小菅努の商品アナリスト日記

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2018年01月

円高ショックが大きい天然ゴム

◎〔アナリストの目〕円高ショックが大きい天然ゴム=小菅努氏 

TOCOM商品市場では、円高の脅威が増している。国際商品市況は原油を筆頭に堅調に推移しており、CRB商品指数の年初からの上昇率は3.0%に達している。一方、同じ期間にドル円相場は3.7%の円高・ドル安となっており、円建て商品相場は上昇しづらい環境になっている。TOCOMゴム相場は最大で4.8%の下落率を記録しているが、単純計算で下落幅の77%が円高要因で説明が付き、残りの23%が上海ゴム相場の上値の重さや国内在庫の急増圧力によるものと分析できる。

1月23日の日本銀行金融政策決定会合では、大規模な金融緩和策の維持を決定し、黒田日銀総裁は緩和政策の出口を検討すべき局面ではないと明言している。しかし、マーケットは日銀の政策変更の可能性に敏感になっており、今後も円高に振れるケースが増えやすい状況になっている。ドルの利上げ着手局面を振り返ってみれば、実際の利上げに先行する1年半前からドル高圧力が発生していた。円相場もそれと同じパターンをたどるのであれば、今年の円建てゴム相場はマイルドな下押し圧力にさらされる場面が増える可能性を想定しておく必要がある。

一方、ゴムの需給要因は必ずしも重要視されていない。タイ、インドネシア、マレーシアの3カ国は3月末までに35万トンの輸出削減を行うことで合意している。合意の履行状況を不安視する向きもあったが、各国の報告内容を見る限りは、現時点ではかなり高い合意順守状況にあるもようだ。ゴム生産国の価格低迷に対する危機感は強く、4〜5月前後がピークになる減産シーズンに向けて供給制約は強化される方向に展開している。しかし、産地相場も含めて国際ゴム相場の反応は鈍く、需給動向そのものに対する関心の低さが再確認されるだけにとどまっている。逆に、国内在庫が昨年10月以降に倍増しているといったネガティブな動きも材料視されておらず、昨年と同様に上海ゴム市場における投機マネーの動向が最重要視されることになる。

その中国市場では年初から株価が急騰しており、コモディティー市場における投機マネーの流動性拡大も期待できる環境になっている。しかし実際には、むしろ「コモディティー→株式」への資金フローの方が優勢である。鉄鉱石や石炭相場などもパフォーマンスの低さが目立ち、上海ゴム相場のみが独歩高となるような環境にはない。本来は、国際通貨基金(IMF)が米税制改革の効果で主要国の成長見通しを軒並み引き上げている恩恵を受けやすい状況だが、突然に急伸した後に急落する場面も目立ち、今後も上海ゴム相場は1トン=1万4000元水準で方向性を打ち出しづらい状況にある。中国の各種政策引き締めがピークを脱したことで下値不安は後退するが、同国の17年新車販売台数は前年比3%増にとどまっており、生産地でよほどの大規模な供給障害が発生しない限りは、ボックス気味の展開が続く可能性が高そうだ。

昨年の東京ゴム相場の出来高は13年ぶりの低水準になったが、ゴム需要家にとっては好ましい安定した価格環境ながらも、投資家にとっては仕掛けづらい相場環境が続く可能性が高い。

※小菅 努(こすげ・つとむ)氏 マーケットエッジ代表 


(2018/01/29執筆)
(出所)時事通信社「アナリストの目」2018/01/30

原油60ドル台は時期尚早

原油60ドル台は時期尚早
まだ危うい需給正常化

サウジアラビアのファリハ・エネルギー相は、2019年以降も主要産油国の間で政策協調を行うことで合意していると発言した。現在の協調減産は18年末までが期限とされており、協調減産の「出口」を巡る議論も活発化しているが、その「出口」に長めの期間を設定することで、協調減産体制からの離脱をスムーズに行うことを意図したものである。今回の協調減産体制によって、国際原油需給・価格環境の安定化を目指す方針を強く示した格好になる。

一方で、サウジアラビアがこのような踏み込んだ発言を行っているのは、それだけ需給見通しの先行きがぜい弱であることの裏返しとも言える。17年は強力な需要拡大圧力と協調減産によって、世界の石油在庫に対しては強力な減少圧力が発生した。特に4~6月期以降は3四半期連続で在庫が減少しており、在庫余剰感は解消方向に向かっている。まだ目標とする在庫の5年平均回帰までは道半ばの状況だが、少なくとも協調減産体制は一定の成果を上げ、国際原油相場は14年12月以来の高値圏まで上昇している。WTI原油は65ドル水準、ブレント原油は70ドル水準まで値上がりしているのは、投機筋が原油需給環境の改善傾向を高く評価していることを明確に物語っている。

ただ、国際エネルギー機関(IEA)の推計では、18年は上期が若干の供給過剰、下期が若干の供給不足であり、年間を通じた需給バランスはほぼ均衡状態との見通しに留まっている。すなわち、現時点では昨年のような大規模な在庫取り崩しが想定されている訳ではない。もちろん、経済破綻状態に陥ったベネズエラ、武装勢力の動きが活発化しているリビア、対米関係が悪化しているイランなどの生産動向によっては、想定外の需給ひっ迫状態が発生する可能性も残されている。その際は、WTI原油ベースで70ドルや80ドルといった価格水準を正当化する余地もある。

ただ、そうした特殊な供給トラブルが発生しないのであれば、堅調な需要環境を考慮に入れても18年中に更に在庫の削減を進めることができるか否かは、ぎりぎりの判断を求められる状況にある。特に、シェールオイル、オイルサンド、深海油田などは原油価格動向に敏感であり、シェールオイルの場合だと数カ月といったタイムスパンで価格変動の影響が生産動向に反映されることになる。

そして、足元ではシェールオイルの生産高見通しを引き上げる動きが相次いでおり、このまま現行価格水準を維持してシェールオイル産業に刺激を与え続けると、18年通期の供給超過といったシナリオも浮上する余地がある。足元では寒波の影響もあって需要が強めに推移しているが、今後は需要の端境期に向かうことになり、そのタイミングでシェールオイル増産が加速するような事態になると、一気に短期需給は緩むことになる。WTI原油の60ドル台定着を進めるのは時期尚早とみている。(2018/01/24執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年1月29日「私の相場観」

トランプ米大統領1年目の金価格は10%上昇

2017年1月20日にドナルド・トランプ氏が第5代アメリカ合衆国大統領に就任してから1年が経過した。メディアでは米国内外に様々な「混乱」をもたらしているとの批判も目立つが、その間の金価格は総じて堅調に推移した。国際指標となるCOMEX金先物相場の場合だと、大統領就任当日の1オンス=1,204.90ドルに対して、今年1月22日時点(※20日と21日は週末)では1,331.90ドルとなっており、実に10.5%もの値上がりになっている。最安値は大統領就任直後の17年1月27日に付けた1,179.70ドルである一方、最高値は17年9月8日の1,362.40ドルとなっている。

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■トランプ政権下で金が買われた理由
トランプ大統領誕生前の時点では、経済政策に混乱が生じ、米経済は停滞するといった論調もあったが、振り返ってみれば米経済は良好だった。17年通期の国内総生産(GDP)は2.3%成長となり、16年の1.5%成長を上回っている。国際通貨基金(IMF)は「税制改革が経済活動を刺激する」ことが見込まれるとして、18年には更に2.7%までの成長加速を見込んでいる。株式市場に目を向ければ、ダウ工業平均株価は17年1月20日の1万9,827.25ドルから今年1月22日の2万6,214.60ドルまで、32.2%もの上昇率を記録している。トランプ政権下でダウ工業平均株価が下落した月は17年3月のみであり、それ以外の11カ月は全て上昇している。

一般的には「安全資産」の金が注目される余地はない状況とも言えたが、実際には金市場に対しては断続的に投機資金が流入する状況が作られた。皮肉にも株価の急騰が、金市場に対する投資ニーズを喚起したのである。ビジネスフレンドリーなトランプ政権の経済政策は、株式相場にバブル的な高騰をもたらした。この結果、投資家の観点からは株価高騰を歓迎しつつも、このままの状況が続くのか不安感も高まり、「万が一の事態」に対応するための保険として、金が購入されたのだ。これが顕著に表れたのが金上場投資信託(ETF)であり、トランプ大統領就任時の1,655トンに対して、1年後には1,746トンまで拡大している。株高局面において、株式の保有資産が増える動きと連動して、金保有量も拡大したのである。

そして、もう一つの要因がドル安だった。大統領選直後はトランプ大統領の拡張的な財政政策に対する期待・警戒感から米長期金利が急伸し、ドル高圧力が発生していた。しかし実際に大統領に就任した後のドルインデックスをみてみると、100.74ポイントから90.12ポイントまで10.5%下落している。1月に入ってから米政府の「強いドル」と「弱いドル」政策を巡る議論も活発化しているが、実績としてトランプ政権下のドルは弱含みに推移している。これがアメリカファースト政策の影響かは議論があるものの、米金融政策が緩和から正常化に向かう過程においても、国際基軸通貨であるドルが軟化したことが、代替通貨としての金に対する資金流入を促した。

そして最も金価格に対する刺激が大きかったのは、地政学リスクの高まりだった。シリア情勢なども注目されたが、トランプ政権1年目で金価格が最高値を付けたのは、米朝軍事衝突のリスクが高まった17年8~9月にかけて、米朝の間で批判合戦が繰り広げられ、北朝鮮が核実験を実施し(9月3日)、米原子力空母が朝鮮半島付近に展開された時だった。その後、北朝鮮情勢のリスクを積極的に織り込むような動きはみられなくなり、ボラティリティ指数(恐怖指数)は歴史的低水準に回帰したが、これもマーケットに漠然とした不安心理をもたらし、「安全資産」の金を保有する動きにつながった。すなわち、リスクを十分に織り込んでいないのではないかとの疑念が高まったのである。

■金を持ちたい漠然とした不安心理
ドル安に関しては必ずしもトランプ政権の影響とは言えず、マーケット環境全体でみればトランプ政権は投資家に歓迎される政策を矢継ぎ早に繰り出している。しかし、こうしたリスクオン環境でも金価格が上昇していることは、良好な実体経済環境や株高の恩恵を享受しつつも、漠然とした先行き不透明感を抱いている向きが多い証拠と言えるのかもしれない。

なお、東京商品取引所(TOCOM)の円建て金価格をみても1グラム=4,385円から4,734円まで、8.0%の上昇率が記録されている。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努】

(出所)トランプ米大統領1年目の金価格は10%上昇(Yahoo!ニュース)

米国の天然ガス価格が、年初から20%超の急騰

米国の天然ガス価格が高騰している。NYMEX天然ガス先物相場は1月22日の取引で1mmBtu=0.220ドル(6.8%)高の3.444ドルとなったが、これは1日の上昇率としては2016年10月以来で最大であり、価格水準としては16年12月30日以来の高値を更新している。23日の取引でも更に3%前後の上昇率が記録されており、冬の需要期に入った後も2.5~3.2ドル前後の価格水準で伸び悩んでいた相場が、3.5ドル台まで一気に価格水準を切り上げた格好になる。
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理由は単純であり、寒波による需要上振れ、それに伴う在庫タイト化リスクに対する警戒感が、天然ガス市場に対する投機マネー流入を加速させていることだ。今季は暖冬スタートになった結果、暖房用エネルギー需要に対する在庫手当には余裕があるとの評価から、昨年12月21日には2.568ドルまで値下がりしていた。しかし、日本にも強烈な寒波をもたらしている北極振動は米国でも東部地区を中心に急激な気温低下をもたらしており、暖房用エネルギー需要の上振れリスクを高めている。

その影響が顕在化した一つは原油相場の高騰であるが、ここにきて天然ガス市場でも需要の上振れから在庫の「余剰感」が「タイト感」に転換しつつあり、それがリスクプレミアムとして天然ガス相場に加算され始めている。

米エネルギー情報局(EIA)の週間統計によると、今季は昨年10月10日の週から米国内在庫の取り崩しが始まったが、全米の天然ガス在庫は10月3日時点の3兆7,900億立方フィートに対して、12月8日時点ではまだ3兆6,260億立方フィートまでの小幅減少に留まっていた。その時点での過去5年のレンジは(3兆3,320億~3兆8,610億立方フィート)であり、5年レンジ上限付近の在庫水準には、まだ一定の余裕がみられた。暖冬でそのまま需要の伸びが鈍ければ、春の需要の端境期に向けて必要以上の在庫を繰り越す可能性さえ想定されていた。

しかし、年末・年始の寒波と連動して在庫減少ペースは一気に加速しており、直近の1月12日時点では2兆5,840億立方フィートまで減少している。これは前年同期比12.5%減、5年平均比で12.3%減であり、一気に在庫水準のタイト感が強くなっている。

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日本で寒波が深刻化する一方、米国の寒波は緩み始めており、2月に向けてパニック的な高騰相場が続く可能性は低い。過去の傾向からみても、在庫タイト感が残されていても気温上昇傾向が強まれば、天然ガス相場は下押しされる傾向が強い。このため、急騰はしているものの短期上昇圧力との評価が基本になる。

ただ、投機筋はシーズン初めに暖冬予想から暖房用エネルギー需要期を売り越し状態で迎えた反動から、需要期終盤の寒波に慌ててショートカバー(買い戻し)を迫られると同時に新規買いポジションを構築する動きが、必要以上の値動きの荒さをもたらしている。昨年末からの上昇率は最大で22.8%にも達しているが、「暖冬→寒波」へと急激な気象環境の変化が、天然ガス相場に対してもパニック的な高騰を促している。急激な気温の変化は人の体調不良をもたらすことが多いが、天然ガス相場も突然の気温変化には大きなショックを受けることになる。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)米国の天然ガス価格が、年初から20%超の急騰(Yahoo!ニュース)

需給緩和で上値重い穀物

需給緩和で上値重い穀物
商品市況高の例外に

CBOTトウモロコシ先物相場は、1Bu=350セント水準で上値の重い展開になっている。新規手掛かりに乏しい相場環境だが、米国内外の需給緩和状態に対して根強い警戒感があり、戻り売り優勢の展開が続いている。1月12日には米農務省(USDA)が最新の需給報告を公表したが、米期末在庫見通しは前月の24.37億Buから24.77億Buまで引き上げられている。イールドが1エーカー当たりで175.4Buから176.6Buまで引き上げられており、豊作評価が一段と強くなっている影響が大きい。トレンドイールドの170.7Buからは3.5%の上振れであり、過去最高のイールド環境が実現している。しかも、ここにきて飼料需要見通しが小麦と同時に引き下げられており、供給過剰感に対する警戒感が改めて強くなっている。深刻な供給過剰状態に陥った前年度の期末在庫22.93億Buを大きく上回るのは確実な情勢であり、農家の売り渋りなどで自律反発的な動きがみられても、戻りは売られる展開が続いている。在庫率ベースでは2005/06年度以来の需給緩和状態であり、350セント水準に値ごろ感を見出すことは難しい。320セント水準を打診する可能性も想定しておきたい。

一方、大豆はアルゼンチンの干ばつ懸念が下値を支えているが、昨年12月前半の1000セント台に対して950~970セント水準までコアレンジを切り下げている。11月には深刻なホット・アンド・ドライ(高温乾燥)状態に陥ったことで、特にアルゼンチンに対する依存度の高い大豆ミール相場が高騰したが、12月にまとまった降雨が観測されたことで、不作に対する警戒感は後退している。

年明け後も乾燥予報が伝わると大豆相場は刺激を受ける傾向にあるが、11月にみられたように本格的にリスクプレミアムを加算していくような動きはみられない。USDA需給報告をみても、アルゼンチン産は前月から100万トン下方修正の5600万トンとなったが、ブラジル産は逆に200万トン上方修正の1億1000万トンとなっており、南米産全体では逆に増産圧力が強くなっている。

米国産の期末在庫も前月の4.45億Buから4.70億Buまで上方修正されている。大豆ミール輸出の拡大で圧砕需要は堅調だが、大豆輸出そのものは減速しており、豊作に伴う供給プレッシャーを吸収できない状況に変化はない。このまま南米産に大きな天候障害が発生しなければ、需給緩和評価が修正されることはないだろう。

このため、17/18年度需給要因で穀物相場がリバウンドするのは難しく、仮に大規模な反発があるとすれば18/19年度の需給要因になる可能性が高い。しかし、18/19年度の作付面積に関しては小麦の削減が優先される見通しであり、トウモロコシと大豆の大幅な面積削減は想定されていない。作付け期の天候相場が開始されるまでは、需給緩和を背景とした低迷相場が続く可能性が高い。

(2018/01/17執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年1月22日「私の相場観」

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

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