小菅努の商品アナリスト日記

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産油国は原油安に対抗するのか

産油国は原油安に対抗するのか
12月6日にOPEC総会

12月6日、石油輸出国機構(OPEC)総会が開催される。前回6月の会合では、イランやベネズエラ産の供給減少にどのように対応するのかはメインの議題になっており、減産遵守率引き下げの形で実質増産を合意していた。しかし今回は、2019年の供給過剰見通しにどのように対応するのかが焦点になっており、ここで産油国が結束して供給過剰化を阻止する方針を打ち出せるか否かによって、19年の原油需給・価格見通しは大きく修正を迫られる可能性を抱えている。

OPECの推計だと、OPEC産原油に対する推定需要は18年の日量3259万バレルから19年には3154万バレルまで105万バレル減少する見通しになっている。総需要は129万バレル増加するも、非OPECの産油量が223万バレル増加する中、もはやOPECの減産対応なくして供給過剰化は阻止できない状況になっている。特に米国のシェールオイル生産見通しが急速に拡大する中、世界石油需要の伸びの大部分は米国一カ国のみでカバーできる状態が想定され、OPECは減産対応を迫られている。

仮に19年の国際原油需給を均衡化させるのであれば、10月時点で3290万バレルの産油量を3154万バレルまで136万バレル削減する必要がある。この全てをOPEC加盟国のみでカバーする必要はないものの、ロシアなど非加盟国も含めた協調減産対応が求められている。

一部産油国からは100万バレルの減産提案も行われているが、季節要因から19年上期は特に需給が緩み易いだけに、マーケットでは130万~140万バレル規模の減産対応を合意する必要性が認識されている。

純粋に需給バランスを安定化させる観点であれば、もはや減産対応は不可避の状態にある。もちろん、意図的に原油価格を押し下げてシェールオイルに減産対応を迫る戦略もあるが、14年に経験したシェールオイルとの我慢比べは中東産油国に与えるダメージも大きく、減産対応の必要性はほぼ共通認識になっている。

問題は、米国のトランプ大統領が繰り返し原油高批判を行っていることだ。トランプ大統領は利上げと原油高の二つが経済に対する下押し要因と認識しており、産油国に対するプレッシャーを強めている。サウジアラビアは反政府記者殺害事件で米国に大きな「借り」を作っており、また、米国の制裁によって景気下振れリスクを抱えたロシアは原油安よりも米国との関係悪化を強く警戒している。このため、純粋に需給の視点で求められている減産対応が講じられない可能性も浮上しており、原油市場の不確実性が増している。18年の原油市場は「トランプ政権の対イラン制裁」に攪乱されたが、19年は「トランプ政権の原油安圧力」に攪乱される可能性が高まっている。需給だけで産油政策を決められない時代に突入している。

(2018/11/28執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年12月03日「私の相場観」

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急浮上した早期利上げ終了論

急浮上した早期利上げ終了論
金価格の底入れ前倒しは?


米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げサイクルに不確実性が広がり始めている。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では当局者の経済予想として、2020年にかけて段階的な利上げサイクルが続く見通しが示されていた。米実体経済が良好で過熱感さえ強まる中、金融政策が景気を刺激も抑制もしない中立金利を上回るゾーンまで利上げが進められる見通しになっていた。現時点で想定されている中立金利は3.0%だが、20~21年にかけては3.4%まで利上げを進めることが可能であり、そうすべきというのが当局者のコンセンサスになっていた。想定されていた金利軌道は18年の2.4%を19年には3.1%まで引き上げ、20~21年にかけて3.4%で利上げサイクルの終了、更には利下げへの転換を模索する展開になっていた。しかし、米中貿易戦争が深刻化する中、世界経済の見通しに不確実性が強くなっており、足元では米経済も自らが引き起こした貿易戦争のダメージを受けるのではないかとの懸念が浮上し始めている。

マーケットを驚かせたのが、11月16日にクラリダFRB副議長が中立金利ゾーンで利上げを中止すべきと発言したことだった。中立金利は2.5~3.5%のレンジが想定されているのに対して、現在の金利水準は2.00~2.25%である。これは、仮に12月に予定通りに今年4回目の利上げに踏み切った際には、19年に更に1、2回の利上げを行うと中立金利ゾーンに到達し始め、利上げ休止も正当化されることを意味する。

現時点でクラリダ副議長の意見が、FOMC全体の意見を代表しているとは言えない。パウエルFRB議長は段階的な利上げサイクル継続の必要性を訴え続けている。また、シカゴ連銀エバンス総裁は短期的には中立金利を上回る水準まで利上げを継続する必要性を訴えている。ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁も、金利水準はまだ非常に低い水準にあるとの警戒感を示している。現状ではなお、9月FOMCでも示されたように中立金利を上回り、引き締め政策を展開する方向性でみておくべきだろう。


ただ、FRB副議長レベルから利上げサイクルの短縮化を訴える声が挙がっているのも事実であり、米経済は本当に中立金利を更に上回るような金利環境を要求しているのか、従来以上に慎重な判断が求められることになる。

仮に利上げサイクルの終了時期が20~21年から19年に前倒しされれば、それは金価格に対する逆風がピークを迎える時期も前倒しされることを意味する。原油相場急落で期待インフレ率が大きく低下する中、実質金利に対しては強力な上昇圧力が発生している。これが株価急落でも金価格の上昇余地を限定しているが、仮に予想よりも早い時期に利上げサイクルが終了するのであれば、それは13~14年前後から本格化したドル買い・金売りのメガトレンドが終了することを意味する。クラリダ副議長の意見がFRBのコンセンサスなのか否か、12月FOMCにおける議論の重要性が増している。

(2018/11/21執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年11月26日「私の相場観」

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トランプ大統領の褒め殺し戦略に悩む産油国

トランプ大統領の褒め殺し戦略に悩む産油国

2019年の過剰供給懸念で原油価格が急落する中、マーケットの目線は12月6日の石油輸出国機構(OPEC)総会で、主要産油国が減産対応に踏み切るか否かとなっている。OPEC内からは日量100万バレル、140万バレルといった具体的な数値も浮上しており、加盟国間では概ね減産対応の合意が形成されているとの報告もある。

市場シェアを落とす減産対応は産油国にとって全面的に歓迎されるものではないが、2014年に過剰供給が原油価格の急落を招いた記憶も鮮明に残される中、このまま現状を放置してはいけないとの危機感がある。11月22日には、サウジアラビアのファリハ・エネルギー相が「供給過剰は誰の利益にもならない」として、「適切な対応を講じる」考えを示している。

現在の原油価格水準に対して必ずしも不満を抱いていないロシアが減産対応に慎重姿勢を崩していないが、そのロシアもOPECとのパートナーシップ協定締結には意欲を示しており、OPEC総会での同協定署名が予定されている。OPECの減産提案をそのまま受け入れるかは別として、シェールオイルや深海油田などのタイトオイルの産油量が増える中、産油国間の協力関係の必要性については認識されている。

ここで問題になるのが、トランプ米大統領の動きである。大統領は、原油価格は低いほどに良いとの経済認識を有している模様であり、11月20日には「大規模減税のようだ」と原油安を歓迎している。今夏に原油価格が急伸した局面では、OPECに対して強い口調で増産対応を促していた。実際に、こうした要求にOPECやロシアが応えて過剰供給を行った結果が足元の原油価格急落の一因だが、原油相場が急落した現状でも、減産対応を講じることには強く反発している。

11月12日に「OPECは減産すべきではない」と発言したのに続き、21日には原油価格の値下がりについて「ありがとうサウジアラビア。ただ、もっと下げよう」と褒め殺しのようなことを行っている。22日にも、「サウジアラビアは本当にうまくやってくれた」と、サウジアラビアの増産対応を高く評価する発言を行っている。明らかに、サウジアラビアに減産を行わないように圧力を掛けたものである。

特にトランプ大統領が、サウジアラビアの反政府記者殺害をムハンマド皇太子が指示したとの疑惑を不問に処す対応を見せる中、サウジアラビアは単純に経済の論理のみで減産対応を講じることができない難しい状況に追い込まれている。

11月30日~12月1日の20カ国・地域(G20)首脳会合では、ムハンマド皇太子、ロシアのプーチン大統領の会合が設定された。ここでの議題の一つに、産油政策での協力があるのは確実である。マーケットの過剰供給に対する懸念を払しょくしつつ、トランプ大統領の反発を招かない最適解をどのように見つけ出すのか、石油市場においてもトランプ大統領の存在が大きな不確実性をもたらしている。

マーケットがみているのが、実際に産油量が需要レベルまで引き下げられるか否かであり、実質ベースでの議論が中心になる。トランプ大統領の視線を気にすれば、「減産」の言葉を使わずに、減産順守率の数値調整などで実質的な産油量を削減するのが現実的だが、「減産を要求するマーケット」と「減産を嫌うトランプ大統領」の二つの圧力の狭間で、産油国はどのようなカードを切るのか決断の時期が迫っている。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)トランプ大統領の褒め殺し戦略に悩む産油国(Yahoo!ニュース)

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原油価格が1年1カ月ぶり安値、株価と同時急落の意味

原油価格が1年1カ月ぶり安値、株価と同時急落の意味

11月20日のニューヨーク取引時間中に、値下り傾向にあった国際原油価格が改めて急落した。NYMEX原油先物相場は、1バレル当たりで前日比3.77ドル安の53.43ドルととなっている。同日の安値は52.77ドルであり、僅か1営業日で最大7.7%の下落率を記録している。これは2017年10月26日以来、約1年1カ月ぶりの安値更新となる。

背景としては、前日に続いて米国株が大きく値崩れを起こしていることがある。米中首脳会談の開催が近づいているが、貿易戦争の先行き不透明感が払しょくできていないことが嫌気されている。更には新型「iPhone」の販売不振が警戒されているアップル株が急落する中、20日の米株式市場ではダウ工業平均株価を構成する30銘柄が全て下落する総売り状態になっている。

株価と原油価格とは、必ずしも完全に連動する必要性はない。寧ろ原油価格の下落は企業収益に対してポジティブな面もあり、実際に今夏以降に国際原油価格が70ドル台に乗る場面が増えると、株安リスクの一つとして認識されていた。

無題

















しかし現在のマーケット環境は、株式買い・原油買いという一部ファンドが採用してきたグローバル・マクロ戦略の破たんが警戒されている状況であり、株式市場から投機資金の引き揚げが行われると、原油需給動向とは関係なく原油市場からも投資資金が引き揚げられることになる。「株安→原油安」と「原油安→株安」で「卵が先か鶏が先か」のような二つの大きな流れが発生しており、こうした負の流れが続くと詳細な企業業績環境や原油需給環境を巡る議論は意味を持たなくなってしまうことになる。

原油価格の視点であれば、基礎にあるのは需給環境(とその見通し)であり、現在は厳しい状況にあることは間違いない。国際エネルギー機関(IEA)は、仮に石油輸出国機構(OPEC)の産油量に変動がなければ、2019年は年間を通じて供給過剰状態に陥るとの見通しを示している。12月6日のOPEC総会に向けて減産対応を巡る協議も行われているが、まだ最終合意に至るのかは不透明感が強い。(参考:原油価格急落でも減産を拒否するロシアが考えていること

オプション市場の動向を見る限り、原油価格に関しては50.00ドルを防衛ラインとみている向きが多く、このまま一気に50ドル割れから更に大きく値崩れを起こすのかは疑問視される。産油国の財政環境、シェールオイルの生産環境などにも影響が及びかねない価格水準であり、売られ過ぎ感を示す指標も数多い。

ただ、株価と原油価格が同時に急落する現象は、良好な実体経済環境・見通しを背景とした株高・原油高のストーリーに疑問を持つ向きが増えていることを示している。そして、この種の局面では、短期スパンだとファンダメンタルズとは乖離した価格形成が行われることも少なくない。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)原油価格が1年1カ月ぶり安値、株価と同時急落の意味(Yahoo!ニュース)

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「炭鉱のカナリア」に異変、安全資産としての金価格

「炭鉱のカナリア」に異変、安全資産としての金価格

今年の金市場においては、「金は安全資産としての役割を終えたのではないか?」との議論が一種のブームになっていた。

トランプ米政権の「アメリカ・ファースト」と称される通商政策は世界経済に大きな不確実性をもたらしたが、こうした中でも金価格は一向に上昇せず、寧ろ投資家は金を売却する傾向を強めたことで、金の安全資産性が疑問視されたのである。貿易戦争が勃発しても金が買われず、逆にドルが買われたということは、アメリカ一人勝ちの世界にあって、投資家がドルを新たな安全資産として認識し、伝統ある安全資産としての金の時代が歴史的役割を終えた可能性を示唆していた。

しかし、10月に米国発で世界の株式市場、更には金融市場が動揺を見せると、金市場に対して投機マネーの流入が再開され、代わってドルの上値が重くなり始めている。まだ金価格の値位置は決して高いとは言えないが、COMEX金先物価格は8月16日の1オンス=1,167.10ドルをボトムに10月上旬にかけては1,200ドルの節目水準で揉み合う展開が続いていたが、10月26日には一時1,246.00ドルまで上昇し、7月13日以来の高値を更新している。金の輝きが強まり始めていることは間違いない。

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象徴的なのが、株式市場で取引されている金上場投資信託(ETF)の投資残高である。金ETFは投機資金の流出入に応じて金保有高を調整するが、今年は5月から9月まで5か月連続で金ETFを売り越していた米国人投資家が、10月には半年ぶりに買い越しに転じたのである。これまで、いくら貿易戦争が深刻化しても、国際政治環境が不安定化しても一向に関心を持たれなかった金に、投機マネーが流入し始めている。

10月に米国人投資家が購入した金ETFは僅か12.4トンであり、過去5か月の累計で149.4トン売却されていたことを考慮すれば、誤差の範囲内と言えるかもしれない。しかし、金価格が上昇傾向を見せ、金ETF市場に対する資金が流入し始めていることは、投資家がこれまで楽観視していた株式市場、そして実体経済環境にリスクの芽を見始めていることを示している。

金価格の変動要因は多岐にわたるため、一概に金価格が上昇したら株式市場が危険とは言い切れない。例えば、2008年の世界同時金融危機の時は株価急落に先行して金価格が急伸していたが、2016年や17年は株式相場と金相場が歩調を合わせて上昇している。

ただ、11月16日には米連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長が政策金利について「中立水準に留まることは理にかなっている」との認識を示すなど、これまで中立金利を上回ることを前提としていた米金融政策環境にも変化の兆候が見受けられることは確かである。

これまでは、貿易戦争が勃発していると言っても米実体経済は堅調であり、金融政策も引き締め的なスタンスを維持できて来たことが、株高・ドル高を促し、配当も金利も生まない金を保有する必要性は一貫して低下していた。しかし、いよいよ貿易戦争が実体経済に影響を及ぼし、それが米金融政策の利上げ打ち止め論にまで発展するのであれば、株式相場が上昇を続けるのは難しくなり、ドルの上昇地合にもブレーキが掛かる可能性が浮上する。

まだ現在の金価格は実体経済減速、米利上げサイクル終結が前倒しされる「可能性」を示唆するレベルに留まっているが、ここから金価格が更に本格的に上昇し始めれば、それはもはや米経済が利上げに耐えられなくなるリスクを示すことになる。

冒頭で「金は安全資産としての役割を終えたのではないか?」との議論を紹介したが、これまで貿易戦争でも金価格が上昇しなかったのは安全資産に対する投資ニーズを高めるレベルの危機とは評価されていなかっただけである。本当に安全資産が必要とされれば金価格は上昇することになる。金の安全資産としての役割は終わっておらず、金価格が「炭鉱のカナリア」として危機発生を警告し始めていることには注意したい。

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(出所)「炭鉱のカナリア」に異変、安全資産としての金価格(Yahoo!ニュース)

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

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