小菅努の商品アナリスト日記

金、プラチナ、原油、天然ゴム、農産物などのコモディティ市場を中心に、仮想通貨、為替、株価指数なども幅広くカバーしています。

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プラチナ労組はスト警告、国有化は無理でしょう

南アフリカ鉱山労働者・建設組合(AMCU)は、インパラ・プラチナ(インプラッツ)のリストラ策(参考:インプラッツが戦略見直しへ、プラチナ安にギブアップ)発表を受けて、ストライキの可能性を警告しました。

インプラッツは、プラチナ相場の低迷状態に対応するため、採算性の低いシャフトを中心に閉鎖を進め、コストラインを大幅に引き下げることで生き残りを目指す方針を打ち出しています。2021年度までに従業員は4万人から2万7,000人まで削減される計画ですが、さっそくAMCUが異議を唱えた格好です。



AMCU代表は、雇用を維持するためにインプラッツが閉鎖するシャフトの国有化案なども提示していますが、調整に失敗した場合にはストを行うと明言しています。この辺の発言からは、インプラッツのリストラ阻止は困難であり、政府支援を求めるのが労働者にとってベストと考えていることが窺えますが、必ずしも収益性の良好とは言えないプラチナ産業の、しかもリストラ対象の鉱区引き受けは現実的ではないでしょう。

2014年の大規模な労働争議で、プラチナ鉱山業界は多くの雇用を失いました。行き過ぎた待遇改善要求が、プラチナ鉱山経営者に雇用リスクを認識させてしまった結果です。その後、その反省からか大規模な労働争議は回避されていましたが、1万3,000人の雇用喪失リスクが浮上する中、労働組合は難しい対応を迫られることになります。プラチナ価格の数少ない上昇リスクとして注意が要求されます。

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(画像出所)SABC NEWS

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グローバルな熱波で小麦高

グローバルな熱波で小麦高
地球温暖化の影響だと深刻

長引く熱波が北半球の大部分を覆う中、世界各地で山火事や干ばつ、豪雨などの天候被害が広がりを見せている。世界気象機関(WMO)は、今夏に記録的な高温や熱波が観測されているが、今後も暫くは同じ傾向が続くとの見通しを示している。

なぜ今夏が記録的な高温・熱波に晒されているのかは気象専門家でさえも把握しきれておらず、「地球温暖化が影響しているらしい」という漠然とした評価に留まっている。ただ、高温・熱波の影響は当然に農産物生産にも大きな被害をもたらすことになり、シカゴ穀物市場では特に小麦相場の上昇が目立つ状況になっている。CBOT小麦先物相場は、6月下旬から7月初めにかけて1Bu=470~510セント水準で揉み合う展開になっていたが、7月末から8月初めにかけては550セントの節目も突破している。欧州から旧ソ連諸国にかけて記録的な熱波が観測される中、同地区の生産量が下振れすることで、米国産小麦に代替需要が発生するとの思惑が広がっている。

米農務省(USDA)は7月需給報告の段階で、既にロシアやウクライナ、欧州連合(EU)などの小麦生産高見通しを大きく引き下げていた。世界の小麦生産高見通しは6月報告の7億4469万トンに対して7億3626万トンと僅か1カ月で1.1%下方修正され、前年度の7億5792万トンからは2.9%の減産が見込まれている。ただ、その後も欧州や旧ソ連諸国では殆ど降雨が観測されない状況が続いており、8月10日に報告されると次回需給報告では、生産高見通しをもう一段階引き下げるのは必至とみられている。

米国産小麦の期末在庫は、2013/14年度の5.90億Buをボトムに、16/17年度には11.81億Buまで急増していた。しかし、17/18年度は11.00億Bu、18/19年度は9.85億Buまでの減少が見込まれているが、このまま欧州から米国産への需要シフトが進めば、在庫にタイト感が浮上する可能性さえ浮上することになる。

 ここ数年、世界の小麦需給は潤沢な供給量を背景に緩和傾向を強めていた。多少の天候不順があっても高イールド環境に変化はなく、寧ろ生産トラブルによって多少の減産圧力が発生した方が、小麦需給の正常化には好ましいとみられていた。しかし、未曾有の熱波がグローバルな規模で発生する中、「世界で同時に発生する不作」というこれまでに経験したことのない事態に直面している。

 これが今年に限定された動きであれば、それほど深刻な問題にはならない。世界各地で頻発する天候不順が、たまたま一つの年に集中しただけとの評価に留まるためだ。しかし、仮に地球温暖化による気象環境の不安定化という大きな相場テーマが存在している場合には、小麦相場の性質がこれまでとは大きく異なるものになる可能性がある。なぜグローバルな熱波が発生しているのか分からい不気味さが、穀物相場を不安定化させている。
(2018/08/01執筆)

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(出所)中部経済新聞2018年8月6日「私の相場観」

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価格低下でも実需が増えない金

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価格が低下すれば需要が拡大し、価格は反発する。ミクロ経済学の教科書で解説される所ですが、現在の金相場は値下りしても需給が引き締まらない状況に陥っています。ドル建て金価格は年初を100とすると94.2まで低下していますが、これだけの値下りでも買いが入りません。

一つの理由は、ドル建て以外の通貨建ての金価格が十分に値下がりしていないことにあります。インドルピー建てが101.5、中国人民元建てが99.3、トルコリラ建てが126.1と、主要消費国の金価格は横這い、もしくは上昇しています。割安感が強まらず、寧ろ割高感から買い控えが行われているのが現状です。

ちなみに円建ては93.0であり、ドル建て金価格を下回るパフォーマンスになっている珍しい国が日本です。

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インプラッツが戦略見直しへ、プラチナ安にギブアップ

Impala Platinumは、Rustenburg鉱区の戦略見直しを発表しました。これまでは、顧客の需要を安定的に満たすために減産対応には消極的だった同社ですが、株主からの圧力を受けてか、いよいよ生産体制の抜本的な見直しに着手しました。

下の図は同社の戦略ポートフォリオですが、ZimplatsやTwo Riversなどの機械化が進んだ低コスト鉱区はそのまま残し、マンパワーに依存するRustenburg鉱区の生産規模を縮小することになります。

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 The Implats board has approved a turnaround strategy that will transition Impala Rustenburg to long‐term
economic viability in a low price environment, over the period FY2018 to FY2021:
  ‐ Mining footprint to contract from 11 to six operating shafts as operations are ceased at depleted,
end‐of‐life and uneconomical shafts
  ‐ Platinum group elements (PGE) mill grade to increase from 4.09g/t to 4.25g/t and the Merensky:UG2 ratio
to increase from 42% to 50%
  ‐ Production guidance revised from 750 000 to 520 000 ounces platinum per annum, removing non‐profitable
platinum production from an over supplied market
  ‐ Total labour complement (employees and contractors) to reduce from 40 000 to 27 000
  ‐ Real operating costs to decrease from R25 100 per platinum ounce in FY2017, to less than R22 000 per
ounce in FY2021 (2018 terms)
  ‐ Real stay‐in‐business (SIB) capital expenditure to reduce from R2 800 per platinum ounce in FY2017,
to less than R2 000 per platinum ounce (2018 terms), due to infrastructure efficiency improvements
  ‐ Replacement capital to reduce from R820 million per annum in FY2018, to R120 million in FY2021 and
thereafter to zero in FY2023 in line with the completion of the 16 and 20 shafts replacement projects
  ‐ Once‐off restructuring costs of approximately R2.7 billion expected during FY2019 and FY2020

Impala Platinum=Strategic update Impala Rustenburg review

老朽化、不採算化したシャフト閉鎖し、逆に収益性の高いシャフトでは増産を行うことで、生産ガイダンスとコストラインを同時に引き下げます。本来であればコスト論の視点で一気に上昇トレンドを形成したい所ですが、今回のリストラ策でそこまで期待するのは困難でしょう。年間生産ガイダンスは最終的に75万オンスから52万オンスまで引き下げられますが、2021年度までの長期計画です。大規模な人員削減計画を受けての労使環境など多くの不確実性が浮上しますが、プラチナ需給・価格正常化に向けての第一歩との評価に留まります。

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今年上期の金需要は2009年以来で最低

ワールド・ゴールド・カウンシルが「Gold Demand Trend」の第2四半期版を発表しました。これで上期のデータ出そろった形になりますが、今年1~6月期の金需要は1,975.4トンであり、2009年以降で最低になりました。

前年同期の2,153.3トンと比較しても159.9トンの急減です。項目別だと、宝飾が37.9トン減の1,046.7トン、テクノロジーが5.0トン増の165.4トン、バー・コイン投資が42.0トン減の509.1トン、ETF関連投資が99.7トン減の61.0トン、公的部門が14.7トン増の193.3トンとなっています。つまり、テクノロジーと公的部門以外の、いわゆる民間の投資部門が総崩れになっています。

もっとも大きい落ち込みはETF関連投資ですが、通商リスクがドル高に作用したことで、本来であれば金ETFを買うべき北米勢が逆に売り込んだ影響が指摘されています。宝飾とバー・コインは、ドル高の影響でローカルプライスが高騰、もしくは高止まりした影響です。中国は通商リスクの高まりで買いが入りましたが、インドやトルコ等の市場が大きなダメージを受けました。

しかも、鉱山生産が57.8トン増の1,629.5トン、リサイクル供給が5.1トン増の575.3トンと供給サイドの動向は良好であり、需給ギャップは前年同期が17.1トンの供給不足に対して、今年上期は251.6トンの供給過剰です。この需給環境では、金価格の低迷は仕方がなさそうです。

金価格反発のためには、まずはETF関連投資売りの出血状態を止血し、その上で宝飾・地金の現物需要を喚起していくことが求められます。新興国通貨安が続く間は、どうしても新興国の金需要を喚起するのは難しい状況が続きます。高インフレと政治的な混乱が進むトルコでさえ、ローカルプライス高騰で金需要は盛り上がりを欠いています。

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

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