れる中にあっては、一定の底堅さを示したと言えよう。上海ゴム先物相場も、中国市場における鉄鉱石や石炭相場などと比較すると、相対的な底堅さが目立つ状況にある。

消費国の在庫積み増し圧力が続く中、一時的なリバウンドにすぎないとの見方も強い。例えば、全国営業生ゴム在庫は昨年10月10日の5302トンをボトムに、緩やかな増加傾向が続いており、直近の2月28日時点で1万5206トンに達している。前年同期に比べ3.3倍の規模であり、期近限月主導の値崩れ期待も強い。ただ、実際には当ぎりも急伸こそないが底堅く推移しており、順ざや形成に関しては「期近限月の弱さ」というよりも、「期先限月の強さ」との評価が妥当と評価している。

では、なぜゴム相場が底堅く推移しているかだが、産地主導の上昇圧力である可能性が高い。生産地では2月現在でタイ北部、カンボジア、ラオスなどで乾燥傾向が報告されていたが、3月入りしてからタイ南部やベトナムなどでも雨期から乾期への移行が確認されている。インドネシアとマレーシアではまだ安定した降水量が確保されており、必ずしも集荷量が大きく落ち込んでいるわけではない。

しかし、タイ中央ゴム市場の現物相場は、過去1カ月でUSSが4.9%高、RSSが4.0%高と底堅く推移している。ドル建てオファーもタイ産RSSを中心に上昇圧力が目立つ状況にある。

しかも、主要生産国は1〜3月期の最大35万トンの輸出規制を柱とする市況対策を、減産期のピークに向けてさらに継続する方向で調整を行っている。まだ正式決定には至っておらず、シームレスに4月も市況対策を継続するのかは不透明感が残されるが、輸出規制、作付面積の削減、需要喚起策といった各種市況対策が検討されている。タイ当局からは、現行価格を27%上回る1キロ=60バーツ台を目指す方針も再確認されている。

2018年の世界天然ゴム需要に関しては2.8%の増加予想だが、何らかの生産調整を実施しない限りは、需給が引き締まる余地はほとんど存在しない。ただ、コスト論の視点でも産地相場の大幅な値崩れは要求されておらず、このまま4〜5月の減産期に向けて産地相場が強含み、上海ゴム相場も底固く推移するのであれば、東京ゴム相場も200円台までコアレンジを切り上げる余地が浮上することになる。

今年の国際ゴム相場は、上海ゴム市場における投機マネーの動向に強く依存しており、方向性の把握が極端に難しい相場環境が続いていた。足元でも先行き不透明感の強さから売買見送りムードが目立つことは否めない。ただ、産地主導で消費地相場を押し上げるトレンド形成が打診される重要局面を迎えていることは間違いなさそうだ。

※小菅 努(こすげ・つとむ) マーケットエッジ代表 

(2018/03/18執筆)
(出所)時事通信社「アナリストの目」2018/03/19

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20年以降に原油需給ひっ迫

20年以降に原油需給ひっ迫
投資不足に懸念の声

シェールオイルやオイルサンド、深海油田といったいわゆる「タイトオイル」が存在感を増す中、石油市場の関心は「いかにして需要を満たす供給量を確保するか」よりも、「いかにして需要に見合った供給量に抑制するか」にシフトしている。2010年代前半までは良好な需要環境に加えて、イランなどの供給抑制といった特殊要因もあって引き締まった需給環境が実現していたが、12年頃から徐々にタイトオイルの増産が本格化し、14年についに原油相場は急落することになった。しかし、石油市場では20年代にも再び供給不足が発生するのではないかとの警戒感が浮上し始めている。

国際エネルギー機関(IEA)の推計では、23年にかけて世界石油需要は平均だと日量120万バレルのペースで増産が進む見通しである。電気自動車(EV)シフトの動きがガソリン需要の伸びを抑制するが、それに代わって石油化学部門の需要が拡大する中、石油需要はピークを迎えることなく成長を続ける見通しになっている。中産階級拡大の流れが維持される中、パーソナルケアや家具、潤滑油といった幅広い分野でガソリンや暖房油とはことなる石油需要の拡大が見込まれている。

一方、20年にかけてはタイトオイルがこうした需要拡大をカバーできる見通しであり、引き続き需給緩和状態が想定されている。しかし、今後も安定的に需要拡大を満たす供給量を確保するには、上流部門の投資が必要不可欠であり、現在の投資水準では20年以降に供給不足が再発する可能性があると、IEAは警告を発している。

14年の原油相場急落は投資環境にも強力な逆風になり、15年の投資は前年比25%減となり16年も更に26%減となった。その後は原油価格が回復しているものの、投資に関しては一向に改善しておらず、このままの投資環境が続くと石油輸出国機構(OPEC)やロシアの協調減産が解消されても、そもそも増産能力が不足している可能性さえ想定しておく必要がある。
世界の石油供給には自然減少圧力が存在しており、その規模は日量300万バレルと推計されている。すなわち、現行の生産水準を維持するには年に日量300万バレルの増産が可能な投資を行う必要性がある。しかし、現在の投資水準はこうした自然減をカバーするのにも不十分である可能性がある訳だ。

20年以降に実際に供給不足が発生するのかは不透明感が強いが、昨年の原油価格回復でも投資が一向に改善していないことは間違いのない事実である。将来の供給不足化とそれに伴う原油相場の急伸を阻止するという観点であれば、必ずしも需給がひっ迫していない現段階から原油価格水準を引き上げ、投資環境の改善(=増産能力の強化)を促すことも正当化できる余地がある。目先の需給ひっ迫状態は想定されていないが、投資再開を促すことを最重要視するのであれば、原油価格は思わぬ上昇圧力に晒される可能性もある。(2018/03/14執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年3月19日「私の相場観」

米利上げ予想でも堅調な金

米利上げ予想でも堅調な金
金利上昇よりドル安を重視

米金融政策の正常化圧力が強まるも、ドル建て金相場は高止まりしている。一般的に国際基軸通貨ドルに対する代替性が重視される金市場においては、米金融政策の引き締め圧力はネガティブに作用することになる。金融政策がドルの価値を高める方向に作用すれば、必然的に金を保有するメリットは低下することになり、値下り圧力が正当化されることになるためだ。しかし、今年は米長期金利が急激な上昇トレンドを形成する中にあっても、金相場は1オンス=1300~1350ドル水準をコアとした高値圏を維持しており、大幅な値下がりが回避されるのみならず、逆にコアレンジを切り上げている。金利上昇は無金利・無配当資産である金を保有することで機会損失を発生させることになるが、なぜ金市場からの資金流出は回避されているのだろうか。

年初からの金相場の高止まりを促しているのは、ドル安である。すなわち、米金融政策の正常化期待から米長期金利が急伸しているにもかかわらず、ドルが下落する一種の逆行現象が観測されていることが、ドル建て金相場を強力にサポートしているのである。通常は、米長期金利とドルの双方に対して金相場は逆相関関係にあるが、「米長期金利上昇→ドル高」の教科書的な流れが確認できないことが、金利上昇とドル建て金相場上昇の共存環境を作り出しているのである。

確かに米金融政策環境はドルにポジティブな環境にある。他通貨に対して金利面でのドルの優位性は着実に強化されており、現在のドル安傾向をミスプライシング(誤った価格形成)とみる向きも少なくない。ただ、為替市場では大型減税や歳出拡大に伴い米国のファイナンス環境の悪化、更には保護主義政策とドル安政策などアメリカ・ファーストの政策に対して強い警戒感があり、ドルは主要通貨に対して寧ろ値下がり傾向を強めている。

税制改革やインフラ投資といった動きは短期的に米経済を底上げすることになり、ドルに対してはポジティブな効果も大きい。ただ、マーケットでは必ずしも必要性の高い状況ではないにもかかわらず、国債消化における海外投資家への依存度を高める財政収支悪化、更には米国内景気減速やインフレを招きかねない保護主義政策に強い懸念を抱いており、非金融政策要因に基づくドル売りプレッシャーが観測されている。

さらに2月以降は不安定化する金融市場の動向も、金相場に対してポジティブに機能している。株式相場を中心にボラティリティが上昇傾向にある中、ヘッジやリスク分散の観点から金を購入する動きが広がりを見せ始めている。実際に金上場投資信託(ETF)は2月初めの株価急落局面では流動性確保の目的もあって売却されたが、その後は株価の上昇・下落局面にかかわらず、着実に投資残高を積み増している。今後も金利動向や米政策などによって不安定な金融市場環境が続く公算が高まる中、「安全資産」としての金は輝きを増している。金利上昇のネガティブな影響は、先送りされている。(2018/03/07執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年3月12日「私の相場観」

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

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