小菅努の商品アナリスト日記

金、プラチナ、原油、天然ゴム、農産物などのコモディティ市場を中心に、仮想通貨、為替、株価指数なども幅広くカバーしています。

金融機関、商社、事業法人、ベンダー様向けにマーケット分析情報の配信業務を行っています。コモディティ市場のレポート配信サービス(法人向け)、寄稿・講演のご依頼などは、下記E-Mailまでお問合せ下さい。

マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com

レアル安で加速するコーヒー安

レアル安で加速するコーヒー安
12年ぶりの安値を更新

焙煎用コーヒーなどに使用されるアラビカコーヒー相場が急落している。ICEコーヒー先物相場は、年初から5月にかけては1ポンド=120セント水準での取引が続いていたが、6月以降に下落ペースが加速し、8月にはついに100セントの節目も割り込む場面が観測されている。これは、実に2006年8月以来の安値更新であり、12年前の価格水準に回帰した格好になっている。

こうしたコーヒー相場急落の最大の要因は、ブラジル通貨レアル相場の急落である。米国の利上げサイクルが進む中、特に今年に入ってからは新興国通貨全体の下落傾向が目立つ状況になっているが、ここにきてレアルの下げ幅が際立って大きくなっているのだ。対ドルレートでみると、8月は29日時点で7月末から10.1%の急落相場になっている。

一般的に農産物の生産国通貨が下落すると、ドル建て換算した際の採算性が向上するため、供給量の増加圧力に直結することになる。アラビカコーヒーに関しては、世界全体の生産高の43.8%がブラジル一カ国で生産されている関係で、特にレアル相場の動向はコーヒー相場の動向に対して極めて大きな影響力を有している。そのレアル相場が対ドルで10%を超える急落となっていることは、ブラジルの農家にとっては売却収入が10%増加することを意味し、必然的に在庫売却圧力は強化されることになる。

特に足元ではブラジル産コーヒーが収穫期を迎えているため、世界各地に収穫済みの荷が出荷されるタイミングを迎えている。こうした中、レアル安はブラジルからの荷動きを必要以上に活発化させる可能性が高く、足元では余りに大量の荷が港湾に集まる中、出荷の遅れさえ報告される状況になっている。

すなわち、豊作環境でもともと需給緩和がイメージされ易かった相場が、レアル安の影響で下落ペースを加速させているのが現状である。では、なぜレアル相場は急落しているのか。一つがトルコリラ急落に象徴される新興国通貨の不安定化だが、ブラジル固有の材料として10月7日のブラジル大統領選に対する警戒感が指摘されている。汚職などで収監中のルラ元大統領が出馬に意欲を示しているが、世論調査では元大統領が高い支持率を得ている。実際にルラ元大統領の出馬が可能なのかは疑問もあるが、マーケットではブラジル世論が痛みを伴う改革ではなく、ポピュリズム性向の強い安易な財政拡張作にあることが強く警戒されている。

仮にこのままのペースでレアル安が続くと、コーヒー需給とは関係なく通貨要因のみで更に大きな値崩れを起こす可能性もある。9月には米国の追加利上げがほぼ確実視される中、レアル相場の下げ止まりが可能か否かが、コーヒー相場の行方を決定づけることになる。そして、これと同様の現象は砂糖相場でも観測されている。一部の国に生産が集中する農産物は、通貨環境によって急騰と急落双方のリスクを抱えることになる。
(2018/08/29執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年9月3日「私の相場観」

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com 
  

低迷するプラチナ相場

低迷するプラチナ相場
コスト割れで減産進むも

プラチナ相場の低迷が続いている。NYプラチナ先物相場は、今年1月の1オンス=1033.30ドルをピークに、8月には一時755.70ドルまで急落する展開になっている。米中貿易戦争、トルコリラ急落に象徴される新興国リスクが、工業用金属相場全体を下押ししていることが嫌気されている。更には、急激なドル高はドル建て金相場の急落を促がしており、プラチナ相場は銅や金相場と歩調を合わせる形で断続的に値位置を切り下げている。

800ドル前後の価格水準に対しては、さすがにオーバーシュート状態との批判の声も強い。貴金属調査会社GFMSによると、昨年の世界プラチナ生産コストは925ドル、南アフリカに至っては979ドルであり、完全なコスト割れの状態にあるためだ。

実際に、8月2日にはこれまで大規模なリストラ策に慎重姿勢を示していたインパラ・プラチナ(インプラッツ)が、2021年度までに採算性の低いシャフト閉鎖、1万3000人の従業員削減を発表するなど、大規模な経営再建策を発表している。もはや現在のプラチナ相場環境では経営を維持できないとして、年間生産ガイダンスを75万オンスから52万オンスに引き下げ、十分な採算が見込める鉱区に集中投資する方針になる。

既にアングロ・アメリカン・プラチナ(アムプラッツ)などは14年の段階で同様の決断を下していたが、これまで顧客への供給責任があるとしてリストラに慎重だったインプラッツでさえも生産規模縮小に踏み切ったことは、プラチナ相場が鉱山業界の限界ラインを大幅に下回っていることを再確認させるイベントになる。

しかし、マーケットはインプラッツのリストラ策発表に殆ど反応を示すことはなかった。その後は、労働組合が人員削減策に反発してストライキ決行の構えを見せているが、労使リスクの高まりも殆ど材料視されることはなかった。マーケットが、まだ価格低下による減産圧力がプラチナ相場安の反転を促すには不十分と評価していることが窺えよう。
2014年以降、プラチナ相場ではコスト割れの議論が何度も繰り返されているが、相場は一貫して下落し続けている。膨大な地上在庫が需給のバッファ(緩衝材)として機能する中、コスト割れで減産圧力が発生し、仮に需給バランスが供給不足方向に傾いても、需給タイト感が高まることは阻止され続けているためだ。

この問題は、14年に南アフリカで過去最大規模のストライキが発生し、鉱山供給がストップした際に、話題になった。マーケットでは15年には地上在庫の還流がピークを確認して、再びプラチナ相場は上昇に転じるとの見方が支配的だった。しかし現実には、未だにコスト割れに伴う減産、供給不足などが発生しても、プラチナ相場の底入れは先送りされ続けている。プラチナ相場反発のためには、断続的に供給不足を発生させ、地上在庫の還流システムの限界を確認することが求められている。
(2018/08/22執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年8月27日「私の相場観」

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com 
 

ラジオNIKKEI「マーケット・トレンド」(8月22日)

ラジオNIKKEI「マーケット・トレンド」(18:00~18:15)にゲスト出演しました。
イラン情勢の現状、見通しを中心に原油市況についてお話しました。

宜しければオンデマンド(※配信は放送から数日間のみです)でお聴き下さい。
8月22日(水)放映分になります。

De_mlrrU8AA6ImV














 【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com

コスト割れでも買えないプラチナの論理

◎〔アナリストの目〕コスト割れでも買えないプラチナの論理

内外のプラチナ相場が急落している。円建てでは2009年1月以来、ドル建てでは08年10月以来の安値を記録しており、世界同時金融危機という異常時に形成された価格水準が約10年ぶりに再現されている。

短期の視点であれば「通商リスクと新興国リスクに伴う非鉄金属相場の急落」と「ドル高に伴う金相場の急落」という二つのロジックでほぼ説明がつく。7月初めから8月17日までのドル建て相場の相関係数(マイナス1〜プラス1の間で相関を示す)を計算すると、金とプラチナがプラス0.85、銅とプラチナがプラス0.76、金と銅がプラス0.82となっている。すなわち現在の相場環境は、金とプラチナと銅がほぼ同じ価格トレンドを形成している状態にあり、必ずしもプラチナ相場の独自材料が材料視されて急落しているわけではない。

プラチナ相場の急落局面においては、生産コストの視点に基づく下げ過ぎや割安といった議論が活発化するのが恒例行事になっている。確かに、貴金属調査会社GFMSの推計だと、17年の世界のプラチナ生産コストは925ドル、南アフリカでは979ドルであり、800ドル台を割り込むような価格水準が許容できる余地はほとんど存在していない。しかし、コスト割れの議論は14年後半の急落局面から既に4年以上にわたって展開され続けているものであり、コスト割れでプラチナ相場が底入れするとの専門家の予想が外れるのは、もはや恒例行事になった感すらある。

この辺の議論については1)ディーゼル車市場に対する悲観的な報道2)電気自動車(EV)普及への警戒感3)パラジウム価格高騰に伴う減産対応の遅れ4)地上在庫の還流による需給タイト化圧力の抑制5)価格連動性の強い金相場のダウントレンド―など、幾つかのロジックが指摘されている。いずれも重要な論点になるが、供給不足状態がつくり出されても相場が全く反応しないことから「地上在庫の存在」と「金相場急落」の二つが特に重要だと考えられる。

14年に南アフリカでは過去最大規模のストライキが発生したが、それがなぜプラチナ相場の急伸を促さなかったのかは、地上在庫の存在でほぼ理解されている。すなわち、鉱山部門からの供給が大幅に縮小したことで、地上在庫がバッファ(緩衝材)としての役割を果たしたのだ。マーケットでは、早ければ15年中にも地上在庫の還流は鈍化し、プラチナ相場は上昇に転じるとの予想も有力だったが、その後の展開を見る限りは、マーケットの想定を大きく上回る地上在庫の存在が確実視される。

では一体どれだけの地上在庫が存在するのか。それは各種調査によって数値が大きく異なる。このため、当面は供給不足状態で地上在庫の圧縮を進め、供給不足が素直にプラチナ相場を押し上げる相場環境への移行を打診する局面が続くことになろう。その意味では、インパラ・プラチナが8月2日に大規模なリストラ策を発表したことは、プラチナ相場の底入れ時期を加速させる可能性がある。ただ、マーケットの反応を見る限りは、プラチナ相場の底入れのためには、さらに同様の動きを繰り返していく必要がありそうだ。

◇瞬間的に700ドル台割れも

需給以外の視点で重要なのが金相場の動向である。金相場とプラチナ相場との間には、短期と中長期どちらにも強い連動性が認められており、金価格の底入れが確認できるまでは、プラチナ相場は下値不安を抱え続けることになる。

現行価格が割安であることは間違いない。実際に7月以降はプラチナ上場投資信託(ETF)購入の動きが報告されており、長期マネーがプラチナ市場に流入している可能性がある。定期市場では、実需筋が買いポジションの拡大と売りポジションの縮小を進めていることも重要である。また、通商リスクや新興国リスクの軽減が実現すれば、非鉄金属や金相場と連動して自律反発的な動きが実現する可能性もあろう。ただ、プラチナ相場安の本質は膨大な地上在庫の存在と金相場低迷の二つにあり、これらの問題が解決されるまではコスト割れでも底打ちは先送りされることになる。

必ずしも既にコスト割れが決定的になった現行価格から、さらに大きく値下がりする必要はないが、安値低迷状態を維持することは必要不可欠であり、その過程において瞬間的に700ドル台を割り込むような展開は想定しておきたい。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(2018/08/20執筆)
(出所)時事通信社「アナリストの目」2018/08/21

イラン経済制裁がスタート

イラン経済制裁がスタート
原油価格は再び高騰する

NY原油相場は7月3日に一時75.27ドルまで上昇するも、7月下旬以降は60ドル台中盤から後半をコアとしたボックス相場に留まっている。依然として高値圏での取引ではあるが、急伸地合は一服しており、概ね6月下旬の価格水準に回帰している。

背景にあるのは、1)リビアなど短期供給トラブルの解消、2)石油輸出国機構(OPEC)やロシアの増産対応、3)通商リスクと新興国リスクに伴う需要減退懸念などを受けて、国際原油需給のひっ迫化に対する警戒感が後退していることである。これまで積極的に買い進んできた投機筋が利益確定に動いており急騰相場に対する反動圧力が強くなっている。
 マーケットの関心は、これで原油相場がピークアウトしたか否かであるが、まだ上昇リスクを残した相場とみるべきだろう。象徴的だったのが、国際エネルギー機関(IEA)が公表した8月月報であり、そこでは今後の国際原油需給について現在よりも安定性を大きく損なった状態になるとの警戒感が示されている。すなわち、現状は一時的な需給バランスの鎮静化状態に過ぎず、今後は改めてタイトな需給環境に回帰するとの見方になる。

マーケットで最も注目されているのが、イラン情勢である。8月7日に米政府によるイラン経済制裁の一部が再開され、11月5日には原油・石油製品の生産・輸送・決済などの幅広い分野にも経済制裁が行われることが予定されている。イラン産原油供給がどの程度まで落ち込むのかは議論が割れているが、マーケットでは日量100万バレル規模の供給減少リスクまで想定されている。一方で、OPECやロシアなどの増産余力は限られており、現行価格水準ではシェールオイルの増産ペースが加速することもない。これから需給バランスの帳尻をどのように合わせるのか、ぎりぎりの調整が行われる状況が続く中、原油相場は大きな上振れリスクを抱えている。

仮に米国の経済制裁が想定以上の効果を発揮し、イラン経済が崩壊状態に近づくと、イランはホルムズ海峡封鎖といった強硬姿勢に打って出る可能性がある。ホルムズ海峡は日量1900万バレルの原油・石油製品が通過するいわゆる「チョーク・ポイント」であり、ホルムズ海峡封鎖を現時点で前提にする必要はないものの、必ずしも無視できないリスクとしては認識しておく必要がある。

単純に米原油在庫とNY原油相場との相関から考えても、4億バレルの大台割れ目前に迫った現在の在庫水準からは、70~75ドル水準の原油価格は十分に正当化できる。60ドル台後半の値位置は束の間の休息状態で実現した割安な価格水準であり、改めて需給タイト化圧力を背景に70ドル台確立に向かう方向性でみておきたい。一気に80ドル台にトライする環境にもないが、冬の需要期まで60ドル台後半で低迷状態が続く可能性は低いとみている。現行価格水準での物色妙味は大きい。
(2018/08/15執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年8月20日「私の相場観」

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com 
 
記事検索
 
amazon.co.jp
QRコード
QRコード
プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

【URL】
マーケットエッジ株式会社

【E-mail】
kosuge.tsutomu@outlook.com

【SNS】
Twitter

【連絡先】
E-mailでお願い致します。相場動向に関する質問への個別対応は行っていませんのでご了承下さい。
小菅努のコモディティ分析
小菅努のコモディティ分析 ~商品アナリストが読み解く「資源時代」

会員制の有料メルマガです。コモディティの基礎知識から専門的な分析まで提供しています。1,944円/月、週2回以上の発行です。

詳細や購読のお申し込み方法は
http://foomii.com/00025
をご覧下さい。
アナリストの視点
Yahoo!ニュース コモディティアナリストの視点

Yahoo!ニュースに不定期で寄稿しています。

過去のレポートはこちら をご覧下さい。
sponsored link
Twitter
sponsored link