小菅努の商品アナリスト日記

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2018年の金相場展望

2018年の金相場展望
方向性を打ち出しづらい

2018年の金相場は、16~17年の延長線上での展開になりそうだ。すなわち、政治リスクと地政学リスクに下値をサポートされる一方、良好な実体経済や金融政策の正常化圧力が上値を圧迫し、明確な方向性を打ち出すのが難しい相場環境が続く可能性が高い。

米国でトランプ大統領が誕生してから2年目に突入することになるが、世界情勢は依然として不安定化している。「アメリカ・ファースト」政策は着実に実行に移されており、今後も排他的な政策スタンスが世界各地で混乱をもたらす可能性が高い。メキシコ国境の壁建設、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直し、貿易相手国に対する貿易収支均衡プレッシャー、軍事的な強硬姿勢などは、現段階で想定されていないリスクを顕在化させる可能性がある。あくまでも漠然とした不安心理に留まることで、投資家のリスク選好性が大きく損なわれることはない。ただ、先行き不透明感は安全資産としての再評価に直結しており、株価動向などに関係なく金が買われ易い地合が続く可能性が高い。

2017年を振り返ってみると、リスク資産を買う攻めの投資が行われる一方で、金や米国債などの安全資産を購入する守りの投資も同時に行われる傾向が見られた。すなわち、「株を買って金も買う」がメガトレンドになっていたが、そのトレンドは18年もそのまま維持される可能性が高い。

北朝鮮情勢に関しては材料として陳腐化が進んでおり、ミサイル発射実験程度であれば、特に材料視されない可能性が高まっている。ただ、今後の展開次第では朝鮮半島有事のシナリオも消滅した訳ではなく、金価格の急伸リスクとして引き続き注意が要求される。

ただ、金融経済環境からは、金を購入する必要性が乏しい時間帯が続くことになる。米連邦準備制度理事会(FRB)は17年中に3度の利上げに踏み切ったが、18年もほぼ同ペースでの利上げサイクルが想定されている。インフレ率の急伸がなければ実質金利に対して上昇圧力が強まり易く、金相場は断続的に下向きの刺激を受ける可能性が高い。既に量的緩和の規模縮小も始まっており、代替通貨としての金の役割は着実に低下することになる。

米経済成長率に関しては若干の鈍化が想定されるが、2%台中盤から後半の安定した成長率を確保できる見通し。仮にインフレの底打ちが確認できれば、利上げペースが加速する可能性も十分に想定でき、その際は金価格に対して強力な逆風が吹くことが想定される。

政治リスク、地政学リスクの暴走が見られないのであれば、1200ドル割れの方向性が基本になる。一方、何か不測の政治リスクや地政学リスクへの対処を迫られる事態になれば、1400~1500ドル水準まで値上がりする可能性が浮上する。政治・地政学リスクへのヘッジニーズがどの程度のレベルにあるのか、短期の相場テーマを見定める必要性がある不安定な相場展開が続き易い。
(2018/01/04執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年1月8日「私の相場観」

イラン反政府デモで仮想通貨の取引急増か?

中東のイランでは年末・年始を挟んで反政府デモが広がりを見せ、世界的な株高傾向は維持されたものの、一部のマーケットでは緊張感が高まった。イラン産原油の安定供給が維持されるのか警戒感が高まる中、国際原油価格は2015年5月以来の高値を更新している。安全資産の代表格である金市場にも投機マネーが流入し、国際金価格は昨年9月以来の高値を更新している。

イラン政府が情報統制を行っていることで不確実な部分も多いが、一連の反政府デモが広がりを見せる中で、仮想通貨市場では顕著な動きがみられた。すなわち、イラン通貨リヤル(IRR)とビットコイン(BTC)との間の取引量が急増しているのである。

昨年12月にはビットコイン価格が急騰したため、各国通貨とビットコインとの間の取引量が増えたのはイランに限られたものではない。このため、イラン人が単純な「投機」でビットコインを購入した可能性も否定できない。少なくとも、一部はこうした短期売買目的だとみて良いだろう。

ただ週間ベースの取引量をみると、11月中旬時点では週に50億リヤル前後だったのが、一時は700億リヤルを突破し、政情不安が伝わり始めた12月入りしてから一気に取引量が急増したことは注目に値しよう。
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これは、イラン国内の経済環境悪化を警戒して、自国通貨リヤルからビットコインに資金を退避させる動きが活発化した可能性がある。イラン経済環境の混乱は、同国通貨の購買力を毀損する動きにつながりかねず、ビットコインなど値上がりしている仮想通貨で購買力を維持したいとの意向が働いた可能性がある。今回の反政府デモは、米国やイスラエル、サウジアラビアなどとの関係悪化も加速させており、このまま法定通貨であるリヤルを保持し続けることが妥当なのか不安心理が広がった際に、仮想通貨が「受け皿」としての役割を果たした可能性がある。特に、イランに関しては米国が経済制裁を科した場合のリスクから米ドル保有リスクも高く、リヤルからの受け皿の選択肢は多くないことも影響した可能性がある。

また、政府が各種統制を強化する中、匿名性の高い仮想通貨で資産を防衛したいとの意向も働いた模様だ。代表的な仮想通貨たるビットコインのみならず、より匿名性の高いモネロ(XMR)などのいわゆるアルトコインに対する資金流入も報告されている。

■新興国で加速する金と仮想通貨の競合
これと同様の動きは、昨年11月のジンバブエでも観測されている。もともと高インフレで代替通貨に対するニーズが高い土壌もあったが、軍事クーデターの発生を受けて、同国内の取引所では国際相場を無視した高値形成が行われた。同国中央銀行は、ビットコインは合法ではないと警告を発していたものの、国際相場の二倍の値段がついても資金が流入する異常事態になった。

従来の常識では、こうした政治環境の混乱環境では国際基軸通貨のドル、安全通貨としての歴史と定評のある金などを購入する動きが一般的だった。しかし、近年は小口資金の法定通貨に対する退避ニーズ、ヘッジニーズの一部が仮想通貨にシフトする傾向が観測され始めている。欧州債務危機時点では、まだユーロからドルや金貨などに資金をシフトさせる動きが優勢だったが、ネットワーク上のデジタルデータのみで瞬時に取引が完結する利便性もあって、少なくとも一部地域で自国の法定通貨の保有リスクが高まった際には、仮想通貨に資金をシフトするトレンドが形成され始めていることは間違いなさそうだ。

金と仮想通貨では、技術的な方向性が正反対の方向性にある一方で、法定通貨に対する代替通貨としての性格は共通している部分も多い。取引の利便性などの観点では、明らかに仮想通貨が金に対して優位性を有しており、金はこれまでの「法定通貨との競合」から、「仮想通貨との競合」という二つのテーマを同時に消化する必要性に迫られている。

金市場では、ネットワークに依存せず、鉱山から産出された現物の存在による本源的価値の存在によって、逆に代替通貨としての金の魅力を増すといった議論もある。通貨を取り巻く技術の進歩によって、逆に従来から技術環境が大きく変わらない金の魅力が増すとのロジックである。ただ最近の新興国の金融経済危機にあっては、仮想通貨に対する注目度の高さは否めない状況になっている。単純に仮想通貨全体の価格が上昇しているという時代の追い風もあるのだろうが、金と仮想通貨との競合がどのような方向性に向かうのかは、金と仮想通貨双方の将来に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。
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【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)イラン反政府デモで仮想通貨の取引急増か?(Yahoo!ニュース)

株を買って金も買う ~金価格が10連騰~

1月4日のCOMEX金先物相場は、年末・年始を挟んで10営業日続伸となった。昨年12月12日の1オンス=1,238.30ドルをボトムに直近高値は1,327.30ドルに達しており、昨年9月15日以来となる約3ヵ月半ぶりの高値を更新している。為替市場でドルが軟化していることに加えて、イランや北朝鮮など地政学リスクの高まりを材料視した買いが続き、明確な上昇トレンドが形成されている。

世界の株価は年初から急伸しており、本来であれば「安全資産」である金相場を積極的に買い進むような投資環境にはない。米株式市場ではダウ工業平均株価が2営業日連続で過去最高値を更新しており、通常であれば金市場からは投機資金が流出し易い相場環境にあると言える。投資家のリスク選好性が高まる局面にあって、金相場が上昇しているのは通常の状態とは言えない。

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■米経済の強気見通しでも下落するドル
こうした異常とも言える値動きの背景にあるのは、一つがドル安である。本来であれば米国株が過去最高値を更新し、米実体経済の指標も好調さを示すものが相次ぐ中、為替市場ではドル高圧力が発生し易い状況にある。しかし実際には、米国株高にもかかわらず米長期金利が一向に上昇しないことに加えて、米国以上にユーロ圏の良好な経済環境がクローズアップされる中、ドルは対ユーロを中心に下げに転じている。「米国の良好な投資環境→ドル高→ドル建て金相場下落」ではなく、「ユーロ圏の良好な投資環境→ユーロ高(ドル安)→ドル建て金相場上昇」の流れが確立している。


これと同様の相場環境は昨年中旬にも観測されていたが、ユーロ圏経済が欧州債務危機、更にはイギリスの欧州連合(EU)離脱を経て成長を加速させていることが、ドル建て金相場を大きく押し上げている。国際基軸通貨ドルと代替通貨たる金は逆相関の関係にあり、投資家のリスク選好性の高まりがドル高圧力に直結しないことが、ドル建て金相場を押し上げている。

■根強い地政学リスクへの警戒感
もう一つの背景が地政学リスクの高まりである。年末・年始を挟んでイランでは反政府デモが広がりを見せており、今後の展開次第ではイラン国内の混乱状況に留まらず、米国やイスラエル、サウジアラビアなども巻き込んだ国際政治環境の不安定化を招く可能性がある。更に北朝鮮では、新たなミサイル発射が準備中との報道があり、改めて朝鮮半島有事のリスクが高まるシナリオも警戒されている。

株式市場はこうした地政学リスクに大きな関心を示していないが、今後の展開によっては実体経済の動向と関係なく投資家のリスク選好性が後退し、株価が急落するリスクを抱えている。こうした中、株式市場における強気スタンスを後退させるのではなく、株式市場における強気スタンスを維持して株高の恩恵を享受すると同時に、安全資産の金を購入して「万が一」に備える動きが金相場の10営業日続伸を促す重要な要素の一つになっている。

「株を買って、金も買う」と言う投資行動は必ずしも一般的とは言えないが、昨年の株価急騰局面でも金相場は底固く推移しており、株高環境にあっても投資家が漠然とした不安心理を抱えていることが明確に示されている。昨年の場合だと、株価が急落して保険としての金が活躍する場面は乏しかったが、株高の恩恵を享受することを基本方針としつつも、保険の金を購入する投資行動は今年も維持されている。

「株式で攻め、金で防衛する」のが、トランプ米大統領誕生後の大きな投資トレンドになっている。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)株を買って金も買う ~金価格が10連騰~(Yahoo!ニュース)

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

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