小菅努の商品アナリスト日記

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急騰から急落に一変した原油

急騰から急落に一変した原油
OPEC総会に向けて動くか?

9月までと10月以降とで、国際原油市場を取り巻く景色は一変した。米政府のイラン産原油に対する制裁方針を受けて、5月以降の原油市場ではイラン産原油の供給が落ち込んだ分を他産油国でカバーすることは可能か否かが、中心テーマとなっていた。イラン産原油の供給が日量100万バレル規模で喪失された際に、石油輸出国機構(OPEC)やロシアが十分な増産対応を行えるのか、不確実性に対する警戒感が原油相場の急伸を促していた。

しかし、9月以降はサウジとロシアを筆頭に大規模な増産対応が行われた結果、国際原油需給バランスは安定化し、逆に供給過剰が警戒される状況に変わっている。即ち、増産対応の行き過ぎが原油相場の急落を促がしている。5月と10月の産油量を比較してみると、イラン産原油の供給は日量53万バレル減少している。一方、サウジ産原油の供給は73万バレル増加しており、過剰対応が行われているのは明らかである。OPEC全体の産油量が増加トレンドを形成していることは、産油国がマーケットの警告を素直に受け止めて行動した証拠と言え、イラン産原油の脅威に立ち向かうという「ミッション」は一応の完結を見たと評価できる。

一方で、10月以降の原油相場急落は、産油国に対して逆に減産対応が必要とのメッセージを送っている。11月11日に開催された減産監視閣僚委員会(JMMC)では、サウジアラビアなどが日量100万バレルの減産対応を主張し、OPEC各国からは支持を得られたと報告されている。一方で、ロシアは来年半ばには需給が均衡化し、改めて供給不足化になるとの見通しから、減産対応は不要との立場を崩していない。また、トランプ米大統領は原油相場が1バレル=60ドルを割り込んだ状態でも、OPECに対して減産を行わないようにけん制する発言を行っている。

原油相場が急落しているのは間違いのない事実だが、多くの不確実性から産油国はどのような対応を行うべきなのか、コンセンサス形成に手間取っている。OPECの最新の推計によると、2019年のOPEC産原油に対する需要は今年から100万バレル程度減少する見通しでだが、今後のイランやベネズエラ、更にはリビア、ナイジェリアなどの生産動向によっては、今後の需給見通しが一変する可能性も抱えている。

12月6日にはOPEC総会を控えており、そこでOPECやロシアなどは2019年も協調体制を維持するのか、維持するとすればどのような形にするのかを合意する必要がある。このまま過剰供給懸念への対応を見送り続ければ50ドル割れのリスクもある一方、OPEC-ロシアのラインで需給・価格管理を継続する方針を示せば、原油安には終止符が打たれ、過熱感解消の形でリバウンド局面に移行する。OPEC総会まで残された時間は多くなく、荒れた相場展開が続くことになる。

(2018/11/14執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年11月19日「私の相場観」

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原油価格急落でも減産を拒否するロシアが考えていること

原油価格急落でも減産を拒否するロシアが考えていること

国際原油価格が急落する中、マーケットの焦点は産油国が一致して減産対応を見せることができるか否かになっている。

国際エネルギー機関(IEA)は、最近の増産によってイラン産原油の供給減少に対応するための「ミッションは終わった」と総括し、仮に石油輸出国機構(OPEC)の産油量が現行水準を維持した場合、2019年は需要期も含めた年間を通じて供給過剰になるとの見方を示したている。

また、OPECの月例報告でも2019年には需要が日量129万バレル増加するものの、非OPECの供給量が223万バレル増加する結果、OPEC産原油に対する需要は18年の3,259万バレルから19年には3,154万バレルまで105万バレル減少するとの強い危機感を示している。10月時点のOPEC産油量は3,290万バレルであり、仮にこのままOPECが何も行動を起こさなければ、19年は136万バレルの供給過剰状態に陥るとの見通しになる。

世界の石油在庫は急速に減少しているとは言え、14年の原油相場急落前と比較すると依然として高水準である。経済協力開発機構(OECD)加盟国の商業在庫をみても、原油価格急落前が26億~27億バレル程度だったのが、足元では28億~29億ドル水準になっている。大規模な供給不足状態を作り出す必要性は薄れているが、まだ原油需給リバランスのプロセスが完結したとまでは言えない。

このため、OPECやロシアなどが展開している協調減産の監視委員会(JMMC)では、サウジアラビアが日量100万バレルの減産を提案したことが明らかにされている。また、140万バレルの減産案が協議されたとの報道もある。OPECの想定しているOPEC産原油への需要が約100万バレル減少すること、想定される過剰供給幅が約140万バレルであることを考慮すれば、こうした数値の提案に違和感はない。

実際に、OPEC加盟国はこの提案に対してほぼ支持を表明しており、具体的の減産幅について詰めの協議はあるものの、過剰供給化に対して何らかの政策対応が必要という点では、コンセンサス形成が進んでいる。

このため、OPECやロシアが2019年も原油需給管理に責任を負うスタンスを明確化すれば、原油相場が値崩れを起こす必要性は乏しく、原油価格の急反転といった展開も想定できる。しかし実際には、ロシアが明確に減産対応を否定しているため、OPEC加盟国と非加盟国が結束して過剰供給化を阻止する方向性を打ち出せず、原油価格は下げ一服となったものの安値修正を進められない状態に陥っている。

なぜ、ロシアは原油安のリスクを高めている過剰供給見通しに対して、減産対応を拒否しているのだろうか。

■ロシアが過剰供給でも減産しない理由

ロシアのノバク・エネルギー相は、JMMCでの協議から減産議論が活発化していることに対して、ロシアは減産の必要がないと考えていると明言している。ロシアのプーチン大統領も15日、OPECとの協力は「明らかに必要だ」としつつも、記者からの減産対応の有無についての質問に対しては明言を避けた。ロシア系メディアからは、複数の政府高官が減産対応の可能性を否定しているとの報道が行われている。

理由1)

ノバク・エネルギー相は、確かに来年上期に向けては季節要因の影響で供給が過剰化する可能性があるものの、年中盤には均衡化し、逆に供給不足状態に陥る可能性があることを理由として掲げている。すなわち、供給過剰のリスクをOPECと共有していないのだ。これが現時点での公式見解である。

理由2)

財政環境の改善が進んでいる影響も大きいだろう。2017年にロシアがOPECとの協調減産に踏み切った背景には、原油収入の落ち込みで財政環境が悪化し、通貨ルーブルが急落する中、経済破綻の可能性さえ警戒された危機感があった。ウクライナ情勢を巡って欧米諸国との対立も深まる中、中東戦略へのコミット強化の流れもあってOPECとの協調に踏み切った。

しかし、ロシアの国家予算で想定されているウラル産原油は1バレル=40ドル程度であり、急落したとは言っても現在の65ドル水準であれば、必ずしも危機感は高まらない。中東との比較では、財政面での原油高要求圧力が低下しており、これ以上の原油高を必ずしも必要としていない。

実際にプーチン大統領は「現在と最近の70ドル前後の状態は、我々にとってパーフェクトだ」として、問題視していないことを明らかにしている。

理由3)

ロシア産原油に対する引き合いの強さがあり、需要減退による供給削減ニーズが高まっていないことがある。11月から米政府のイラン産原油に対する制裁が再開されたが、イラン産原油とロシア産ウラル原油と油種の面で近似性があり、イラン産原油の代替需要はウラル原油の需要を高める傾向にある。実際、足元では過剰供給が指摘されているが、アジア向けを中心にウラル原油に対するプレミアムは寧ろ上昇傾向にあり、旺盛な需要に対して供給を増やすとのロシアの戦略には合理性がある。

理由4)

また、ここにきて見え隠れしているのが米国との関係である。中間選挙で民主党が過半数を獲得した米議会では、トランプ米大統領とロシアとの不正な関係性を巡る追及が活発化しているが、11月11日にフランスで開催された第一次世界大戦終結百年に合わせて、プーチン大統領とトランプ大統領が会談を行ったことが明らかになっている。

プーチン大統領は15日、その場で「世界の石油市場」についても協議を行ったことが明らかにされている。具体的な内容は明らかにされていないが、その直後にトランプ大統領はTwitterで「サウジアラビアや石油輸出国機構(OPEC)が減産しないことを望む。供給に基づけば、石油価格はもっと下落するはずだ!」と投稿している(参考:原油相場急落でも、トランプ大統領が産油国の減産議論をけん制する理由)。

プーチン大統領からは何を話し合ったのかは明らかにされていないが、トランプ大統領側からは改めて原油価格の高騰を招くような政策を取らないように要請があったことは間違いなく、ロシアが米国との関係性の視点から政策調整を渋っている可能性がある。

理由5)

ロシアとしては、原油価格の過度の下落は望まない一方、過度の上昇は望んでいないこともある。ロシア国内では、2010年代前半の原油価格高騰が過剰投資を呼び込み、シェールオイルなどタイトオイル増産を急増させた経験の再現を警戒する声が強い。また、過度な原油高は再生可能燃料など代替エネルギー開発を加速させる可能性もあり、もちろん原油価格は歳入面では高い方が好ましいが、長期視点では既に十分な価格水準と評価している模様だ。

■今後は?

ロシアが産油政策の軸足をOPECとの協調に置いている以上、減産対応を求めるOPECの声を完全に無視することはできない。特に近年はサウジアラビアとの首脳会談などトップ外交で一気に減産対応を決めることが増えており、11月30日~12月1日の20カ国・地域(G20)首脳会合などに合わせて、何らかの意見交換が行われ、新たな動きが出てくる可能性はある。

ただ、ロシア単独の視点であれば更に5~10ドル程度の原油安は許容範囲となっている可能性が高く、12月5日のOPEC総会、加盟国・非加盟国との会合に向けて、まだロシアの減産合意を取り付けることができるのか不確実性が大きい。仮にロシアが減産対応を拒否し続ければ、OPECのみで減産対応を強化する可能性は低く、原油価格の低迷状態は長引くことになる。OPEC総会までにロシアが減産対応を決断するか否か、これが当面の原油価格動向を決定づけるだけに、現在は極めて重要な時間帯になる。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)原油価格急落でも減産を拒否するロシアが考えていること(Yahoo!ニュース)

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金とプラチナとパラジウム、どれが一番高い?

金とプラチナとパラジウム、どれが一番高い?

もし、貴金属の「金」、「銀」、「プラチナ」、「パラジウム」のいずれかを1キログラム(kg)貰えるとしたら、どれを選ぶべきだろうか。

かつては、プラチナを選ぶのが正解だった。金よりも希少性が高く、歴史的にこの4種類の貴金属の中では最も高額だったためだ。しかし、近年はプラチナ価格が低迷している結果、現時点では金を選ぶのが正解になっている。11月15日の東京商品取引所(TOCOM)の期先価格をみてみると、1グラム当たりで金が4,409円に対して、プラチナは3,036円となっており、1kgだと金の440.9万円とプラチナの303.6万円との間には137.3万円もの差が存在している。

ちなみに、最も選んではいけないのが銀であり、1グラム当たりで51.6円となっている。1kgでも5.2万円であり、若者向けの宝飾品でも多用できる価格水準であることが確認できる。

一方、パラジウムとなるとその値段が他の貴金属と比べて割高か割安かを言える人はあまり居ないだろう。身近な所では歯科治療の詰め物、宝飾品などにも使用されているが、主な消費先は自動車などの触媒用であり、一般の人が金やプラチナの地金やコインを購入することはあっても、パラジウムの地金やコインを購入したことがある人は少ないだろう。

市場規模としては、2017年実績で年間需要が1,015万オンス(1オンス=31.1グラム)とプラチナの782万オンスを大きく上回っているが、街中の貴金属買い取り商でも金とプラチナの価格は提示しても、パラジウムの価格を提示している所は殆どなく、パラジウムの宝飾品を持っている人も意識していないことの方が多いかもしれない。

しかし、このパラジウム価格が今急騰しているのだ。1グラム当たりだと3,788円となっており、既にプラチナ価格を大きく上回っている。今や金価格との価格差も急速に縮小しており、「4つの貴金属で最も高額なのがパラジウム」という時代が近づきつつある。

冒頭の問い掛けであれば、現時点では金を選択するのが正解である。しかし、ドル高の影響で金価格の低迷状態が続く一方、パラジウム価格の高騰が続く中、もしかしたら2019年中にもパラジウムを選択するのが正解になりそうな状況になっている。

1






















■供給不足が深刻化しているパラジウム
円相場の影響を受けないNYパラジウム先物相場でみると、11月15日の取引で過去最高値を更新している。米中貿易戦争の影響もあって8月16日には1オンス=815.20ドルまで値下がりしていたのが、11月15日には一時1,161.50ドルまで値上がりしている。

背景にあるのは、需給ひっ迫化に対する極めて高いレベルの警戒感である。世界的に自動車排ガス規制の強化が進み、しかもディーゼル車の不正問題でプラチナよりパラジウムへの依存度の高いガソリン車のシェアが回復する中、パラジウムの需要は急増している。今年は1,029.7万オンスが予想されているが、これは5年前の2013年の908.9万オンスと比較すると13.3%の急増である。

一方、その間に鉱山生産は646.8万オンスから665.3万オンスまで2.9%しか増加していない。スクラップ供給が増えているため、総供給量だと823.8万オンスから896.9万オンスまで8.9%増加しているが、需要の伸びに対応しきれていない。もはや供給不足状態が当たり前の状態になっている。

本来であれば大規模な増産を進めるべきだが、パラジウムと同時に産出されるプラチナや非鉄金属相場などの低迷もあって、パラジウム相場が高騰してもなかなか増産圧力が強まらない。一方、世界経済の成長と連動して需要は着実に伸びており、来年、再来年と供給不足の量は逆に拡大する見通しになっている。

しかも、近年は米国とロシアとの関係悪化でロシアからの供給が大きく落ち込む可能性まで警戒されており、パラジウムの現物調達が難しくなっている。米国がロシアに対する制裁をちらつかせただけでアルミとパラジウムが急騰した例もある。

少し専門的な話をすると、NYMEXパラジウム先物相場だと、2018年11月渡しが1,154.00ドルに対して、約1年先の来年12月渡しは1,095.10ドルとなっている。通常だと、将来に渡されるものの方が、それまでの間の保管コストなどが加算されるために割高になるが、現在は在庫保管コストなどが必要ない直近の受け渡しの方が割高になっているのである。専門用語でこれを逆サヤと言うが、足元の供給不足が深刻化した際に発生する現象である。10月初めまで原油価格が高騰していた際にも、これと同様の逆サヤが形成されていた。

需要は伸びているものの、供給対応の目途が立たない状態に陥っているのがパラジウムであり、このままの状態が続くと貴金属で一番高価なのはパラジウムという状態が実現しそうだ。冒頭の無料で貴金属を貰えるようなシチュエーションは想定しづらいが、もしそのような機会があれば金でもプラチナでもなく、パラジウムを選ぶのが、もしかしたら現時点でも正解かもしれない。

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(出所)金とプラチナとパラジウム、どれが一番高い?(Yahoo!ニュース)

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原油相場急落でも、トランプ大統領が産油国の減産議論をけん制する理由

原油相場急落でも、トランプ大統領が産油国の減産議論をけん制する理由

トランプ米大統領は11月12日、自身のツイッター上で「サウジアラビアや石油輸出国機構(OPEC)が減産しないことを望む。供給に基づけば、石油価格はもっと下落するはずだ!」と投稿した。国際原油相場の急落が続く中、一部産油国の間で減産対応を巡る議論が活発化していることをけん制する動きである。




11日には減産監視閣僚委員会(JMMC)で供給過剰化するリスクについて協議が行われ、サウジは日量100万バレルの追加減産を提案したことを明らかにしている。ロシアが反発しているために(参考:供給過剰を警戒するサウジ、供給不足を警戒するロシア)、12月6日のOPEC総会までに追加減産で合意できるのかは不透明感が残されているが、サウジは単独でも12月に日量50万バレル規模の供給削減を行う方針を示していた。こうした中、トランプ大統領が改めて原油価格の引き下げに向けてプレッシャーを強めた格好になっている。

NYMEX原油先物相場は、10月3日の1バレル=76.90ドルをピークに、足元では60ドル台を割り込み、2月14日以来となる約9カ月ぶりの安値を更新している。この状況に産油国は危機感を強め始めているが、トランプ大統領はまだ原油価格は高過ぎると認識していることが露呈し、減産議論に水が差されるリスクが原油相場を更に押し下げている。

トランプ大統領は今年に入ってからガソリン高(=原油高)を強く批判しており、これは11月6日の米中間選挙を意識した動きとみられていた。しかし、中間選挙を終えても原油高批判は止まることはなく、産油国に対して更なる原油安の受け入れを要求したと言える。

米政府は11月5日にイラン産原油に対する制裁を開始したが、それと同時に中国やインド、韓国、日本などに最大180日間の猶予措置を導入し、原油価格に過度の影響を及ぼさないための配慮を見せていた。その流れからは、産油国に対して減産対応を行わないように要請するのは論理的に間違ったことではないが、「供給に基づけば、石油価格はもっと下落するはずだ!」との発言は、60ドルという価格水準にさえ、トランプ大統領が不満を有していることが示唆されている。

従来と比較すると、今回のツイッターの投稿内容は、厳しいトーンとは言えない。例えば、9月20日(原油価格は70.32ドル)には「独占OPECは今すぐ(原油)価格を下げろ!」と脅しとも言えるような強い批判を行っていた。今回の「望む」との投稿は、かなり柔らかいトーンとなっている。

ただ、中間選挙を終えてトランプ大統領の関心が2年後の大統領再選に移行する中、景気制約要因になり得る原油高に対しては、今後も厳しい対応を行う可能性が高いと言えそうだ。トランプ大統領は米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ政策にも不満を示しているが、大統領選を安定した経済環境で迎えるために、「金利上昇」と同様に「原油高」も実現を阻止すべき政策テーマになっている可能性が高い。

現実問題として、産油国もトランプ大統領の意向に完全に従う必要はないものの、容易に減産対応を行うことが難しくなったのは間違いないだろう。特に、サウジは反政府ジャーナリストの殺害問題で米国との関係悪化リスクを抱える中、「国際原油市場が過剰供給化するリスク」と「トランプ大統領の減産中止圧力」との間で、難しい判断を迫られることになる。

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供給過剰を警戒するサウジ、供給不足を警戒するロシア

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国際原油価格は、10月29日から11月9日まで10営業日連続で下落する異例の相場展開になっていたが、週明けの取引では短期底入れを打診する動きを見せている。週末11日に産油国の会合が開催されたが、供給過剰化を阻止するための減産対応に向けて前向きな動きが報告されているためだ。

NYMEX原油先物相場は10月3日に2014年11月以来の高値更新となる1バレル=76.90ドルまで上昇していたが、11月9日には60ドルの節目を割り込む展開になっていた。原油高に危機感を強めたサウジアラビアやロシアの過剰増産によって、国際原油需給が逆に「供給過剰化しているのではないか?」との危機感が強まった結果である。

今春以降の原油相場では、米政府のイラン産原油に対する制裁が11月5日に再開されるのを前に、いかにしてイラン産原油の代替供給を確保するのかが大きなテーマになっていた。サウジアラビアやロシアは増産対応能力を有していたが、無理な増産は今後の供給障害に対応するための増産余力の喪失を意味するため、増産を見送れば国際需給が引き締まる一方、増産を行えば増産余力の縮小で原油市場が不安定化するリスクが警戒されていた。

こうした中、米国からの強力な増産要請もあってサウジやロシアは増産政策に舵を切っていたが、原油高に危機感を抱いて必要以上の増産対応を行った結果、供給「不足」に対する警戒感は供給「過剰」に対する警戒感に一変していた。米政府がイラン産原油に対する制裁に猶予措置を導入したこと、世界経済の減速懸念なども、原油価格の下げをエスカレートさせていた。

しかし、改めて供給過剰が原油価格を本格的に下押しするような展開は産油国の財政環境からも許容できるものではなく、産油国は一気に減産の可能性を打診する方向性に動いている。現在、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどは協調減産政策を展開しているが、改めて減産体制を維持・強化することで、在庫積み増しの再開を阻止する必要性について議論を開始している。

特に積極的な対応を見せているのがサウジであり、ファリハ・エネルギー鉱物資源相からは、11日の減産監視閣僚委員会(JMMC)で10月比で2019年の産油量を日量100万バレル引き下げる提案を行い、OPEC加盟国と非加盟国から支持を得られたことが明らかにされている。12月6日には石油輸出国機構(OPEC)総会が予定されているが、そこに向けて19年もOPEC加盟国・非加盟国が原油需給バランスの安定化に責任を持つスタンスを明確化すれば、原油価格値下りの必要性は薄れることになる。

問題は、非OPECの盟主ともいえるロシアが、必ずしも協調減産体制の強化に前向きではないことだ。ロシアのノバク・エネルギー相は、足元では季節要因から需給が緩和しているが、来年半ばまでには再び供給不足化する可能性が高いとして、追加減産対応に懐疑的な見方を示している。すなわち、OPECとロシアとの間で、原油需給見通しが異なり、その結果として減産対応強化の必要性について合意形成ができていないのだ。

OPECは減産体制の強化に前向きではあるが、あくまでもロシアとの協調を前提条件にしている。OPECが減産してもロシアが増産すれば、OPECからロシアに原油売却収入を譲渡するだけの結果に終わってしまうためだ。

12月6日のOPEC総会では19年の国際原油需給に対して、OPECやロシアはどのように関与していくのかを明らかにする必要があるものの、残された時間は多くない。UEAで11月12~15日に開催される展示会ADIPECに合わせて再協議が予定されているが、12月5日にはJMMCが再度開催される予定であり、そこでOPEC総会でどのような合意を行うのか、決断を下す必要がある。OPECとロシアの需給認識の違いを調整できるかが、原油価格の行方を決定づけることになる。

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

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