小菅努の商品アナリスト日記

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中国の米国産大豆輸入にブレーキ、意図が読めない不安感

シカゴ大豆先物相場の上値が重い展開が続いています。4月13日の1Bu=1,078.00セントをピークに、足元では1,030セント台前半まで値下がりしています。このままの下落ペースが続くと、1,000セントの節目割れも現実的なテーマになる状況です。

【CBOT大豆先物】
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(出所)CME

メインの相場テーマは中国です。金融市場方面では、米中通商交渉で対話ムードが広がっていることが素直に好感されています。しかし、大豆市場に関しては「中国が米国産大豆の調達を止めるのではないか?」との懸念が広がっています。

さすがに中国も米国産大豆の輸入を全面的に止めることはできませんが、マーケットでは4月10日を最後に米農務省(USDA)に対する大口輸出成約の報告が止まっていることが警戒されています。

過去を振り返ってみる限り、2週間程度にわたって大口輸出成約が途絶えることは決して珍しい現象ではありません。実際にその前の4月4日の12.9万トンの成約前だと、3月9日の18.3万トンまで遡ります。また、仕向け地不明での成約の中に中国向けが含まれている可能性もあるでしょう。

ただ、中国政府が通商交渉において穀物を米国サイドのボトルネックとみていることは明らかなため、何か特別な意図が存在するのではないかとの疑心暗鬼が広がりを見せています。

トランプ米大統領も4月9日に「特に農家をたたくのは、それが私の痛手になると考えるからだ」と発言して、「われわれは彼らに埋め合わせをする」と中間選挙に向けて反共和党、反トランプの動きが広がることをけん制しています。

Bloomberg=トランプ米大統領:貿易摩擦で農家の「暮らし良くなる」

報復措置で米国産大豆の輸入に関税を課す、輸入数量制限を課すといった分かり易い政策ではなく、何も公式な政策発表がなく、敵対する国を真綿で首を締めるように攻撃するのは、民主主義国家には真似することができない中国政府の得意技です。最近では、韓国のミサイル配備を巡る議論を巡って、中国人の訪韓規制がほぼ確実視されているのは記憶に新しいでしょう。

たまたま、ブラジル産の新穀供給時期で中国が米国産の大口成約を見送っているだけなのか、それとも既に事実上の「対米制裁」が一種の交渉カードとしてテーブルに上がっているのか、マーケットの疑心暗鬼状態が、大豆需給の先行きに大きな影を投げ掛けています。再び中国向け大口輸出成約が報告されると、一瞬で地合が変わる可能性もあるテーマですが、なぜ中国は価格が低下しても米国産大豆の大口調達を行わないのか、マーケットはその意図が読み切れていません。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

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非鉄金属とPGMの高騰、日経に載ったタイミングでおしまい

4月のコモディティ市場では、米国の対露経済制裁に伴うロシアからの資源供給リスクが大きな相場テーマになっています。4月6日に、米財務省は2016年の米大統領選にロシアが介入したとして、ロシアの個人・団体に対する経済制裁に踏み切っていますが、その中にはアルミ大手のRusalとその株主であるOleg Deripaska氏が含まれていたことで、ロシア産非鉄金属の取引が事実上できない状況に陥ったためです。

このRusalはNorilisk Nickelの株式を27.8%保有していることで、アルミのみならずニッケル、パラジウム、プラチナと供給不安は広がりを見せていました。ロシアからの代替供給を確保できるのか、一気に不確実性が高まった結果です。米金融大手Goldman Sachsが、経済制裁前は1トン=2,000ドル前後だったアルミ価格について、3,000ドル到達の可能性を指摘したことなどがシンボリックです。

Bloomberg=Goldman Sachs Warns Rusal Shock May Drive Aluminum to $3,000


ただ、さすがにこの混乱状況は問題があると判断した模様であり、米財務省は4月24日にこの制裁を10月23日まで延期すると発表しました。どうやらここまでで非鉄金属などの供給不安が高まるとは見ていなかった模様であり、場当たり的な制裁だったことが窺えます。

Reuters=U.S. extends deadline for Rusal sanctions, aluminum prices dive

この米財務省の発表を受けてロンドン非鉄金属相場は、アルミが7.0%安、ニッケルが3.8%安など、軒並み値崩れを起こしています。先週の19~20日の段階でも非鉄金属相場は調整売りが膨らんでいましたが、この辺の情報が漏れていたのでしょうかと若干の疑問も生じます。

貴金属市場では、プラチナが9.80ドル安の920.00ドル、パラジウムが50.65ドル安の979.55など、PGM相場も大きなダメージを受けています。プラチナに関しては大きな供給プレミアムを織り込んでいた訳ではないためにショックが限定されていますが、パラジウム相場は4月6日の890.85ドルから19日の1,047.75ドルまで急伸していた反動もあって、さすがにダメージが大きかったようです。ネガティブ材料というよりも、上昇ストーリーの一つが失われたとの評価になります。

【NYMEXパラジウム先物相場】
無題

















(出所)Reuters

ちなみに日本経済新聞は下記のような記事を本日付けで配信しています。

日本経済新聞=パラジウム高騰、米ロ対立が新たな触媒に

ペーパーメディアの限界とも言えますが、「日経に載ったら、おしまい」の相場格言が証明されてしまいました。

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高値更新が続く金相場

高値更新が続く金相場
トランプ相場への対抗

NY金先物相場は、年初の1オンス=1305.30ドルに対して、4月は1350ドル水準で高止まりする展開になっている。米朝関係が極度に緊迫化した昨年8月以来の高値を更新しており、安全資産に対して高いレベルの投資ニーズが存在していることが示されている。
背景にあるのは、「トランプ・リスク」の一言に集約されよう。トランプ米大統領の政策に対する不信感は昨年の段階でも幾度となく材料視されていたが、米国株は毎月のように過去最高値を更新するなど、必ずしも大きな問題とは評価されていなかった。漠然とした不安感が金上場投資信託(ETF)に対するヘッジニーズを創出したものの、金相場に対する影響は必ずしも大きなものとは言えなかった。

しかし、今年に入ってからはトランプ大統領が選挙公約に掲げていた重要政策を相次いで実行に移し始める中、投資環境の不安定化が金に対する投資ニーズを喚起している。鉄鋼とアルミの輸入制限策、中国との知的財産権を巡る貿易戦争化のリスク、シリア内戦への介入など、連日のようにマーケットに新たな材料が提供されている。しかも、その過程で米政権内での意見対立から政府高官の更迭人事も相次いでおり、トランプ政権がマーケットに及ぼす影響が読みづらくなっている。

秋の中間選挙に向けて共和党は支持基盤の強化を求められているが、通商、外交政策などでのアメリカ・ファースト政策は、マーケットに大きな混乱をもたらす一方で、トランプ大統領の支持率引き上げには寄与している。このため、今後もトランプ政権の政策スタンスが大きく変わるとは考えづらく、中間選挙に向けて逆にマーケットが望んでいない「リーダーシップ」を発揮する度に、マーケットが緊張状態を迫られる可能性もある。

これが通常の政策決定ルートを辿るのであれば、まだリスクイベントを消化する時間的余裕が、ショックを限定することになる。しかし、トランプ大統領はTwitterで突然に重要政策を発表することを続けている。ロシアなどは、トランプ大統領の「Twiitter外交には付き合えない」として相手にしない方針を示しているが、マーケットは投資環境を激変させる可能性もある動きを無視できず、一種の「Twitter相場」化している。いつ、どのタイミングで緊張を迫られるのか分からない不安心理が、金に対する投資需要を高めている。

こうした相場環境においては、株価動向は大きな意味を持たない。株価上昇圧力が強まる程に、リスクオフ化した際の衝撃は大きくなるため、ヘッジや分散投資の観点から金を保有するニーズは高まるためだ。実際に、昨年も株価が過去最高値を更新する過程においても、金ETF投資が拡大するなど、マーケットは株高を歓迎する一方で、不安心理を金保有と言う形で消化してきた。今年はその流れが加速し始めている。(2018/04/18執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年4月23日「私の相場観」

インフレ高進と連動した金利上昇圧力と金価格との対話

米長期金利が再びじわじわと上がってきました。米10年債利回りは4月2日の2.7170%をボトムに、20日の取引では一時2.9620%まで上昇しています。

日本経済新聞=NY債券、長期債続落 10年債利回り2.96%、4年3カ月ぶり高水準 

株式市場が金利上昇に悲鳴を上げたことに加えて、3月以降はトランプ米大統領の動向が金融市場にストレスを与える中、2月21日の2.9570%を今年高値に金利上昇圧力は一服していましたが、ついに今年最高の金利水準に到達しています。

【米10年債利回り】
無題













(出所)Reuters

直接的には、米金融当局者からタカ派と評価することが可能な発言が相次いでいる影響が大きいでしょう。3月米連邦公開市場委員会(FOMC)では2018年のフェデラル・ファンド(FF)金利見通しについて昨年12月時点から修正しませんでしたが、ここにきて当局者から利上げへの支持表明と受け止められる発言が多数確認されています。

ロイター通信=米金融政策は今後「やや抑制的」になる必要=ダドリーNY連銀総裁

ロイター通信=FRB、今後数年は緩やかな利上げ継続が可能=シカゴ連銀総裁

ロイター通信=米インフレ率、FRB目標を数年間上回る可能性=SF連銀総裁

先週に注目度の高かった当局者の発言としては、この辺でしょうか。

例えば、次期ニューヨーク連銀総裁への就任が決まっているサンフランシスコ連銀ウィリアムズ総裁は、今後数年はインフレ率が目標の2%と同水準、もしくはこれを上回る水準で推移し、2020年までの金利中央値は3~4%になるとの見通しを示しています。他の当局者からもインフレ見通しの改善報告が相次いでおり、それであれば米金融政策は利上げを継続し、金利上昇が正当化できるとのロジックが採用されています。

冷静にこの辺の発言を評価していくと、実質金利ベースだと1~2%程度を上限と想定していることが窺え、金価格に対して大きなマーケットインパクトを想定しておく必要があるのかは疑問も多い見通しになります。自然利子率はせいぜいが1%を若干上回る水準とみている当局者が多いようです。金市場の視点では、昨年12月に金相場を下押ししていたフォワードルッキングでの利上げ見通しが、寧ろ高インフレを容認するような利上げ見通しに修正されていることは、ポジティブな動きと評価する余地さえあります。実質金利の上昇期待は逆に後退しそうな状況です。

ただ、6月利上げの方向性で調整が進むのであれば、年4回の利上げカードが残されることになり、まだマーケットはそこまでのシナリオを織り込んでいない以上、金融政策以外に材料がない時間帯だと米金利上昇がドル高、金相場安を促すリスクが「一時的に」高まる可能性までは否定できません。金上場投資信託(ETF)市場の動向を見る限り、金利上昇・ドル高よりも政治・地政学リスクを重視している向きも多いことが窺えます。しかし、株式市場でも改めて金利上昇圧力との対話を進める必要性が浮上している以上、金市場も米長期金利の3%台乗せのいつかは必ず訪れるイベントをどのように迎えるのかが問われています。

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(セミナー御礼)小菅努&大橋ひろこと始めるくりっく株365

4月6日(金、大阪)と20日(金、東京)は、日本フィナンシャルセキュリティーズ様が主催したセミナーでフリーアナウンサーの大橋ひろこさんと講演を行いました。一連のセミナーにご来場いただいた方、ありがとうございました。

今回はNYダウ、日経225の歴史や仕組み、日米株式投資のマクロ環境など、「くりっく株365」についてお話しました。下は当日に使用した資料の一つです。

20180420(小菅)
 


















今回ご来場いただいた方も、来れられなかった方も、また別の機会がありましたら、ぜひ会場までお越しください。お待ちしています。

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

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