小菅努の商品アナリスト日記

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米政府の制裁強化なら、OPECは増産対応か?


石油輸出国機構(OPEC)は、ベネズエラとイランの原油供給が一段と減少し、価格上昇が続いた場合、7月から増産する可能性がある。関係筋が明らかにした。ロシアなど非加盟国との協調減産を延長すれば、市場を引き締め過ぎる恐れがあるためという。

出典:Reuters

原油価格の高騰が続く中、石油輸出国機構(OPEC)内で増産んお必要性を巡る協議が行われていると報じられています。数年前でしたら、原油価格は高い程に好ましいと評価されたのでしょうが、急激な価格上昇はシェールオイル生産動向にも影響を及ぼすため、OPEC内で原油高のリスクが検討され始めている模様です。

3月段階では、年後半の減産延長を巡る議論が主流でしたが、現在は6月25~26日の会合で産油量引き上げを決定する可能性も想定されます。ただ、この報道でも強調されているのは大きな「不確実性」であり、米政府のイランやベネズエラに対する経済制裁が強力なものになり、原油価格が80~85ドル水準まで上昇すればとの条件付で、増産によって需給・価格安定化を促す必要性があるとの議論です。裏返せば、米政府が原油価格に配慮して経済制裁強化の動きを抑制し、リビアの生産トラブルなどがなければ、政策調整は微調整、もしくは行われないことになります。

昨年の急激な増産対応が失敗した経験もあって、現時点で減産政策を完全撤廃するのは現実的ではなく、減産を緩める形での実質増産の有無が問われるのが基本と考えています。ただ、OPECが危惧する高値ラインに突入していることは、OPECの減産政策修正の可能性を想定する必要性を高めることになります。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

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ベネズエラ中銀から金が流出している意味

 政治的な混乱が続く南米のベネズエラで、中央銀行の金庫から金8トンが秘密裡に運び出されたと報じられている。「米国による経済制裁に苦しむ中、外貨調達に向けて国外に売却するとみられている」(ロイター)とされている。

 公式な確認が取れていないために真偽は不明だが、今年に入ってから中央銀行の金が運びだされているとの報道は、1月と2月に続いて3回目のことであり、ベネズエラにおいて金を巡る動きが活発化しているのは間違いなさそうだ。

 ベネズエラでは1月、グアイド国会議長が暫定大統領への就任を宣言し、マドゥロ大統領と対立する政治的混乱が続いている。米政府は、グアイド暫定大統領への支持を表明しており、マドゥロ政権の資金源を断つためにベネズエラの主要産業である石油産業への経済制裁を強めている。決定打となっているのは、国営石油会社PDVSAを狙い撃ちとした制裁であり、米国は原則としてベネズエラ産原油の輸入を禁止し、収入源を失ったベネズエラ経済は危機的状況に陥っている。現在は、第三国企業に対してもベネズエラ産原油取引への制裁が検討されている。

 こうして外貨獲得手段が失われて手元流動性(=資産を貨幣に変える可能性)の確保が難しくなる中、マドゥロ政権が目を付けているものの一つが、中央銀行の保有する金という訳だ。ボルトン米大統領補佐官は、1月に金15トンが中東のUAEの買い手に売却されたと報じられると、「ベネズエラ国民から盗んだ金や石油、他の商品を取引すべきではない」として、ベネズエラからの金流出を強くけん制した。しかし、その後も年初から合計30トンの金が中央銀行から運び出されていると推計されており、既に海外でユーロやドルなどのハードカレンシーに交換されている可能性が高まっている。まだベネズエラ国内だけでも中央銀行の金は100トン程度残されているとみられているが、このまま外貨準備が失われ続けると、全ての金がベネズエラ国外に流出する可能性もある。

■独裁者でも金なら流動性を確保できる

 以上の一連の動きは、金が安全資産と言われる理由を明確に物語っている。世界から独裁者と批判されるマドゥロ大統領の視点では、現在は米国や欧州諸国などの制裁によって流動性を確保できない危機的状態に陥っている。仮に株式や債券などを保有していても、マドゥロ大統領と取引してくれる相手方を見つけ出すのは極めて難しい情勢になっている。

 一方で、金であれば例えばマドゥロ大統領でも流動性を確保できる可能性があるのだ。金は他の金融資産と異なり発行体が存在せず、信用ではなく現物に価値の裏付けがあるため、売買の匿名性を確保することが可能である。

 しかも、比重が高いためにその価値と比較して容量が小さく運搬コストが低く、かつ、小さく分割、溶解しても価値に変化は生じない。品質・純度・重さなどから世界のどこでも容易に本物か偽物かの判断を下すことも可能であり、資産価値の目減りを気にせずに容易に売却することが可能な特殊性を有した資産になる。極端なことを言えば、マドゥロ大統領がベネズエラ中央銀行から持ち出した金が日本に運ばれて宝飾品などに加工されても、誰も分からないのである。

 だからこそ、経済・金融危機が発生するたびに金が注目され、いつでも流動性を確保できるという意味で安全通貨や安全資産と言われている。政治経済危機が発生したベネズエラで中央銀行が静かに保管し続けてきた金が突然に注目を集めていることは、金が安全資産であることの象徴的な出来事と言えよう。独裁者にとって持つべき資産は金であり、普通の市民にとっても経済・金融危機に備えて金を保有する意味があろう。2008年の世界同時金融危機のようにリスク資産が総売り状態の時でさえ、金は買い手を見つけ出すのに困ることはなく、危機が発生した時にこそ、金は安全資産として輝きを増すことになる。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)ベネズエラ中銀から金が流出している意味(Yahoo!ニュース)

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事故を起こした資源会社の株・債券を売る動き


Germany’s third largest asset manager Union Investment has sold all the bonds and shares it held in mining group Vale, after the collapse in January of a waste dam in Brazil that left more than 220 people dead and more than 70 missing.


ドイツの資産運用会社Union Investmentは、鉱山会社ヴァーレの全債券、株式を売却しました。1月にブラジルでヴァーレは大規模な鉱山ダムの崩壊事故を引き起こし、220人以上が死亡し、未だ70人以上が行方不明になっています(参考:ブラジルでヴァーレの鉱山ダムが決壊-約200人の行方分からず Bloomberg)。この事故を受けて、もはや投資対象としては認められないとの判断になります。同社のESG(社会的責任投資)責任者は、「ヴァーレは全ての運用商品から除外される」と報告しています。

これと同様の動きは、アライアンス・グローバル・インベスターズも報告しており、全てではないが、バーレの保有株を圧縮した模様です。イングランド国教会も事故の直後にバーレの全株式を売却し、スウェーデン国営ファンドに助言を行う倫理カウンシルも、信用を失ったとして同国のファンドに対して売却を推奨しています。

ここ最近の投資の世界では、ESG評価の高い企業が選好され、環境(E)・社会(S)・企業統治(G)などに向ける投資かの視線は厳しさを増しています。ヴァーレの場合は、大規模なダム事故を発生させてしまったことで、このESG評価が大きく落ち込み、強制的に売却リストに載せられてしまった格好です。

資源会社にとって、安全確保は企業として存続していく上でのマスト要件になっていることが再確認できます。事故防止のためには従来以上に多くのコストが費やされ、そのコストは当然に資源の生産コストライン切り上げを促します。この流れは加速することはあっても減速することはなく、時代の流れとして受け止める必要があります。

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。為替、株価指数などもカバーしています。

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